ガルガンチュア、完成?! その十三
あー、今回は長かった(笑)
書いても書いても会議のシーンが終わらんのは焦りました(笑)
楠見たちは、それから行動指針を変えることにした。
「マリーさん、ようやく宣伝費を目一杯使うことになりそうだよ」
楠見が関連企業のトップを集めた合同会議を開くということで、数週間前から、楠見たちの会社を中心とする町の区域にある旅館やホテルは予約で全ての部屋が埋まる。
ビジネスホテルが多かったが、近くのホテルや旅館が全て予約客で埋まっているため、その周辺にあるホテルや旅館も全て予約や長期泊の客たちで埋まっていく。
ついには楠見たちの会社を中心とする半径30kmほどにある隣町や周辺町にまで部屋を探す会社の総務部から電話がかかるまでとなり……
「えーい!まだるっこしいっ!我社の関連会社に、どんな技術があるのか知らせてやりましょう!」
関連会社含めた秘書たちの頂点となった形のマリーが、その号令一下、宇宙港とは別に作っていた、これも広さでは宇宙港に負けてないグラウンドに、数日で奇妙な建築物が……
「はい、我社の関連企業で開発してる災害用の緊急住宅と、緊急マンションです。緊急用と言っても、そのまま数十年は快適に住めるようになってるんですよ」
解説してるのは秘書たちのNo、2と自他ともに認めるライム。
広いグラウンド狭しと建っているのは本来は災害救助のために開発された建物。
ただし数ヶ月で住めなくなるような劣化住宅ではない、二階建て住宅や本格的3階建てマンションすら住宅展示場のように建っている。
「これは工程半日で建てることが可能な住宅と、工程3日で建設可能な3階建てマンションです。パーツの組み合わせだけですが地震や津波、洪水や台風、竜巻きに巻き込まれても大丈夫なくらい頑丈です。ホテルや旅館が予約できなかった会社の方々は、こちらにお泊まりください。ただし、食事のサービスはありませんので悪しからず」
ハハハ、と小さな笑いが起きたが、それよりもライムとマリーの回りにいる人々には、この光景が信じられない。
どうしても宿の予約が取れないんですよー!
と泣きつかれた数日後、何もなかったはずの会社のグラウンドに様々なデザインと大きさの一軒家とマンションが、あっちこっちに建っていたのだ。
それから2週間後。
総合体育館かコンサートホールかと見まごうような広さの一室に、楠見たちの会社と何らかの関連のある社長や副社長、または代理で専務や常務らが参加している総合企業会議が開かれる。
まずは、開会の挨拶は総会長の楠見から。
「皆さん、お忙しいところをご都合つけていただき、感謝の念に耐えません。これより、コングロマリットとなった我が社中心の関連企業も含めて、総合的に、この大規模企業体の今後の目標を決定していきたいと思います。この会議で決定するであろう長期目標と短期目標の達成に邁進していただくことを、私は大規模企業体の総会長として願うものです。これから数時間にも及ぶでしょう会議、有益なものとなることを!」
万雷の拍手。
司会は有名な声優にお願いしたが、さすがに職業柄、声が通る。
「では、司会として議事進行を進めます。では、最初……」
の言葉から始まる、活発な意見交換。
さすがにマイクなど使わないと全参加者に質問や議論の内容、回答や解決法などの声が届かないので、参観者は全員、小型マイクとノイズレスイヤホンを装着している。
聴力に問題のある人たち(少人数ではない)には骨導マイクや骨導スピーカーを装着している(関連企業で開発している最新型だ。普通に生活して気づかないくらいのサイズと高性能である)
会議が始まってから、1時間後。
そこから会議は紛糾する。
「世界統一政府ですと?!言わせてもらうが、我々企業は、それぞれの会社や部署での目標を達成していくことで精一杯だ!長期ではあるが目標があまりに大きすぎる!こんなものは、超大企業体とは言え、一介の企業体が打ち出すレベルのものじゃない!」
楠見たちが大企業を吸収合併したときにくっついてきた、中規模工作所の所長からの意見だ。
通常の企業家として真っ当な意見ではある、しかし、楠見たちの意見と見識は、そんなものを飛び越える。
「今、この星は宇宙に飛び出す準備時期にあります。しかし、今のこの星の状況、小さな国家単位でくっついたり離れたり争ったりしている状況で、宇宙へ出たらどうなると思いますか?ご想像どおり、この星の争いを宇宙へ広げるだけです……ちなみに、これは社外秘、ここだけの話として聞いてほしいのですが……生命体というのは、この星にいる生命だけではありません。この星を飛び出しても隣の星系へ行ったら別の生命体や人類がいます。銀河規模だったら、それこそ無数に、うじゃうじゃと。その中には、この星の人類のように争いを好む種族がいるかも知れませんよ?そういう種族や生命体に、今、この星が発見されたらどうなると思いますか?想像とかファンタジーではありません。別添付した書類の95ページを見てください……この銀河に住む代表的な生命体種族を100種類ほどサンプルとして取り上げています……ちなみに、この別添付書類は、この会議が終了次第、消滅するように加工されていますので持ち帰りは不可能ですが」
怒号が飛び交う中、郷が比較的冷静に、そして静かに話し始め、騒動は止み、騒然としていた室内は息を呑む音だけになる。
「郷総合社長、衝撃的な発言でしたが、これは貴方がたが異星人のスパイということですか?今の我々の技術と、持っている宇宙船の性能では銀河中の生命体など探せません」
これは最初とは別企業の副社長の発言。
あまりの郷の衝撃的発言に、他のものは声もない。
おもむろに、郷ではなくマリーが話し出す。
「我々が異星人ということであるなら、それは正解です。ただし、何処かの星の尖兵、スパイと言うことではありません。侵略者として来ているなら、我々は数年どころか数十年前にこの星くらい征服してます。大体、今の宇宙船も、そのエネルギー炉も、全て我社が開発・提供しているものですよ、それをお忘れなく」
「そ、それでは、なぜこんな時間をかけてまで我々に恩恵を与えているのですか?理由と、その目指すところをご説明願いたい」
マリーが楠見に目配せする。
楠見は、ここで壮大で重大な秘密を明かすことにする。
「それは、俺たちが、この銀河どころか、銀河団も、それどころか、超銀河団すら超えたところにある銀河の出身だから。俺は、いや、俺達は今まで十万年近く、この宇宙を旅しながら、あっちの銀河、こっちの銀河と立ち寄りながら、この大宇宙そのものを安全で平和な空間にしようと頑張ってきたのさ。この星に立ち寄ったのも何かの縁ということで、いつものお節介をしている」
あっけにとられる質問者。
てっきり、この銀河の大規模な星間帝国や銀河連邦などの大きな組織から来た文明加速要員かと思ったら、まさかの返答。
もう質問者の想像すら軽く超えている……
質問者は何も言えずにへたり込む。
次に質問に立ったのは比較的最近、企業体に加わった若社長。
「今のほうが衝撃でした。まさか、ルーティン作業で宇宙を平和で安全な空間に変えようなどとしているとは……で?楠見総会長は何を求めてるんです?それほどの大事業となれば見返りが必要ですよね」
質問者に対する楠見の回答は、
「いや、何もない。だいたい、日常作業やってて特別な見返りも何もないだろ?俺達にとっちゃ、こんなのは日常生活のヒトコマなんだよ」
あんぐりと口を開けたまま固まる質問者。
予想してないどころか、これほどの文明加速と技術・知識供与が日常茶飯事だとは……
司会が、ハッと気づいて終了の次第を。
閉会はライムが受け持つ。
「では、決定した長期目標と、それを実現するための短期目標は、後ほどデータでお送りします。それと、会議の中でも言いましたが、式次第の予定表以外の別添付表は、すぐに分解しますので、持ち帰りは不可能です。では、皆様、解散です。これ以後、1週間ほどはそれぞれのホテルや旅館、グラウンドに建てた住宅やマンションは利用可能ですので、ごゆっくりと精神・肉体を癒やしてお帰りください」
この結果を見越してか、会議後、すぐに自社へ戻ろうと急ぐ集団は見られなかった。
相当な衝撃を受けて、それに精神が追いつく時間が必要なのだろうか。
数ヶ月後、楠見たちが率いる合同企業体は、より一層の結束と、より高い目標を目指し、再起動する。
社員たちも重役たちも、短期目標の達成が長期目標の達成に繋がるのだと理解し、それに向けて頑張る。
最終目標は、その会議の参加者と、代理で出席した重役から詳細を聞かされた社長や副社長しか知らなかったが……