ガルガンチュア、完成?! その二十(最終話)
ようやく、最終話。
長いです、最終話なので。
それからまた数年後……
楠見たちガルガンチュアクルーは、三度目の合体変更完了となったガルガンチュアに戻っていた。
「一応の完成予想図は見せてもらっていたが、実物見ると衝撃的だな」
楠見が発言する。
楠見の乗っているのは新型の量産タイプ搭載艇母艦。
こいつ一つで裏と表に合計20隻の大型搭載艇(いわゆる500m級)を積める。
筒(収容筒)からの発進時には、この搭載艇母艦が主な発進(筒に無数の巨大穴が開くようになっていて、発進時にはそこから素早く搭載艇母艦群が発進・着鑑できるようになっている)となり、今まで中型や大型、小型や超小型などの各搭載艇発進などは行わないルールに変更された。
必ず超小型は小型や中型搭載艇に収納され、小型は中型や大型に、中型は基本的に大型に収納されるが特殊用途のものは特別に母艦に単独搭載されるようになっている。
こうやって見かけの数を大幅に減少させたため、搭載艇母艦を収容する筒は今までの4本で済む(新しい収容筒を作る予定が、作らなくてすんだので必要な材料が減り工期が短くなった)
「見事なものでしょう……改造完了した本船、フロンティアに、ガレリアやトリスタン、フィーアにフェルプスが外周に嵌め込まれるようにくっついた形になります。私が言うのもなんですが異形としか言いようがないですよね」
ガイド役のフロンティア(生体ロボット)が答える。
フロンティアは基本、球形だが、その他の同僚船は球形とは限らない。
ガレリアは独楽のような形をしているし、トリスタンは卵型。
フィーアはサイコロ形だが、オールドマンは所謂「太いまな板」形状。
修理や改修・改造専門とするためフロンティアの下面に接触しない数百メートルの空間を保ちつつトラクタービームの見えない係留索により固定されている。
ちなみに新人のフェルプスは、これも基本的な球形なのでフロンティアの上面に嵌め込まれ、情報収集用アンテナと自分専用の情報収集用搭載艇群を保持している(大部分の搭載艇は筒に入ることを承諾したが、独自の判断で動かせる数百隻の搭載艇群だけは自分の元にあるようにとフェルプスが言い張ったため、こうなった)
ちなみにフロンティアの前面には主砲が存在しているので、ここに嵌め込まれる宇宙船はない。
フロンティアを正面に見て、左にフィーア、右にトリスタン、下にオールドマン、上にフェルプス、そして背面にガレリアという位置関係になる。
それぞれの主砲の活躍時にはフロンティアを右や左にぐるりと90度回し、ガレリアの主砲なら180度回転という話になる。
エネルギー的にも、ミニ星系のように大幅な距離をとっているわけではないので扱い易くなっている(巨大な余剰エネルギー空間が、すぐ傍にあるのは危険だという話もあるが、位相をずらしているので安全である)
搭載艇母艦の収容筒は4本が統合され搭載艇母艦の全機発進時に邪魔にならない最小距離にてトラクタービームで相互に位置を固定。
シミュレーションでも実機の訓練発進時にも大幅な発進と帰還の時間短縮になり、改良したかいがあったとプロフェッサーは鼻高々。
これで、フェルプス捜索時に、あまりに船体として大きすぎる(ミニ星系クラス)ためにフェルプスへ直進コースを取れなかったという今までの欠点は解消された。
「小さくはなったが……より巨大な宇宙船というイメージは強化されたな。もう、異形の超巨大惑星という方が良いんじゃないか?」
楠見の素直な感想。
巨大惑星から様々な異形の物体が生えてるというのが直接的なイメージだろう。
「私、フロンティアが中心となりますので遠い将来、例えば残りの4隻が合流するとしても、中心部である私を巨大化すれば余裕は作り出せます。まあ、そのような事は確率的に極小だとは思いますが……この6隻が集まることそのものが、ほとんど極小の可能性が集まったものなんですがねぇ……」
フロンティアが、自分でも予想しなかったことですと言い出す。
楠見が驚き、
「おいおい、何を言い出す。それを言うなら、俺とお前、フロンティアが出会った状況そのものが奇跡みたいなもんだろう。何の変哲もない普通の大きさの銀河系、その辺境部にある太陽系に、なぜに銀河団探査船シリーズの1隻が埋もれてたんだ?本来なら絶対にフロンティアやガレリアなどが関心を持つ銀河じゃないよな?」
「そうですね、マスター。銀河系より、その近くにあるアンドロメダ銀河の方に関心が向けられるはずです、大きさ的にもエネルギー的にも。ホント、なぜなんでしょうか?もしかして管理者たちの未来予測が招いたことなのかも……未来に誕生する可能性の高い、始祖種族の遺伝子を色濃く発現させた先祖返りの特殊個体、楠見糺に対するサプライズプレゼントだったりするかも?」
「怖いことを言わないでくれ、フロンティア。俺は歴史も宇宙もひっくり返すような破壊者でもなけりゃ、世界を暗黒に落とす大魔王や大暗黒神でもない。俺は、能力は飛び抜けれてるかも知れないが、ただの人類、地球人だよ。宇宙へ出てからは一人の人間がやれることだけを精一杯やってるつもりなんだが?」
楠見がそこまで言った時、別の声が。
「どこが普通の人類、普通の地球人なんですか?あたしがクルーに加わってから、まだ数千年だけど、もうイヤってほど超人クスミの力を見せてもらいましたけど?」
真っ先にマリーの声。
続けて、郷。
「俺も長年、師匠と一緒に居ますが毎度のことながら師匠がやるトラブルシューティングの規模が普通じゃないって自分で分かってます?普通の人間、普通の生命体はですね、銀河規模の災害や大戦をなんとかしようなんて考えもしないんだって気づいてます?」
「そうですよ、ご主人様は一種の精神的怪物です。今現在、生身でご主人様と互角に戦えるような生命体はいないんです。精神生命体とか管理者たちのレベルになれば別なんでしょうけど、少なくとも、肉体という3次元に基盤を持つ生命体で、ご主人様に匹敵する生命体というのは、私が知る限り存在などしません」
エッタが続く。
最後はライム。
「本来、キャプテンの力は生命体が持てるレベルを、もうとっくに越えてます。普通、精神の力が肉体の中に入っていられるのは限界値として郷さんのようなレベルまで。私の目には郷さんですら生命体として存在しているのが不思議なくらい。キャプテンの力は、もう精神生命体として生きるほうが良いレベルなんです」
楠見、意外なことを言われた気がする。
マリーはクルーになった初めから楠見の力が異常・怪物・管理者レベルだと言い続けてきたので、もう慣れたところがある。
エッタやライムは、そんなことを言ったりしな……
あれ?
言ってたっけ?
楠見は記憶を探り、
あ、そう言えば言ってたな……
長いこと一緒にいる仲間だから、言われてもスルーしてたのか……
ちなみに郷もマリーと同じようなことを言い続けてたが、楠見自身が本当に気づいてないと感じ、途中から諦めたようで。
「どう?みーんな、あなた、楠見さんの力は異常で管理者レベルだと感じてるのよ。いい加減、認めなさい!」
マリーがトドメをさす。
「そこまでか?俺自身、念じるだけで星系を粉々にする力なんて、あっちにもこっちにもいるんじゃないかと思ってたんだが……」
あくまで一般人だと主張したい楠見。
そこに、トドメの二発目、郷。
「もう、認めましょうよ、師匠。タンパク質生命体の中でも人類、いや、多分ですが始祖種族すら得られなかったレベルの力を持ってるのが、この無限に広い宇宙でも師匠ただ一人なんだって事実を」
はぁ……
何かを諦めたような溜息をつきながら、楠見は渋々、自分が宇宙に唯一人のレベルに到達していると認める。
楠見以外、晴れ晴れとした顔で、新生ガルガンチュアは、その超絶的なエネルギー量を完璧に制御しながら、銀河を離れる……
異形の巨大惑星が異形の衛星を従えた形になった新生ガルガンチュア。
銀河を後にし、何もない銀河間空間を疾駆し、ときおり姿を消したと思えば、次の瞬間には数10万光年も離れたポイントに出現する。
以前のガルガンチュアと違うのは、宇宙を疾駆する姿が何やら生き物のごとく見えるから。
ただし、その疾駆する姿を観測するものが存在すれば、の話であるが。
次の話(本編)に行く前に、ちょいと銀河のプロムナードを書きます。
これ書かないと、最終話に続くストーリーに矛盾が出てしまうことが判明したので・・・