名も無き星からの船 その八
順調だー。驚くほどに順調だー。
毎日更新なんて、信じられないほどに順調だー。
1時間ほど、案内人に説明を受けながら、僕は居住区を見回っていた。
終着地は、長老と呼ばれている人の家らしい。
それにしても、他の居住区(1から9)とは、ずいぶんと変わっているようだ、ここは。
人数的には、他の居住区と比べて少ないようなんだけど、様々な変わった装置が使われている。
「あの、他の居住区ではあまり見ない機械装置が使われていますよね。それは、やっぱりここが異能者たちの街だからなんですか?」
聞いたところ、普通に、
「ああ、そうだよ。超知能とかの異能者もいるからね。概知技術の発展形みたいな機械装置なら、ずっと前から使ってるぞ」
そうなんだ。
あれ?
でも変だな?
「改良した物が、他の居住区に広まらないのは何故?」
そういう点だ。
以前のものより使いやすくて高性能なら、なんでこちらの機械装置に置き換えないんだろ?
「ああ、簡単だよ。船に使われてる計算機が、改良された装置達の能力に、付いて行けないんだ。計算機が管理できないものは、船全体には普及できないって事だよ」
え?
それって本末転倒なんじゃないか?
とは思ったけど、それ以上の質問は止めた。
基本的に、ここの進んだ機械装置類は、世代宇宙船が現在の計算機システムを使っている限り、他の居住区へ波及することは無いみたいだから。
でも、と、黙った僕に対して案内人の彼が言うには、
「でもな、計算機のソフトウェアの欠陥を直してやれば、まだまだ古い計算機でも改良型の機械装置を管理できるんだって、長老は言ってるんだ。ただ、それをやるためには、宇宙船のシステムを一度、止める必要があるんで、実質的に無理なんだけどな」
うーん、そうか。
宇宙船は止められない。
いや、爆発推進は止めても、中に住んでる人たちの生活や空気、水などの循環を止めることは絶対にできないよね。
でも、欠陥部分が修正されないまま飛び続けても大丈夫なんだろうか?
そんな事を考えながら、僕は歩いていた。
少し疲れたかな?
そんな事も感じながら歩いていると、一軒の家の前で、案内人の足が止まる。
「さあ、着いたぞ。ここが長老の家だ。おっと、忘れていた。長老には敬意を払えよ。何しろ、居住区10が我々の町となった頃からの歴史の生き証人みたいな方なんだから。サミーの力についても詳しく教えてくれると思うぞ」
ついに、長老の家に到着か。
様々な疑問があるけれど、それがいくつかでも解消すれば良いな、僕は、そんな思いに耽っていた。
「待っていたよ、坊や、いや、今はサミーだったか。入って来なさい、我々の希望よ」
家の中から、そんな声が聞こえた。
長老様だよね。
「長老!新しく、この町の住民となったサミーを連れてきました。入室、よろしいですか?」
案内人の彼が、かしこまる。
僕も倣ったほうがいいのかな。
「ああ、お入り。待ってたんだ、サミー。希望の星よ」
長老は、玄関先まで迎えに出てくれてたらしい。
僕は、長老の両手でハグするようにして歓迎された。
案内人も驚いているようだ。
ここまで歓待するとは思ってなかったのかな?
「初めまして、長老様。僕はサミー。仮では有りますが名前を与えられて光栄に思います。僕の能力はテレパシーですが、小さな力でも皆の役に立てたらいいなと思ってます」
僕は、長老に挨拶した。
長老は、初めはニコニコしてたけど、小さな力でも、って僕の言葉を聞いて、おかしな顔をした。
あれ?
僕、変なこと言ったっけ?
案内人の彼が、長老に説明してくれる。
「長老、サミーは、自分の力がどんなものか、まだ理解してないんです。急に力が発動した者達は、そういう弱気になるものが多いようですね」
また、僕が自分の力を理解してないって話だ。
僕の力?
テレパシー以外に何があると言うんだろ。
テレパシーだって、まだまだ小さい力なのに。
「まあ、まだ子供だし、仕方がないわな。では、サミー、君の力を、君自身に納得させてあげようではないか。儂の手を取りなさい、サミー」
僕は、おずおずと長老の手をとる。
握手のような形になるけど、これでいいらしい。
「では、サミー。君自身が、君の精神の中に入って行くことになる。心配するな、儂も一緒じゃよ」
そう言うと長老は、僕の心の奥底まで届きそうなテレパシーを送ってきた。
痛くはないけど、何も服を来てないような精神状態だ、恥ずかしいな。
「儂の能力は、テレパシーでも接触テレパスだ。体の一部が触れてないと交信できないが、しかし、こうやって触れ合えば相手の全てが分かるのだ。さあ、サミーよ、自分の真実を知るのだ。それがお前に一番必要なんだから」
僕は、長老と一緒に、精神の深みへ落ちていった……
でも、ストーリーが進まないんだよね。
ある程度、強引にでもストーリーを進めなきゃ、とは思うんですが。




