ガルガンチュア、完成?! その一
さてさて、いよいよガルガンチュアの当初からの設定である6隻合体の究極ガルガンチュアになるか?
というお話です。
どうなりますやら……作者にもどうなるか分かりません(笑)
いつものごとく、ここは銀河系とは別の超銀河団の中の銀河団の中の、一つの名も知らぬ銀河……
その銀河へ、徐々に近づく小さな星系のような5つの物体の集合体。
言わずとしれた、我らがガルガンチュアである。
「ガルガンチュアも、宇宙の旅に出てから相当に年月が経ったよな。もう5万年近く過ぎたんだっけ?」
指揮用の部屋となった、割と広い会議室から楠見の声が聞こえる。
「我が主、私の時計が狂ってなければ、もうすぐ5万5千年になるかと。もう、年月とか時間とか、意味がないのでは?」
プロフェッサーが答える。
楠見と一番長く関係のあるプロフェッサーだけに、これは正解に一番近いだろう……
「そうか……もう、地球を旅立ってから5万年を軽く超えてるのか……長いよなぁ、俺達の宇宙生活」
ははは、何を言ってるんですか、と言わんばかりのフロンティアが、
「まさに、疾風怒濤の5万年ですよ。言っておきますが、マスターがいるから、こんな激動の宇宙旅になるんであって、通常に宇宙航行するのなら平穏で退屈な日常が続くばかりなんですよ。ちなみに、私が最初の宇宙航行に出た時には、まさに平穏で退屈な銀河団航行でした」
「そうだぞ、主。私の初航行でも、こんな波乱万丈な宇宙航行にはならなかった。主は、あまりに様々なトラブルに首を突っ込みすぎるのだ」
ガレリアも、そう言い出す。
今月、舵を担当するのはオールドマン、センサーを担当するのはフィーアとトリスタン。
物理的に合体接合されていた時にはセンサー担当は一隻で良かったが、今のガルガンチュアは小さな星系ほどの規模になっているため、全センサーの管理が一隻では追いつかず、やむなく二隻でセンサーを管理することとなった。
とは言え、このほうが凝縮合体していた時よりもセンサーの検知範囲が広くなり、効率が良かったりもする。
フロンティアとガレリアは休みかと言えば、そうではなく。
目前の銀河の情報収集及び、エネルギーの平滑化作業を行っている。
エネルギー平滑化?
そりゃ何だ?
とか言われるのは予想済みなので、解説しよう。
そもそも、この5隻合体版ガルガンチュア。
過去に存在した、どの宇宙船と比べても、エネルギー量が桁違いに大きいんだとフロンティアから説明された。
まあ、だから今まで想像されるばかりで、計画はあったにせよ実現不可能だった超銀河団の航行をも可能とする宇宙船団(というのは変かもしれない。いちおう、各宇宙船は物理的に接合されてはいないが、エネルギー的には密接に結びついており、各船からのエネルギー炉から発生する膨大な(それこそ、太陽系の太陽を数十個集めたくらいの)エネルギーが、この疑似星系を巡っているからだ。
この莫大なエネルギーの平滑化とは何ぞや?
と言うと、要は「その時に必要なエネルギー以外の浪費・消耗を抑える」ことである。
説明されても、大雑把すぎて理解不能な方も多いと思うが、安心してくれ、解説者も完全には理解不能だ。
まあ、不要なエネルギーを貯めておく回路と言うか亜空間のような代物をガルガンチュアが作り出すことに成功したので、余剰エネルギーを、そこに放り込んでおけるようになったと思えば良い。
これで、例えば今までは各船の主砲を撃つには数時間から、下手すると数日間もチャージに時間がかかっていたのが、瞬時とは行かないまでも相当なチャージ時間短縮になったと。
エネルギー炉の出力そのものは一定で上下操作は不可能なので、この回路と言うか亜空間を利用して、超銀河団航行の時と、今のような近くの銀河で待機する場合のエネルギー消費の上下変動に対応しているわけだ。
「ちなみにですね、この平滑回路・亜空間が無かったガルガンチュア時には、余剰エネルギーを定期的に熱エネルギーとして放出しなければいけなかったんですよ。膨大な熱量となるので、そんな時にステルスなんて機能するわけありませんよね。フロンティアの熱吸収能力にも限界があるので、それが欠点となっていたわけです」
この説明を聞いて、今までガルガンチュアとなってステルス発動した時に放熱なんてやったことあったっけ?
とフロンティアに聞いたら、
「当然、数十年から数百年くらいなら熱吸収能力でカバーできますので、航行時に捨ててました」
とのこと。
今は、その放熱が必要ないだけ、ステルス機能が完璧に働きますよ、と。
閑話休題。
今回、眼前の銀河のトラブルは……
「マスター。6隻目の存在が認められます」
半年かけた中型搭載艇以下の全数出動にて、完璧な銀河内MAPが出来上がったが、その途中で同胞の銀河団探査船の存在を感じたとのこと。
ただ、そいつもフロンティアと同じ完璧なステルス機能を保持しているようで、ピンポイントにここだ!
という特定はできなかったようだ。
「ステルス機能を発動している可能性が高いということは、今までのように破棄されたとか事故で長いこと機能停止しているとかいう話じゃなさそうだな」
俺はフロンティアに、そう感想を述べる。
「そう、ですね。ただし、この銀河を航行しているような事でもなさそうですので、恐らくは、以前のマスターが消えた時に、あらかじめ自立行動ができるように、とは言っても船だけで銀河内ですら航行するのは難度が高いかと……あ、ガレリアの場合は、私の存在が、割合に近かったから強制的にでも自力移動ができたんだと思われます」
「違うぞ、フロンティア。お前が新しいマスターを得て、活発な活動をしているという確証、その信号が入ってきたので、銀河間空間を漂流していた私は、そのフロンティアのマスターを仮マスターとすることで、メインエンジンの再稼働に成功したんだ。だから、お前のそばまで移動可能になったんだよ」
「そうですか……最初の私のような行動を、あなたもとったわけですね。我々は、仮にでもマスターを得ないと、それこそ光速以下のサブエンジンまでしか動かせないんですから。まあ、こんな銀河団探査船なんて宇宙船には、そのくらいの縛りがないと、とんでもない悪魔になりそうなんですけどね」
フロンティアやガレリア、他の三隻がマスターも決定しないまま、仮マスターだけで勝手気ままに動き出したら……
俺は、心の中でシリコン生命体のフェイルセーフ機能に感謝した。
「さーてと。それじゃぁ、6隻目の銀河団探査船探しに出発するとしようかね。まあ、ガルガンチュア本体は動けないので、搭載艇頼りになるんだろうが」
ということで、俺達は今回、ガルガンチュアを構成する6隻目を探すこととなった。