ガルガンチュア、完成?! その三
楠見たちが休暇先に選んだ星。
その星は楠見と深い因縁がある星だった……
ここは、ありふれた銀河団の中でも、特にありふれた感のある銀河の中でも、特に目立つことのない太陽を持った星系。
この星系のハビタブルゾーン(これは人類種族に限った言い方。メタン(水素)呼吸生命体や他の種族にとってのハビタブルソーンは全く違う)に、2つの星があり、現在はどちらにも人類種族が住んでいる。
故郷の星は、恒星に近い方の惑星。
もう一つは人工的に大気や土地を改造して(いわゆるテラフォーミング)通常状況で人類種族が生活できるようにした惑星。
どちらにも多数の人口が見られ、その2つ共に宇宙港すら備えている。
その宇宙港には、様々な形態の宇宙船が停泊しており、その中には球形の宇宙船も存在する。
その宇宙港に、これもあまり目立たない少人数の集団があった。
「ようやく到着したな、マリーさん。久々の惑星重力を感じて、ご感想は?」
「やっぱり人工重力より、天然の重力と、コリオリの力よね。うー、大地が好き!」
そのままにしとくと、今にも地表に寝そべってしまいそうなマリーを引き剥がしたプロフェッサー。
「なにするのよ!ひっさびさの惑星地表を感じたって良いじゃないの!」
「マリー様、常識はずれの行動は、周りに迷惑をかけるだけかと思いますが」
あわてて周囲を見回すマリー。
そっぽ向く人や、すいっと視線をそらす人も。
少々、顔を赤らめて、
「そ、そうね。年甲斐もなく、はしゃいじゃったわね、ごめんなさい。行きましょ」
マリーは、そそくさとその場を立ち去ろうとする。
その他のメンバーは、マリーを追いかけて、チェックアウトカウンターへ。
辺境からの定期船で来たらしい一団は、手続きを終えて宇宙港を出る。
楠見は、手慣れた様子でロボットカーを予約していく。
「我が主?えらく手慣れた様子ですが。何かのガイド本でも読みましたか?」
プロフェッサー不審がり、聞いてくる。
「ああ、何でか俺にも分からないけど、この星の交通形態、懐かしの地球にそっくりなんだよ。手慣れた感じで手続きもできるんだ」
「え?師匠の星に酷似してる交通システム?何か、師匠と関係あるんじゃないかな?」
「まさかまさか。郷。地球とは超銀河団レベルでも、いくつ離れてると思ってるんだ?俺も不思議だけど、こんな相似形の進化もあるんだなぁ……」
楠見は、手慣れた感のある交通システムに逆に違和感を感じつつ、ちゃっちゃとホテルやその他の予約まで進めていく。
その時、周りの視線が楠見に集中しては離れていくという、奇妙な現象を感じ取っていた。
予約したロボットカーが到着し、予約しているホテルまで自動的に連れて行ってくれる。
道路上は混雑しているようなので、楠見は地球で行っていたとおりに空中へのショートカット許可を出す。
ロボットカーは即反応し、空中へ舞い上がる。
「ご主人様、ロボットカーへの指示が手慣れすぎてませんか?メニューも見ずにショートカットで指示しましたよね」
「あ、何でだろうな?不思議だ……地球のジャパンエリアで使われてた交通システムの追加メニューのやり方を、思わずやったら実行されたよ」
「キャプテン、ここは、あまりに地球に似てませんか?」
「うーん……そこまで似てるとは思えないんだが……風景は違うけど、何だか懐かしい気分になるんだよなぁ……」
ショーットカットが功を奏し、楠見たちは30分もかからずに予定のホテルへ到着する。
ドアマンがロボタクシーから出てくる楠見たちを一瞥し……
驚きの表情を一瞬浮かべるが、瞬時に元の笑顔に。
「いらっしゃいませ、お客様。ご予約は伺っておりますので、どうぞクロークでお手続きをお願いします」
ここまでやるのは、楠見たちが予約した部屋がスイートルームだったため。
ロイヤルスイートは満室だったので次善の策だった。
「何だろうな?この視線。しげしげと見て、そして納得したように離れていくという……」
楠見は、ドアマンと同じく一瞬驚いた表情をする受付に聞いてみる。
「あの、私の顔に何かついてます?みんなが私の顔を見てくるんですが」
受付は非常に言いにくそうにしていたが、楠見が回答を待っていると知ると渋々答える。
「お客さまのお顔が、この国に遥か昔に存在した、あるお方に非常に似ておられるんですよ、本当に。昔から姿絵が残されてるんですが、本当に、そのお姿にそっくりなんです」
楠見は、興味が湧いたのか、
「そのお方、お名前は?」
「天界様という、不思議な力をお持ちだと言われているお坊様です。数万年も前になりますが、今でも初代天下統一王となられた織田信長様の配下として一番の力と知恵で統一を成し遂げられた方だと、幼児教育の歴史授業で教えられます。まあ実際には、この世で残された実績よりも、天界ノートと呼ばれた書物が今も残されておりまして、その天界ノートに記された通りに、この世界は発展してきたわけです。姿絵は蓬髪姿ではありますが、その髪型もお顔も体型すら、お客様は生き写しなんですよ」
楠見以外は驚くが、言われた当人には覚えが……