ガルガンチュア、完成?! その十四
ようやく終わりが見えて来ました(笑)
今回は辛かったぁ(笑)
長すぎた……
企業経済界の統一(完全とは、さすがに行かないが)が終われば次は政治と国家の統一を目指すのが楠見たち。
幸い楠見たちの企業体を中心として世界中に楠見たちが関係している企業や、その子会社、はたまた楠見たちの企業体が吸収合併している形の、名前だけ違う本質的には支社や支店、営業所もある。
楠見たちは経営陣の中でも特に優秀な者たちを集め、特別な教育機械を使わせる(この頃には、もう社会の中に教育機械の汎用性と、使った者たちの優秀さは知れ渡っている)
ちなみに、この特別集団の中には高確率でテレパシー能力を持つものがいた(全てではないのが惜しいが)
数週間後、この特別教育を施された超頭脳集団が世界各国へグループ単位で散っていく。
社長や重役が抜けた、その企業の後は?
というと、それは問題ない。
穴埋めは過去に中学や高校で教育機械を使ったときに異常に知能が上昇した者たちを楠見たちの学校で拾い上げて、特別に年齢以上の教育課程を終了させている異能集団がいるので、その者たちを経営陣が抜けた企業へ相談役として複数人、送り込んでいる(ワンマン経営に近かった会社など社長が抜けて代わりの経営集団が来たら喜びのあまり飛び上がる社員もいたくらいだ)
優秀な経営者として実績も積んできた社会工作グループは派遣された国の企業の中でも軍事産業や大学の研究室、民間でも大規模に基礎研究している会社や企業へ実力で入っていく(ペーパーテストも面接も、百年は違う知識と知恵で難なくパスして、即戦力の経営陣へ入社直後から抜擢されるのは分かりきってる)
数年も経たないうちに、その会社や企業体、研究所でもトップ集団を率いるリーダーとなった者たちは、そこで政治家へと接触をはかる。
「**先生、この頃は、かなり隣国と揉めてますね。どうでしょうか、お隣の国の大学研究室に私の友人###がいるのですが彼も隣国大統領$$$氏と知り合いのようですので、一度、お会いしてみませんか?顔も知らない人間同士は争えても顔見知りとなったら違うと思うんですよ。いかがでしょう、お互いが腹を割って話す機会を持ちませんか?」
こう言いながら、テレパシーを持つものは弱いテレパシーで感情と思考を嫌悪から好意へ切り替え、テレパシーを持たないものは一種の催眠誘導のような技術で同じように相手の好き嫌いの感情をコントロールしていく。
このようなやりとりを隣国でも同様に送り込まれたメンバーが話している。
いくら嫌っていても殺し合いまではやりたくないのが本音なので、会えるのなら是非とも!
という声が、あっちでもこっちでも上がり、最初は非公開、次には限定メディア、数回後には全面公開で対談と折衝・交渉が行われる。
交渉しているのは政治家や国家の重鎮だろうが、実は横にいる者たちに密かにコントロールされているなどとは夢にも思わす、幾多の折衝と交渉の末に停戦から平和条約締結!
次には経済交流と次々と局地紛争が収束・消火されていく。
友好条約と同盟締結がなされるのも時間の問題となっていくのだが……
ここで、ごく一部の国に問題があるとして報告が上がってくる。
それは、独裁体制にある国や、愚者が政治上のトップにある国。
このような国はトップの意見や感情でものごとが決まり、国の方針すらもコロッと変わることがある。
数ヶ月前まで蜜月状態になっていた国家同士が急に国境閉鎖になって政治も経済も、人の交流すら止まるということがあると判明。
こういう国には、いくら経済的に豊かになる実績があろうとも外からの企業や人材を送り込むことすら難しい(技術や知識は欲しいが人材も企業も不要というやつだ)
こういった厄介な国の場合、楠見や郷など、超巨大企業体としてのトップたちが、あくまで政治など眼中にない「視察」目的で行くこととなる。
「楠見先生、我が国の最新産業機器は、いかがでしょうか?我が国の五ヶ年計画の結果、ここまで素晴らしい大型工場に、ここまで多人数の生産員を配置しておる国など、ほんの数ヶ国でしょうな」
などと案内人とスパイを兼ねるガイドが、楠見に向かい、おらが国の技術・工場を誇っている。
「うーむ……何の外部情報もなしで計画から生産までやってるのなら地力は素晴らしいと言えますが、正直……後で、このデータを貴方の上司に渡してあげてください。それから、交渉したいのなら、この中に私の連絡先のデータもありますので政府を介したくないなら極秘でやりますよ」
実は楠見たち、もう自分たちの政府高官とは連絡を取り合って数年、ツーカーの仲である。
この視察訪問も政府の表には秘密だが、裏でマリーたち秘書軍団がバッチリと報告&調査済みで、楠見には「ここまで譲歩や技術・知識を公開しても良いレベル」を連絡済み。
当のスパイ兼ガイドに渡したデータチップも、その辺を調整したものとなっている。
視察先の工場や産業会館など十数箇所にも及ぶ視察旅行が終了すると、非公開ではあるが、ここの国のトップ2やトップ3などの人物が接触してくる。
楠見や郷など未だ独身との情報も握っているのかどうか分からないが先方は美女の歓待などでハニートラップを仕掛けてきたりする。
まあ、そのあたりを秘書軍団がガッチリと防御・ガードをしている上、楠見も郷も「独身主義」を国内外共に標榜している(あまりに女性に素っ気ない態度をとる二人に実は男色ではないのか?という疑惑すら、ちょくちょく話題やネタとして上がるので楠見も郷も苦笑い)ため、ほとんどハニートラップの効果が得られないのでお国トップの書記長や将軍など、役立たずの諜報部に怒りをぶち撒けているところだ。
「奴を取り込むことができれば、我が国が全世界をリードするどころか全世界に覇を唱えることが可能になるのだぞ!どうしても欲しい人物のトップなんだ!交換が可能なら、お前たちもすべて差し出しても、我が親族すら差し出しても良いくらいなんだぞ!それが何だ?取り込むどころか逆に奴のシンパになる者すら出てくる始末ではないか!」
部下たちも反論したいのは山々なのだが言った途端に首を切られる(政治上も、物理的にも)のが分かりきっているため、何も言わずに黙ってお怒りの罵声を聞くだけ。
しかし、トップ2と3にある人物は、どうしても言わねばならない。
「そこまで言われるなら、将軍様。あなたがターゲットに直接会うべきです。ここまで、部下の報告を聞くか、それとも監視カメラの映像を見るか、どちらかでしょう。これからの方針を決めるのは我々ではない、あなたです。あなた自身でターゲットの価値や好き嫌いを判断しなければ、国家としてどう動くべきなのか決定できないでしょう」
正論である。
実は将軍と呼ばれる人物は、ビビリで臆病者、しかし自我だけは巨大で負けることなど考えられないという俗に言う「困ったちゃん」が大人になって権力を持つとこうなるという見本であった。
ターゲットとなる人物とは今現在、この国に来ている仮想敵国の重要人物。
国家の政治を司る人物ではないが別の意味では超重要な存在。
現在、世界で一番と言われても自他ともに認めるだろう技術と知識の持ち主で、この人物がいなければ世界の技術進歩は数十年どころか数百年は遅れると言われる。
「怖い……怖いよ。正直なところ、あのクスミなる人物の輝きが怖い……果たして、この俺が直接会って、それでもあの男を御せるだろうか?」
呟いているのは、誰も入るなと言明して執務室に入ってから30分後のこと。
考えれば考えるほどに怖さが倍増してくる。
監視カメラで一瞬捉えた、あの男の視線。
数秒であったが、あの動画の映像が記憶に染み付いている。
あの突き刺すような、人の心を射抜くような視線と、笑みの中に垣間見える黒い笑い。
しかし、国家を率いていくのは今現在、俺一人しかいないのが現実。
「やるしか、ないか……」
覚悟を決めると不思議と恐怖心は薄らいでいく。
あとは会談と会見の日程を調整するだけだ。
一騎打ちで奴をこちらに取り込まなければ、この国に明日はない……
某将軍様は自分の心の弱さを自分で隠す、いや、否定するように眼差しを上げて悲壮とも言える決心をする。
数日後、某将軍様と、彼にとってターゲットである人物、楠見との懇談会が行われていた。
これは異例中の異例、部下たちにとっては驚きの光景である。
「お初にお目にかかる、楠見先生。あなたの頭の中にある知恵と知識、そして未来から来たと言ってもよいほどの技術と発明・発見は、世界に向けて開かれている……しかし、その恩恵が与えられぬ国々もある」
某将軍様の言葉に引っかかるものを感じる楠見は、
「将軍様、お噂は様々に聞いておりましたが、お目にかかるのは初めてですね。で、あなたの言われる「私の未来技術の恩恵が与えられていない国々」というのは、この国も含まれているという事実ですよね」
通常だったら将軍様の怒りを買うほどの直接な回答に部下たちはヒヤヒヤ物であり、心中では冷や汗を垂らしている。
我が国の中では確かに某将軍様はオンリーワンのトップであるが、世界から見れば、この国のトップなどアリの巣の女王アリのようなもので、下手すれば民族ごと国が潰される事態になりかねないのが、将軍様が相手をしている楠見その人の力なのだ。
某将軍様には自分よりも遥かに強大で重要な人物、楠見の情報は全て知らせていない(そんなことしたら将軍様の怒りを買ってしまうのがオチだ。某将軍様に匹敵する権力・財力・知力の持ち主はいないと、この国の誰もが幼少から叩き込まれるように教育されてきた)
この国に楠見たちの企業の息のかかっている会社はない(国有企業ばかりで通常の株式会社など存在しないのが、この国)が、どうしても最新技術が欲しい某将軍様は、曽祖父からの掟を破ってでも、この男の持つ未来知識を手に入れなければならない……
楠見は、目の前にいる矛盾を抱えながらも必死に支配者たらんとする男に同情と憐れみを感じている。
こいつはこいつで、一つの国家と国民というものを自分で背負うと決め、足りないものは努力と権力で何とかしてきたんだろうけど……
まあ、それでも国を世襲の独裁国にするってのはダメだよな、うん。
独裁国家もよいが、それは緊急時の非常手段。
他に国家というものを率いていくべき人物がいない、あるいは、多少強引でも急激に国家や国民の意識レベル・教育レベルを引き上げるなどの非常・緊急時の場合のみにしないと、初代は良くても二代目やそれ以降がバカと阿呆ばかりになる……眼の前の人物のように……
こいつも、通常の民主国家で選挙という「指導者選別システム」があれば、真っ先に落とされるような品性下劣な人物だ(国家を背負うなどというプレッシャーがなければ、普通に地方公務員としてやっていけたかもしれないくらいの指揮能力は持っているが)
まあ、ちゃっちゃと済ませてしまうか……
そう思いながら、教育機械代わりに楠見自身が意識下教育を、某国の某将軍様に施していくのだった(相手には教育されているという感じは全くさせず、懇談会の時間、30分ほどだったが、決定的に主義主張まで変える一歩手前までの意識下教育を施している楠見。もちろん、手段として使うのはテレパシーで、会話中に楠見の中の別人格が教育係として某将軍様に必要な知識を教え込んでいく)
懇談会が終了する間際、
「楠見先生、私はあなたに教えられました。この国は変わりますよ、私が変えてみせます。その後は、世界連邦の加盟を目指して行きますよ」
楠見に対して、某将軍様が言った言葉の衝撃は、周囲に困惑と、それと淡い希望も与えたという……
そのころ、郷も同じように某国の某独裁者に招かれて同じようなことをしていた。
世界が、世界連邦という一つの星に一つの政府を目指して進み始めるのは数年後のこと。
しかし、進み始めてしまえばゴールは早かった。
5年も経たずに、世界は統一政府を樹立し、国々はその名を変えて「**地域」とか「**地区」とか呼ばれることとなる(元の国の名を使ったほうが住所がわかりやすいと、**には元の国の名が入っているが、そのうちに緯度と経度で呼ばれるように進めているという)
こうなると、元の国としての発展程度が大幅に違ってくるため、発展の遅い国や遅れていた国や地域には技術的・知識的・教育的な保護と支援が必要になるが、それは、
「我社が引き受けますよ、財政も教育も、技術的支援も」
楠見が言い放つ。
世界連邦の政府高官たちは、冗談だろう?
と受け取ったが、楠見は早速行動する。
手段?
教育機械の登場だ。
試験的に、一番遅れている国家や地域の教育に教育機械を投入する。
現地では魔術の類かと拒否されそうになったが、テストケースで幼児教育に投入すると一年も経たぬうちに成果が上がり、それからは大歓迎される。
そこからは爆発的に評価が上がり、楠見たちの会社では教育機械そのものを大量生産することになる。
10年もすると、発展の遅い早いとか、先進的地区やそうでないかを問わず、教育機械が世界的に導入される。
「はぁ……ようやく惑星統一が成ったということかな。長かったなぁ……ところで、ガルガンチュアの方は?」
楠見が問うと、マリーが回答。
「数ヶ月前に、とうとう6隻目を発見したそうですよ。でも、その6隻目なんですが、ちょっと厄介らしくて……」
「ん?厄介?船同士じゃ話がつかないってことか?俺や、ガルガンチュアクルー全員で行ったほうが良いということかな?」
「はい、どうも、そのようです。こちらの過去の行動やルートも、全てではないけれど、ある程度は把握してるようですね、6隻目」
やれやれ……
ここに来て、一番厄介な性格の探査船に当たったということか……
楠見は、頭をかきながらも、困った顔に笑みを浮かべていた。