名も無き星からの船 その三
まだまだ、宇宙船フロンティアは登場しません。
しばらくは、異星人の宇宙船の中の模様をお楽しみ下さい。
次の朝、ベッドから起きてダイニングルームへ行くと、お父さんとお母さんが喧嘩してた。
僕は、
「お父さん、お母さん!喧嘩なんか止めてよ!お願いだから!」
と、一生懸命、説得したよ。
それでも二人共、何か言いたそうにしてたけど、僕が泣いてることに気づくと喧嘩を止めてくれた。
「悪かったね、坊や。もう、お父さんもお母さんも喧嘩なんかしないぞ。だからほら」
と、再生ティッシュペーパーを差し出してくる。
僕は、涙と一緒に鼻をかむと、それを再生用ディスポーザーに投げた。
「ごめんね、坊や。二人共、ちょっと仕事のことでイライラしてたものだから、つい。ほら、もう仲良しよ」
二人して、僕に謝ってきたんで、僕はお父さんとお母さんを許してあげた。
その後の朝食は、いつものメニューだったけど、なんだか少し、しょっぱかったよ。涙のせいかな?
学校へ行くと、先生たちが、
「今日の授業は中止します。皆さん、一番広い集会ドームに行きますよ」
と、授業の代わりに集会ドームで何かあるんで、その見学に行くらしかった。
先生に引率されて、集会ドームへ向かうと、周辺の学校に居る子供たち全てが集められたらしくて、ドームの一角は子供たちで埋まってた。
僕らの住む居住区6の統率者が演壇に進み出て、これから何が起きるのか説明するらしい。
「あ、あ~、大丈夫ですね、では。皆さん、お忙しいところ、緊急に集まってもらったわけですが、その理由を、これからお話します」
と言いながら、映像投射スクリーンを天井から下ろすように、統率者がドーム管理者に指示した。
「まず、この映像と音声を見て下さい」
映像がスクリーンに映る。
少し暗いけれど、これは、ほとんど実際には入れない宇宙船の先頭部、船長達のいるブロックじゃないか?
運行予定を決める会議を行っているような風景と音声が入る。
と、突然!今までノイズしか聞こえなかった通信機に、約100年近くぶりに信号が入った!
色めき立つ船長たち。
見ている僕達も、おおっ!と声を上げる。
最初、通信機から聞こえてくる音声らしきものが何なのか、船長達には理解できなかった。
当然、映像を見ている僕達にも分からない。
故郷の星系の太陽が瞬間的に安定を取り戻し、そこで何らかのメディアの放送波が入感しただけなのか?
それとも、新しい通信方式を故郷の星の人々が開発したんだけど、僕達には再現できずに信号だけしか受け取れていないのか?僕らは、その他の可能性もあるってことを、すっかり忘れていた。
当然、この僕も、昨夜のテレパシー通信で宇宙船フロンティアと交信した事は、夢の中の出来事だと思ってたから、僕の夢が本当の事だったなんて思っていなかった。
約一時間と少しくらい経った時だろうか、映像と音声に変化が出てきた。
僕達にも分かる単語が通信機から少しづつだけど聞こえるようになったんだ。
でも、大半は何を言ってるのか理解不能だったけど。
2時間位経つと(映像加工されて、途中は飛ばされてた)今度は半分以上、僕らの言葉が聞こえるようになった。その中で船長と通信でやりとりしてる光景が映ったんだけど。
「!”#$$&$#””、そちら$宇宙船()非常事態’&救援%$向かって#”!”!$##”」
それに対して船長が、こう言っているのが聞こえたんだ。
「こちらの船は致命的事態には陥っていない。しかし、救援に来てくれるなら有難い。こちら一号宇宙船より、宇宙船フロンティアへ」
え?宇宙船フロンティア?昨日の夜の夢じゃなかったの?
テレパシー通信は、夢じゃなかったんだ!
僕は世代宇宙船の危機を救うヒーローになった事を誇らしげに誰かに言いたかった。
でも昨日の先生の言葉、精神の突然変異って言葉が頭に蘇って、あわてて口をつぐんだよ。
僕は、人の突然変異なんだろうか?
精神まで突然変異してたら、どうしよう……モラルや常識が通用しない人になったら、どうしよう……
ともかく、僕の持ってるテレパシー能力は、他の人たちは持っていないことが分かっちゃった。
僕の信頼できる友人にも、この事は打ち明けられない。
打ち明ける相手は、ただ一人。宇宙船フロンティアに乗ってる、僕と同じテレパシーを使える人だけだ!
他には、お父さんやお母さん、お祖父ちゃんやお祖母ちゃんにも、とても打ち明けられない秘密だ。
この書き方、作者に合ってるようです。
妙にキーボードが進みんですよねぇ(ですから、話が進まないんですが)




