アンドロメダ銀河 その13
ようやく、ここまで進みました。
後は、例によって後日談と、銀河系側のドタバタを、次回より書きます。
もうすぐ、フロンティアはアンドロメダ中央星系まで跳んでくるだろう。
それまで、俺達が繋ぎの会談と条約締結のお膳立てまでしといてやるとするか。
「さあ、まずは和平会談だ!こいつがまっ先に無いと、後の条約も会談・会議も何も進まんからな」
控えの間にノックがあったので、俺はクルー4名を促して、和平会談の場へと向かう。
案内は、やはり同じ執事さんである(もしかして、執事長?)
御前会議の場とは違う、もう少し歩いた場所へと案内されると、これも大きな扉が開かれる。
おう、心構えはしていたが、やはり広い部屋だ。
ダンス大会でも開けるんじゃないかと思うほどの広い部屋の中に、大中小、いくつものテーブルや椅子、テーブルなしの椅子のみ、の場所がある。
テーブルには軽食が乗っていたり、食事の用意もあるテーブルも。
ああ、これ、会談相手の文化や習慣が分からないので、いくつものパターンを用意したんだな。
「ようこそ、銀河系からの使者殿。そちらの文化や習慣が分からないゆえ、どのような会談形式をしたら良いのか分からなくてな。お好きなテーブルと椅子の形で、胸襟を開いての会談と参りましょう」
皇帝陛下が口を開く。
やっぱり予想通りだったな。
では、俺は、こちらを選ぶとしよう。
「心よりのおもてなし、感謝いたします、皇帝陛下。では、あまり形式ばるのも何ですから、こちらで、ゆっくり、お話をいたしましょう」
俺が選んだのは、軽い飲み物が置かれたテーブルで、中位のもの。
これなら、俺達4名(後から追加1名)とアンドロメダ銀河側5名くらいが、ゆったりと話し合えるだろう。
俺が選んだ席に、俺達4名と、アンドロメダ銀河側4名が着席する。
さて、これからは、ざっくばらんに言っちゃうぞ。
実務者会談とか実務会議とか、後は俺の担当じゃないからね。
「では、アンドロメダ銀河と、銀河系との友好が結ばれることを祝して!乾杯!」
言語辞書が乾杯!
と訳しているが、こういう主旨の単語かどうかは分からない。
まあしかし、祝賀ムードなんで、間違っているわけじゃないだろう。
皇帝陛下の音頭で会談が始まったが、こっちは正直、隠すものなんてのは、フロンティアの超科学装備だけなんで、あまり関係ない。
(俺自身がフロンティアの超科学装備を全て把握してるわけじゃないし、その理論も全て理解してるわけじゃない)
向こうは、皇帝陛下以上のテレパスが相手だということで、心を読まれないように心理ブロック張ってるな。
「では、皇帝陛下。この場にて、先ほどお約束しました大規模宇宙災害対応の小型宇宙艇と搭載装備全てのデータが入りましたチップを、そちらへお渡しします。エッタ、そちらの侍従長さんへ、チップを渡してあげなさい」
「はい、ご主人様。こちらが小型宇宙艇、こちらが各種装備の設計データです。銀河系と、大小マゼラン雲でも同じ規格のものが使用されておりますので、こちらでも同じものを使っていただくと相互救助が楽になりますよ」
皇帝陛下以下、閣僚や軍人の皆様が驚愕している。
まあね、普通は平和条約締結してから以降、こういう最先端技術に近いものは贈られるものなんだろうが。
こっちは、そんな常識にゃ囚われぬ!
「ありがたいことではあるが、よろしいのか?未だ和平会談すら終了してない、平和条約の締結も終わってない状況での、このような、外部機密に近いデータを引き渡すという事は」
さすがに軍人らしき人が一言。
ふっふっふ、こんなものは、マル秘事項でも何でも無いのだよ、将軍。
「はい、大丈夫です。もう、銀河系でも大小マゼラン雲でも、同じ規格で作られた宇宙艇や救助機材を使う宇宙救助組織が大規模に設立されているのですからね。できれば、アンドロメダ銀河でも、同じく宇宙救助隊の設立をお願いしたいのです」
そう、俺の狙いは、これである。
大規模な宇宙救助組織を創ろうとするなら、中枢星系だけじゃなく、田舎星系や縁の星系だって、その組織に入れなきゃならない。
そのうち到着するだろう、銀河系からの実務集団には、この宇宙救助組織の公共性は絶対に確保しろと厳命した書類をフロンティアに持たせてあるので、ここは実務会議でも揺るがないだろう。
この巨大規模の組織が立ち上がれば、宇宙航行鎖国令などというタワゴトのような法律は消えてなくなる。
(中央星系のみで銀河内の全ての災害に対応するのは、人員的にも距離的にも、そして金額的にも無理だからだ)
でもって、この組織。そのまま高度な自衛組織になるので、無茶な予算を食いつぶす宇宙軍などは自然消滅することになる。
軍の関係者は、その可能性を予想したのだろう、蒼い顔をしている。
大丈夫だよ、軍人は救助組織には最優先で入れるさ。
さて、最後の爆弾発言と行きますかね。
「さて、皇帝陛下、及び、関係者の皆様。私の役割は、ここまでです。後は、銀河系からやってきた実務責任者たちがやってくれるでしょう。では、皇帝陛下、楽しい会談でした」
部屋に走りこんできた伝令と入れ替えに俺達は会談の部屋を出て行く。
俺はフロンティアと一緒に歩いてくる銀河系からの実務者集団(結局、100名を超える人数になったそうな)を迎えた。
後は、うまくやってくれよ、な。




