名も無き星からの船 その六
自分にジュヴナイルの才能があったとは、自分でも驚きです。
でも、このジュヴナイル文体、本当に書きやすいんですよ。
怖い。
お父さんもお母さんも、お祖父ちゃんもお祖母ちゃんも、怖い顔をしてる。
「ど、どうしたの?僕、正直に打ち明けたよね。悪いこと、したのかな?」
お父さんが、静かに言った。
「坊や、今まで私達は家族として暮らしてきたが、実は、我々は、誰一人として本当の、先祖たちが言う「家族」じゃない。船内に居住するには、計算機の相性検索によって「家族」と認定された者達が一緒に暮らすだけなんだ」
とんでもない事を言われた。
更に、お母さんが口を開く。
「この船で暮らしていくためには、様々な決まりがあるのよ。船内の平和を保つことも、その1つ。私達は、私達の中から、私達と異なった能力や、超知能を持った者が生まれることを、よしとしないの」
お祖父ちゃんも、続けて、
「坊や、できることなら、お前に正式な名前が付けられる「成人の日」まで、お前を儂らの子供、孫として育てたかったのは本当の気持ちだ。だけど、こうなっては仕方がない。婆さん、保安班に連絡をとれ」
僕は、打ちのめされていた。
家族じゃなかった!
「家族ごっこ」してただけだなんて!
もう、逃げる気も起きない。
保安班に、どこへでも連れて行ってもらおう……
最後に、聞きたいことがあったから、お父さんに、
「僕、これからどうなるの?処分されるの?」
お父さんは、悲しい顔になった。
最後に、お父さんとして話してくれるのかな……
「分からない。我々の誰もが、保安班に連れられていった「新しい者達」が、どうなったかを知らされないんだ。坊やのような「新しい者達」は、数年に一度か二度、現れる。そして、保安班に連れられて、何処かへ行く。それだけが分かっていることだ」
そうか、僕みたいな能力を持った人たちは、ちょくちょく生まれてくるんだな。
その全員が「処分」されるんだろうか?
それとも、普通の人とは隔離されて、どっかの居住区の隅に押し込められるんだろうか?
僕は、椅子に座ったまま、保安班の人たちが来るのを待った。
もう、何をするのも面倒だった。
保安班の人たちが来た。
真っ黒な服を来て、真っ黒な眼鏡をかけ、真っ黒な帽子を被っている。
僕達は、保安班の人たちを「死神」って呼んでたけど、そのままの名称だったんだな、実は。
両腕を持たれて、立たされた。
僕は、最後の最後に、一言だけ聞きたいことを、
「お母さん、もしお母さんが、僕の本当のお母さんじゃないのなら、僕の本当のお母さんは誰なの?」
お母さんは、悲しそうな目で答えてくれた。
「あなたに本当に意味での「お母さん」は、いないわ。この世代宇宙船では、赤ちゃんは全て、計算機によって精子と卵子を人工授精させた後、機械母体で管理されながら大きくなって生まれてくるのよ」
僕は、この瞬間、本当の意味で絶望した。
そうか、僕にはお父さんもお母さんも、いなかったんだな。
うなだれたまま、僕は保安班によって、何処とも知らない場所へ連れて行かれた……
処分されるのかな?
と思ったら、保安班の人たちは、居住区6から出て、そのまま中央プロムナードを歩いて行く。
あれ?
今、逆噴射状態になってるから、このまま行くと、予備として残されてるはずの、居住区10へ着いちゃうぞ?
居住区10って、あまりに船尾に近いから、危険を避けるために居住者はいないはずだけどなぁ……
僕は、そんな事を考えながら、保安班に連れられて居住区10の出入口へと向かっていくのだった……
「ここが、君の新しい居住区となる。心配するな、予備の居住区じゃないぞ、先輩たちがいるからな」
保安班の人たちが初めて喋った!けっこう優しいけど、ここに先住の人たちが居るって?!
僕は開いた機密ハッチのような防爆構造の大きなドアを通り、居住区10へ進んでいった。
どんな人たちなんだろうか?
僕の仲間、なんだろうか?
それとも……
期待と不安に満ち溢れた心で、僕と保安班は、居住区10の中を進んでいく。
人気はないみたいだけど、視線は感じる。ずいぶんと多くの人が居るようだな。
あまりに書きやすすぎて話が進まないんですけどね(この回で半日過ぎてません)
強引にでも日付を進めるか、それとも、このまま行くか。
悩みどころなんです。




