ガルガンチュア、完成?! その十八
ここまで長かったけど、ようやく話の終わりが見えました。
これが終わったら、六隻目のサブマスターを迎えに行くって話を書きます(笑)
試練を受ける宣言をしてから3ヶ月後……
「6隻目、と呼んだほうが良いのかな?もう俺達の仲間になることは決めてるんだろ?」
楠見に言われ6隻目(仮名)は渋々、頷く。
「そうですね……本音を話しましょうか。我々本来の性格、実はエゴイストです。マスターが複数の船に共有されるというのは本来なら受け入れられないものなんですよ。ただしマスター楠見、あなたの場合は別です。どうやっても単一の宇宙船が独占できるレベルのマスターではありません……ちなみに、これはフロンティアであろうが私であろうが他の8隻であったとしても変わりないと思います。これは例え以前のマスター、シリコン生命体であろうが今のマスター楠見には及ばないということですよ」
6隻目は言葉を切る。
続けて、
「ですから、あなたがたガルガンチュアが、この銀河に来たときから……いいえ、もっと前からですね、フロンティアとマスター楠見が出会った頃から、これは決められていたことなのではないだろうかと思いますよ……私はガルガンチュアとして仲間に加わる覚悟はしていました。ただね、今回は、あまりに長く待ちすぎたせいで少し意地悪をしてみたかっただけなんですよ。もうすぐフロンティアたちは試練より戻ってきますから、そこで私の加盟と、ガルガンチュアを構成する1隻としての名前をいただきたいと思います」
「そうか……これから長い付きあいになるが、よろしくな」
「いえいえ、少なくとも今までのような情報収集に明け暮れる退屈な日々だけはなくなるでしょうから、大歓迎ですよ」
楠見と6隻目、互いに顔を見合わせ、ニヤリと笑う。
案外、この二人(一人と1隻?)は気が合うのかも知れない。
数日後、試練の場よりガルガンチュア構成の宇宙船たちは6隻目のいる場所へ何とか辿り着く。
そこにいる楠見を確認して、うっすら涙を浮かべるもの、狂喜乱舞するもの、じっと立ち尽くして何やら思いに耽るもの……
5隻がそれぞれの喜びと感慨に耽る様が見て取れる。
「ご苦労さま、頑張ったな、みんな。これで、マスターが居なくなったときに下がる自分の限界レバルは把握しただろう。で、朗報もある」
楠見は、そこまで言うと6隻目を呼び寄せる。
「ようやく6隻目の承諾を得た。俺達の仲間が増える。ガルガンチュアは今から6隻合体船となる」
ようやく素直になりやがったと他の5隻は思ったが口には出さない。
楠見、続けて、
「で、6隻目の名前だが……フェルプスにしようと思う。これは多分に俺の感傷的なものがあるんだが、俺のビブリオファイルにある大昔のスパイドラマからだ。情報収集専門鑑の名前としてピッタリじゃないかと思うんだがな」
「おお!フェルプス!ありがとうございます!これで私も、ガルガンチュアの一員になれたわけですね!」
フェルプスだけが感激の極みにあり、他の船は若干、引いている。
無理もない、マスターが居ないという現実環境で、おまけに星系化フォーメーションまで解かれて1隻づつ別々の方角と星系へ送り込まれ、なおかつ、そこで発生してるトラブルがあるなら解決して、それでもって自力でフェルプス(6隻目)のもとに、つまりは楠見の元まで戻ってくるのが試練だった……
もしかしたらということで郷やエッタ、ライム、マリーにプロフェッサーは仮マスターとしてそれぞれの船に常駐していたが、それでも手出し厳禁!(アドバイスもダメなんである)
もう、動かぬ主機を無理やり動かし、手足を縛られた格好の本船ではなく搭載艇に細かい仕事は任せつつ、やっぱり起こってた星系レベルのトラブルも何とか解決してヨタヨタと戻ってきたら、この有様。
それぞれの船から降りてきたサブマスター(仮の仮に近い、何もできなかった、させてもらえなかった5人)の中、プロフェッサーが静かに手を上げる。
「わが主、ご提案が。今現在、小星系クラスになっているガルガンチュアに、もう1隻加わるのであれば、ちょっと、チームとしての編成にご提案が」
「お、珍しいな、プロフェッサー。あまりに巨大化してる今の状況を何とかできるなら何でも聞くぞ」
「わが主も今のガルガンチュアの状況はマズイと思っているのですね。私は以前のような筒で繋ぐ方式ではない合体方式を提案したいのですが」
ということでプロフェッサーは新しい合体方式を提唱した。
3D図面を会議用モニターに映し出す。
「こ、これは斬新!ですが、これですと中心部の船が大きくないと他の5隻が入るスペースそのものが無いですよね?」
フェルプスが真っ先に意見を出す。
さすが情報収集専門で動いてただけのことはある。
新しい合体方式だが先立っての長い筒を使った接続方式ではなく、どっちかというと中心部となる超巨大船に他の5隻が嵌まり込む(ブロック遊びのようなものかな?でっかいブロックの空いたスペースに、その比較的小さなブロックを嵌め込んでいくような形になる)ような、凸凹のある球面というほうが当たってると思う。
「マスター……確かに、これだと現在のような直径数百万Kmではなく最大でも直径10万Kmくらいにはなりますが……中心部の球体は私ですよね?プロフェッサー」
「その通り、中心部はフロンティアとなる予定です。直径は今の倍以上、およそ5万kmとし、その球体に窪みを作り、そこに他の5隻が嵌まり込むような形となります。利点は分離や合体が簡単になることと、そして搭載艇を積むということを考えなくて良い点ですね」
「で?利点があると言うなら欠点もあるよな?」
意地悪く楠見が言う。
まあ、その欠点とやらは一目瞭然。
「はい、我が主。搭載艇を以前から使っている合体用筒に全て収納するということになり、本船からの制御が少しですが遅れるのが欠点ですね。まあ搭載艇群として動き出してしまえば問題はないと思われますが」
「はい!それなら私に改良案があるよ!聞きたい?」
「おや?早速かな?フィーア。どんな改良案だ?」
楠見の声に意を良くしたフィーア、
「えーっとね、搭載艇がバラバラに積まれてるのが問題だと思うんだ。だからさ、いっそ搭載艇母艦を、この際だから一気に増やして入れ子式にしちゃえば?そうすれば搭載艇母艦の発進と帰還だけで、そんなに出動時間はかからないと思うんだよね。どう?」
「発想は素晴らしいと思いますが上手くいきますかね?シミュレーションやってみて搭載艇母艦の数を予め決定しておかないと改装と改造、増強作業が大変になりそうです」
プロフェッサーの返事に、やってみようか、と返事を返すフィーア。
「えーっと……改装と改修、増強作業って我々もか?」
ガレリアが疑問を呈す。
プロフェッサー答えて、
「主軸として対象になるのはフロンティアですが合体する以上、他の船も多少の改修や改造作業が発生します。作業期間そのものが長期になるのは確定してますので、この際、オールドマンやフェルプスの改装や改造も進めてしまえば良いかと。オールドマンの改修と改造は最終段階まで行ってないですから、完全な最終改造まで行うのが良いかと思われます」
トントン拍子で大改造計画が進んでいった……