ガルガンチュア、完成?! その十九
一応、六隻合体版ガルガンチュアになるのは、まだまだ先(次回には?(笑))
それにしても、楠見はラスボスの定位置に定着するんでしょうかね?
いやいや、最終話(大団円)までには、まだまだ波乱やトラブルが待っていそうです……
改修・改造・増強作業に当たりつつ、近辺の隣接銀河の様子も窺いながら、楠見たちガルガンチュアメンバーは、それぞれの活動を行っていた。
「マスター、お久しぶりです。準備作業に入ってから、ちょうど十年過ぎくらいですか。そちらの様子はいかがです?こっちは代り映えしませんね、まだまだ私も増強と改修・改造に時間がかかりますので」
《フロンティアか、今月のブリッジ当直は……とは言っても、今の状況では当直も何もないけどな。緊急事態が起きても、動かせるのは搭載艇群だけだろ》
「そうですね。搭載艇が収納される予定の搭載艇母艦の量産は、オールドマンに任せてます。オールドマンの形は随分と変わりましたよ。現在、オールドマンの改修作業は90%程度ですね。移動中にやれる改修や改装を終わらせてたのが良かったようで、他の船は50%も進んでいません。まあ、この私の改修と改造・増強作業が一番多いですから、私に関しては未だ30%も進んでおりません」
《そうか、大々的な改修や改造になるんで、ミスの無いよう、ゆっくりとやってくれて大丈夫だぞ。俺達の方は、ちょっと厄介事になってしまってな。宇宙船の力を借りるまでは行かなくても俺達だけでとなると規模が大きくてな》
「エネルギーが足りないとかなら搭載艇を数隻、派遣しましょうか?武装も一新しましたし、以前よりも30%以上のエネルギー効率アップと余裕度アップをしましたので、この銀河に存在する星間帝国や星間同盟などの戦力に匹敵する数……そうですね、500m級なら100隻余りもあれば余裕で殲滅できると思いますが?」
《おいおい、怖いことを考えるな。厄介というのは社会構造の複雑さだ。星系で一つの文明圏となっているのに、未だに我が国が!とか言い出すやつが多い、偏った宇宙文明の修正だ》
「それなら提案が。外宇宙からの脅威を演出しましょうか?なに、500m級を10隻ほど星系末端部へ貼り付けさせて、その上でマスターのテレパシーメッセージを全星系の住人へ届けてやれば、それこそ一発で星系が一つになりますよ」
《相変わらず、遊びも何もないストレートな解決方法を……最終的には、それも考えているが、それでも、できるなら拳を振るうのは最後にしたい。まあ、郷やマリーも頑張ってくれてるんで今回は予想より早く終わるとは思うが》
「マスターが出られないんですね、今回も。まあ、予想はつきましたけど。マスターが現場に出て、もし誰かがマスターを拉致や殺害しようと襲ってきた場合、マスターの力が開放されない保証はありませんからね。刃を向けた瞬間、太陽ごと星系が粉々になる光景が目に浮かびますよ……ご愁傷さま、自業自得とは正にこれでしょうね」
《いや、だからな!それを回避するために俺は現場に出てないんだって!まあ、テレパシー通信で郷やマリー、エッタやライム達とは定期的に情報を交換しあってるんで、そうそう危ないことも無いとは思うんだが……ただなぁ、マリーが久々の惑星上任務だってんで張り切っちゃって……危険地帯へ行きたがってるんで護衛のプロフェッサーは外せないんだよ》
「そうですね。マリーさんもクルーの自覚がようやく出てきたということですかね。マスターが全面に出ると、もうトラブル解決まで選択肢がないとようやく気づいたんじゃないでしょうか」
《あのなぁ、フロンティア。人を化け物か魔王みたいに……まあ、半分は自覚してるから俺も強くは言えんが……》
「魔王のほうが良かったのでは?勇者に倒される運命でしょ?私としてはマスターが誰か、何か、ですかね?に倒されるとかいうイメージが全く浮かびません。そのうち精神生命体である管理者でも手に余る存在になりかねないと、私の本体の計算結果が暗示してますよ」
《ホントか?まあ、お前が言うなら、ほぼ間違いないんだろうが……俺の未来は、どうやら静かにのんびり過ごせるってもんじゃなさそうだな……》
「ここまでの実績を積み上げといて何を今さら……」
《まあ、とりあえずは、どちらもほぼ順調に進んでるということだろう。以上だ、また連絡する》
不意にテレパシーが途切れ、楠見との通話が終了する。
フロンティアとしては、なんとなく寂しい気がする。
ああ、これが、マスターに傍に居てほしいと思う、機械生命体たちの感情か……
この頃、楠見という存在に対して異様に執着する機械生命体たちの気持ちが、ようやく理解できたフロンティアである。
自分も、過去の生命体探索任務に就いていた頃の銀河団渡航時でさえも、今の状況とマスターの力や能力、自分の船体すら改造や改修という言葉が場違いと思われるほどにパワーアップしているこの現状と比べれば、昔はなんと無風状況にあったことやら……
機械生命体も、ほぼ自分と同じだろう。
始祖種族という伝説的な、しかし、機械生命体の記憶にはしっかりと残っている偉大なる種族の身近で働いていた遥かなる過去と、始祖種族が何処にも居なくなった現在との落差が、あそこまでマスター楠見に固執する原因だろうが……
ふと、フロンティアに、一つの思いが湧き上がる。
私の、いや、私達ガルガンチュアからマスター楠見が去った時、私の空虚を埋める生命体マスターなど、出てくるのだろうか?
仮のマスターでも、どんな生命体であろうとも(私の創造者であるシリコン生命体であったとしても)空虚を埋めることなど決してできないのだとフロンティアは、本体に震えが来そうなほど、あるいは、自分が生命体であるかのごとく、未来に怯え、悟る……
お、そう言えば、次で790話です。
このシリーズも、長いこと書いてきたなぁ……