ガルガンチュア、完成?! その二
今回は、ガルガンチュア改造・改装の着手と、楠見たちの長期休暇が決定する話。
もちろん、6隻目の捜索も続行中。
「あれ?フロンティア、ガルガンチュアの本体を増強してる?」
6隻目がいる可能性が非常に高い銀河へと到着した俺たちは、数年前より捜索体制に入っている。
まだまだ、船体を見つけたとか可能性のある星系を見つけたとかいう報告すら入ってないので、ガルガンチュアが別作業に入ろうとも良いことは良いのだが……
「はい、マスター。今の状態での安全性とエネルギーの集約性を考えると、ガルガンチュアという集団としてスケールアップしたほうが良いかなと考えまして」
今でも俺的には十分すぎるような気がしてるけど、ガルガンチュアとして、これから目指す未知の銀河団や超銀河団にはガルガンチュアに匹敵するかもしれない、またはガルガンチュアでも敵わない生命体や存在があるかもしれないと予想しているわけか。
「本体頭脳体が集まって議論した結果なんだろうから俺が何も言うことはない。いっそ、今の倍の大きさにするか?ガルガンチュア構成の5隻ともさ」
半分冗談だったが、
「それは良い目標ですね。では、私フロンティアが直径2万kmの球形、あとは、ガレリアやトリスタン、フィーアは直径1万kmで形はそれぞれの相似形ということで。問題はオールドマンなんですが……主砲を積むか、どうするかという問題がありまして……」
「それなんだけどね、オールドマンには主砲を積まずに、そのまま船体だけ二倍以上にしてもらおうかと考えてる」
え?
という意外な表情をするフロンティア。
「実験的な主砲だけでも積むかと思ってましたよ。マスターの考えをお聞きしても?」
「それなんだが、俺はオールドマンには修理専門船になってもらおうかと思ってるんだ。確かにガルガンチュアになってから貨物の積載量にも搭載艇の保有数にも余裕は出たが、たまにあるガルガンチュアがダメージ受けた時に修理する作業船が今のガルガンチュアには存在してないだろ?試験船として作られたオールドマンは、今現在でもかなりの修理・工作機を所持してるんで、これはもう他の船と違ったコンセプトにするほうが良いのではないかと思うんだよな。完全な修理専門船というのは今までの銀河団探査船にも無かったはずなんで、面白いことになると思うんだよ」
少し考えていたフロンティアだったが、
「他の4隻と連絡を取りました。特にオールドマンは、修理専門などとは面白いことを考える!自分は全面的に賛成だ!と言っておりますので、その方向で改造と改装を進めます」
ちょいと思いついたことがあったので俺の意見を追加する。
「あと、搭載艇の増加問題なんだがな……」
「何でしょうか?マスター。この改造作業で、およそ現在の4倍近く搭載艇が増えます。十分に収容できる数ではありますが……」
「そう、収容空間は。だけど、そこまで増えると発進時間がまたまた遅くなるだろう?そこで、ちょっとしたアイデアが」
「ほう?マスターが言うからには普通では思いつかないことですよね」
「そう、発想の転換だ。つまり……巨大化した船体の外皮部分に搭載艇の収容区画を作る。どうかな?これなら素早く一定数……およそ5万隻くらい……を放出・収納できるんじゃないか?」
「面白い発想ですね、分かりました。このコンセプトでニューガルガンチュアに改造・改装の開始です」
この大規模改造と改装(特にオールドマンの改造と外皮部分への搭載挺収容区画作り)には相当に時間がかかるので当分、ガルガンチュアは動けそうもない……
という事で搭載艇の全放出(超小型も小型も、中型も大型も全て)を行い、ガルガンチュア付近に搭載艇は一隻もいない珍しい風景が展開される(宙景か?)
「マスター、ガルガンチュアと、各衛星となった船体固定具兼搭載艇収容筒(4個の巨大な筒)の中は全て空っぽになりました。これから全搭載艇は、この銀河内を、それこそ砂粒一つ見逃さないレベルで探査行動に入りますので、6隻目が発見されるのも時間の問題かと……ただし、相手もかなりのレベルでステルスかけてるので……)」
相当に時間がかかると予想されるので、ガルガンチュア改造・改装が終了するのと6隻目が発見されるのが、どっちが早いかというくらいになりそうだ。
「で?俺達はどうする?この銀河、それなりに安定してて、あまりトラブルは抱えてないようだ。跳躍航法も進んでいて、銀河内部の交通量が多そうだが」
本体と工作船(跳躍エンジンは着いていない、修理や工作専門。主にトリスタンとオールドマンが数百隻づつ所持してた)集団で対応するんで俺達は不要とのこと。
それじゃぁと俺、ライム、エッタ、郷、マリーさんとプロフェッサーの6名で、この銀河内で長期休暇としゃれこむこととする。
「どの星系にする?中央部、周辺部、縁。でもって、そっちが決まったら、星系を決めなきゃな」
トラブル解決なら、通常は周辺から縁に拠点を構えるが、今回は長期の休暇。
ここは慎重に話し合って……
「はいはーい!私は快適に過ごせる中央部を推しまーす!縁だと、あまりに生活程度が落ちるんだもの。たまの長期休暇、とにかく快適に行きたいです、少なくともガルガンチュアの5割位で」
おいおい、エッタ。
ここの半分の快適度って、そりゃ高望みし過ぎだよ。
「はい!私は縁を希望します。開拓星だったら、私達で開拓を後押しできませんかね」
だからさ、ライム。
長期休暇だって言ってるの。
わざわざ開拓星なんてトラブル必至の環境でしょうが。
「ふーん……それじゃ、周辺部で、それなりに中央部から遠い星系が良いんじゃない?見知らぬ人間が入り込んでも、中央部ほど気づかれないような」
そうだよね、やっぱり。
さすがマリーさん、お目が高い。
「いや、私自身が宮殿みたいなところに閉じ込められてたから……監獄じゃないけど、出入口が厳しく管理されてて、衛兵も常駐してたのよ」
それは仕方がないよね、予言の姫巫女様だったんだから……でも数千年は長かったよね、ご苦労さま。
「いやだから、それおかしいって!監獄じゃないのよ、私が暮らしてたのは」
そう言ってもねぇ……ガルガンチュアに比べたら、どこにも行けないのと同じようなもんでしょ?
「あ、あなたねぇ、楠見さん!ここと比べりゃ、どの星も監獄でしょうが!」
そうでした……
数万年も暮らしてると、ここが標準になるからね。
「それじゃ、周辺部の星系で決定します。それで、どの星系にするかですが……」
郷が候補をリストアップしたけど、その数、数千。
中央部寄りを除いて、半分以下にしても、まだ多い。
それからが長かった……
結局……
「はぁはぁ、ぜーぜー……じゃあ、この周辺部で、中央部から遠目の、この星系にします!」
郷さん、疲れ切ってる。
「お疲れ様、郷。転送星系も決定したんで、船体改装と改造が終了するか、それとも6隻目が見つかるか、どちらかの知らせが来るまで俺達は休暇だ」
ということで、フィーアに頼んで俺達は休暇を過ごす星系へ転送してもらう。
その時には、この星系が俺に関係するものだとは知らずにいた……