巫女姫マリー、再び登場! その十三
楠見班です、あいも代わらず自重をかなぐり捨ててます(笑)
こちら、楠見たちの班。
こちらも通常のことをチマチマやっていたのでは、人口もまばらな銀河辺境地区、とてもじゃないが最新技術など普及できるわけがない。
「ってことでだな……ここらで一発、どでかい最新技術を披露しようじゃないの」
楠見の発言に……
「大丈夫なんですか?あまりに現在の技術とかけ離れすぎると様々な問題が出てくると思うんですけど……」
反対意見を唱えるのは、やはりマリーさん。
ライムなど、もう日常業務と化している楠見の発言に慣れっこになっているようで、うんうんと頷くのみ。
「ライムさん、あなたも危機感を覚えなさいよ。楠見さん、とんでもないこと始めようとしてるのよ?!」
この発言にもライムとしては、
「えー?そんなにトンデモ発言ですかぁ?いつものことじゃないですかぁ?キャプテンなら普通ですよぉ」
呆れ返るマリーさん。
「そうなのね……ガルガンチュアって、これが日常なのね。私も早く日常に慣れなくちゃ!」
そう言う目は、どこか遠くを見ているような気がした。
「ってことで……俺達の会社、KML開発の主力商品、今現在は携帯用超小型エネルギー炉と防御バリア・個人用ジェットパックの組み合わせ商品が爆発的に売れているんだが……これに、ちょっと意外な組み合わせを考えてるんだ」
「へー、今の主力商品だけじゃ駄目なの?エネルギー炉だけでも余裕で小さな工場なら100年まかなえるって代物でしょ?個人用ジェットパックも本来なら、これだけのはずが、あまりに速度が出るもんだから防御バリアが必須として3点セットになったのよね。これ、この星どころか辺境星域で爆発的な人気商品じゃないの。辺境星の開拓って危険なことが多いから、このセットは開拓民だったら必ず持ってけと言われてるくらいなのよ」
「そうなんですよね。この商品のおかげで我社も業界トップどころか周辺企業巻き込んで傘下企業がどんどん空いてる工場やライン使って、このセットばっかり作ってるって話で。下請けとは言え我社の傘下企業ってことで企業間のアイデア料すら取らないんですから。キャプテン、お人好しすぎます」
あははは、と楠見は頭をかく。
「我社だけが儲かって他社が潰れる状況はいただけないからな。我社が潰れる可能性は無いので全て我社の傘下企業となれば、みーんな儲かるってことだ」
マリーさんは難しい顔をする。
「もうホワイト企業とか言うレベルじゃないわよね、それって。経済の原則に反してるけれど実際にこの星どころか周辺星系含めて巨大な経済圏ができつつあるのよねぇ、これが。少し先には辺境軍がまとまった数が欲しいって言うから数百万セット単位で軍用に卸すとか何とか言ってなかったっけ?」
「お、耳が早いね、マリーさん。まだ辺境軍だけで中央や周辺域の軍関係からは何も言ってきてないけれど、中央軍からサンプルが欲しいという打診は受けてるよ」
まぁしかし、楠見の本気がここまでのものとは予想もしていなかったマリーさんは、はぁ……と何回目かのため息をつく。
「で?楠見さんの事だから、また、とんでもない奇想装置をくっつけたセットにしようってわけでしょ、多分」
マリーさんの予想通り、楠見の口の端が、ニヤリ、とばかりに曲がる。
「まあ、その予想通りかな。これは、軍関係へのサンプルとして渡すものに、こんなセットもありますよという形にしたいんだ……こんな形になる予定なんだが」
バサ、という音がするようにも思えたが、実際には分厚くない小冊子と共に、お手軽惑星探検セットに付属させるキット?のようなものが出てくる。
「これ、何ですか?一時期、キャプテンが使ってた転身ヘルメットのようにも見えますが……ずいぶん簡略化されてませんか?」
ライムの疑問に、おや?と言う顔をする楠見。
「鋭いな、ライム。その通り、こいつは転身アイテムだ。とは言え、あのヘルメットのように自由自在にいくつもの転身機能があるわけじゃない。全身を覆うポリマー分子を展開するだけの機能しか無い」
「え?それだけの機能しか無い?あのー、楠見さん?言葉の使い方、間違ってません?」
「いやいやいや、間違ってないよ、マリーさん。太古の異星の秘宝だったアレは、高機能が故に重量が1t超えてて、強力なサイコキネシスを持つものじゃないと使えなかったんだから。こいつは約5kg弱の重量で、いくつも装備展開は出来ないけれど、ポリマー分子は装着者の体型にフィットして、例えば高空……そうだな、高さ1000mくらいのところから飛び降りても、中の人体に影響がないくらいには……」
そこまで言って、楠見はマリーに口止めされる。
「量産化してる技術なんでしょ?まあ、仕方がないわね……ライムさん、あななたち、一番リーダーにしちゃいけない人をリーダーにしてるのね」
そこからひと悶着あったんだが、それはまた、別の機会に……
ともかく、楠見たちの会社が発展していき、辺境で超絶テクノロジーが普及していくのに、そんなに時間はかからなかった……