ガルガンチュア、完成?! その十五
ついに、6隻目の位置が判明!
ガルガンチュアが、動く!
楠見たちが惑星統一政府を目指して活動し、もう少しで世界政府が立ち上がろうとする。
そんな時期まで遡り、今度はガルガンチュアの動きを見ていこう。
「ガレリア、もうこの銀河全体の70%を超える範囲を探しました。未だ見つからないというのは、どういうことだと思いますか?」
フロンティアが疑問を口にする。
通常なら、ここまで探せばエネルギー的に見つかると思っていた。
通常の宇宙船、つまり銀河の中で動き回る船と銀河団探査船とは、保持するエネルギーの総量が違いすぎて簡単に見つかって当然。
それが、残り30%弱の操作範囲まで絞り込んでいるというのに、どの搭載艇も巨大宇宙船の発見報告を送ってこない。
「それな、フロンティア。私としては、考え方を変えたほうが良いのではないかと思うんだ」
「え?どういう意味ですか?」
「ここまで探しても、通常の恒星より遥かに高いエネルギー量を持つ6隻目の銀河団探査船が見つからないのは、意図的にメインエンジンを落としているのではないか?ということだ」
「ステルスという意味では、とことんまでエネルギー量を落とせば、自然に宇宙空間に存在する巨大な金属小惑星と変わらないだろうね。ある意味、究極のステルスということか……」
「まあ、これは私の意見じゃない。ほら、出てこい」
ピョコン、と擬音が聞こえそうな風に登場してきたのは……
「はいはーい、お久です!フィーアですよーっ!って。まあ、日常的に本体同士はデータ通信で会議してるんだから、しばらく会ってなくても良いんだろうけどさ。でも、私達みたいな半有機アンドロイドの端末体は、しょっちゅう会わないと寂しいって感情が発生するって思いませんか?」
「あー、やっぱりフィーアでしたか。そうですね、主たる本船のエネルギーを落としてるという発想は、エネルギーの塊のようなガレリアでは出てこないでしょうから。で?フィーア、6隻目を見つけるには、どうすれば良いと思いますか?」
「そうだねー。原始的な方法だったら、すぐにでも思いつくし実行できると思うんだけどね」
「で?それは、どういう方法だ?」
ガレリアが会話に入ってくる。
フィーアは、分からないかな?
とでも言うかのように、
「最低限以下のエネルギーで動いてる巨大な金属小惑星ってことだと考えれば良いんじゃない?つまり、直径5000km前後の小惑星サイズの金属塊を探せば良いんで、それなら搭載艇のレーダー網で探せば良いじゃないの」
「あ、そうか。船と考えず、金属塊と考えるべきだったか」
ということになり、今までパッシブに徹した捜査活動が、あっちこっちで微弱ながらも星間レーダー網が結成される。
それから一週間。
ついに目的の宇宙船らしきものがレーダー網に捉えられた。
「長かったが、ついに発見された……しかし、ここからが厄介だぞ。6隻目はレーダー網に引っ掛かったことに気づいているのは確実なのに未だ沈黙を保っている。あくまでも我々ガルガンチュアが自分のところに来なければ知らぬ存ぜぬを貫き通しそうな雰囲気だぞ。どうする?」
そんなの簡単だよ、とフィーア。
「私達全員で6隻目のところへ押しかけるってのは?」
呆れた目でフィーアを見るガレリアとトリスタン。
「フィーア、6隻目は銀河の中ですよ。我々の現在の規模を考えてみてください」
トリスタンの感想も呆れ気味。
「それが何?どうせ6隻目ちゃんは一人ぼっちな何もない宇宙空間にいるだろうから、この大きさのまま行ったって大丈夫だと思うよ」
フィーアはフィーアなりに考えているようだ。
少し考えて、端に座ってたオールドマンがフィーアの横に立ち、
「良いのではないか?どうせ、6隻目はこのような状況すら考えに入れてるだろうからな。いっそ、マスターや他のクルーたち全員で行ってみるのもよかろうて。マスターがいると案外、6隻目の説得も上手く行くと思うが、どうじゃろ?」
ガレリアとフロンティアは、しばし見つめ合う。
その一瞬でデータのやり取りも終えたようでフロンティアが口を開く。
「分かりました。フィーアの提案通り、今の編成と乗組員全てで6隻目を訪問しましょう。しれっと我関せずを貫いてる6隻目を驚かせてやるとしましょうかね。では、トリスタンとフィーアでマスターたちに連絡をとってください。6隻目の位置は特定してますね?じゃあ、搭載艇群を全て帰還させてください、ガレリア。オールドマンは6隻目が仲間になった場合に最適なフォーメーション位置を計算しておいてください。それと、我々の仲間となるなら多少の改装と改造は必要になると思われますので、改修と改造専門艦となったオールドマンの最初の仕事になりますね。その場合に必要となる部材も用意しておいてくださいよ」
6隻目との邂逅へ動き出すガルガンチュア。
しかし、これだけ巨大なシステムが動き出すには、それから数ヶ月の時間を要した。
「さーて!6隻目のところへ行くぞ!孤独に情報集めだけしてる奴の足元で、でっかい声で眠りを覚ましてやろう!」
楠見の掛け声で、ガルガンチュアが動き出した……