銀河のプロムナード 大いなる声
大団円の前に仕込みとして書いておかねばならないので、急遽ぶっ込み(笑)
ガルガンチュアも6隻合体で(一応の)完成となり、クルーの補充も完了した。
行く先々で、そのガルガンチュア最終形態は、様々なトラブルを様々な方法・手法であっさりと(年月は数百年かかろうとも)解決し、その航跡には「平和と安全」の文字が、しっかりと残る。
こうなると、それが一番気になるのは、やはり宇宙の管理者たちである。
今日も今日とて、果ても見えないような会議専用の高次元空間で、最優先事項としてガルガンチュアと、そのクルーたちのことが議題として上がっている。
「……ということで、今回我が担当銀河は内部抗争の末期だった隣接銀河を巻き込んだ銀河大戦となりそうなところを、彼らガルガンチュアに救われました!これで、幾千、幾万の銀河と銀河団が彼らに救われたことでしょうか!私は、もう彼らがコチラ側、つまり、宇宙の管理者側の手駒になるように、彼らを説得すべきと考えます。幸い、彼らを率いる統合マスターのクスミという人類種族は、ほぼ我々に近いレベルの力になっていると言うではありませんか。私は、我々が手を出せない現場対応の遊撃部隊として、彼らを有効的に動かすべきだと思うのです!」
賛成!賛成!
の多くの声と同時に、
「儂は、それには反対する。理由は、彼らガルガンチュア一行が、そんなことを露ほどにも望んでいないから。彼らは、目の前にある苦しみや悲しみをなんとかしたいと宇宙を渡るだけなのだ。結果的に、我々の仕事すら彼らに助けられているが、それだから強制的に、我々の都合で、あっちやこっちの銀河や銀河団、超銀河団も含めて、彼らガルガンチュア勢を動かすべきではない。発言者のそなた、まだガルガンチュアの行動原理が理解できてないようだな」
低いが、しっかりした声(基本的にテレパシー。それを受ける相手には音声化されて聞こえているようだ)が無限に広く思われる会議室内に響き渡る。
「彼らが三次元宇宙を行動範囲としているのは何故だと思う?我々のような精神生命体ではない、か弱な肉体で、傷つき、未来には死を待つ存在ではあるが、それゆえ、我々のように、あれやこれやの制約や束縛を受ける必要がない、いや、あえて彼らは肉体を得ていることに拘っているようでな。儂は、彼らとは長い付き合いで、彼らのリーダーであるクスミとは、ある程度、顔なじみのようなものでな。こちらの都合で何回もクスミを呼び寄せて手伝ってもらったものだ」
楠見を度々呼び寄せてと自ら語るということは、この個体が楠見に試しや手伝い、ちょっとした試練などを与えたものだろうか。
「それゆえ、少しはクスミと関連のある儂だからこそ、クスミには自由が必要だと思う。あの男を縛ってはならぬ、あの男を一つの星に縛り付けるとか一星系や一銀河の管理者にするとか、絶対にしてはならぬ。これは儂の固有意見ではあるが、クスミという、あの個体には、とてつもない無意識下の力が、未だ眠っていると思われる」
周囲がざわつく。
その発言に異論か疑問があるのか、別の意見が、
「大先輩であるところの貴方に異論があると発言します。ガルガンチュアに存在するクスミという人類種に、特別なレベルのESP、それこそ、我々にも匹敵するクラスとレベルのサイコキネシスとテレパシーに育っていると報告は受けています。しかし、それ以上のものが、あの個体の中に眠っていると?とても信じられません!今のレベルやクラスを超えるなどというESPは、それこそ我々をも超える、我々の上位存在として上位の次元にあるものたちと同じということになりかねません。それが真実と言うなら、クスミという個体は、三次元宇宙を破壊しかねない、いつ爆発するか分からない超巨大な爆発物ということになります!」
そこまで発言して続きを言おうとした瞬間、大いなる声が聞こえる。
「大いなる声」とは、稀に管理者たちの重大会議の場に発現することがある、管理者たちの上位者、より高度な次元を管理する超位の管理者の声である。
【そこまで。それ以上、発言してはならぬ。そなたたち管理者には、管理者としての大いなる権限があると同時に巨大な制限事項も存在する。今の発言は制限事項に抵触するゆえ、発言に注意するよう重大警告として、われ自ら発言させてもらう。かのガルガンチュアと、そのクルーたちについては、こちらの管理にあるわけではないが監視対象として常に注視されている。特にクスミという統合マスターに関しては、そなたらの力で管理者に引き上げるとか、クスミの意思に反する活動を強制することは厳に禁じる。まあ、自ら行動したいというなら、それを禁じるわけではないがな……以上だ】
いつになく長かった、そして強かった超位者の「大いなる声」
しかし、これでガルガンチュアが、そしてマスタークスミはじめクルーたちが管理者の外部干渉を受けない理由が理解できた。
理由があれば試しや試練、手伝いの依頼もOKだが、その任務を強制しようとする場合、ガルガンチュアのコース変更やクスミの強制転移も失敗しているという報告が、あちこちらか上がっており、その理由も不明だったからだ。
「私にも知らされていなかったのだが、どうやらガルガンチュアとマスタークスミは、我々の上位者たちの並々ならぬ関心を引いているらしいな。しかし、我々にも管理者としての任務と権限があるので、なんとしてもガルガンチュアには、今の自由気ままな旅の状況から、我々の有益な協力者となってほしい。これからは、どうすれば、ガルガンチュアを我々の善意の協力者にできるか、重要議題として話し合うことを要望したい」
異議なし!
の全員一致の賛成であったことは間違いなしである。
さて、次回から、最終回への大団円の話です。




