巫女姫マリー、再び登場! その十二
ガルガンチュア教団、拡張です(笑)
敵対視している宗教組織が居ると認識しているのか、どうなのか?
郷、エッタ、プロフェッサーの動きは、そんなものを気にしているような早さではなかった。
まず、小さな教会を建てる。
そこで、聖女の登場。
エッタが、どの病院、医者にも見放された重症や重病患者を、わずか数日で立って歩き、なおかつ全力疾走まで可能なまでに回復させる。
あまりの回復術(ほとんど命の炎が尽きかけている患者すら、一週間もかからずに全面回復)に、耳敏いマスゴミとやらが食いついてくる。
「それで、ですね。どんなマジックを使えば、瀕死の病人まで通常状態まで回復するんですか?何かタネがあるんでしょ?教えてくださいよー」
言いたい放題のマスゴミ記者。
絶対に嘘だと決めつけて、詐欺まがいの手段で重傷者、重病人を次々と治しているように見せているのだという記事を書こうとしているのはインタビューを受ける前から分かっている。
しかし、その記者ですら……
「実は私も、過労から胃が弱ってましてね。もしも、もしもですが、可能でしたら、私も治してもらえませんか?」
ほら、咄嗟には対応できないだろ?
と言いたかったのだろうが、エッタにかかればお茶の子サイサイだ。
「はい、大丈夫ですよ。私達、ガルガンチュア教団は、困っている人たちを救うのに条件など付けません……」
エッタが記者に手を差し伸べ、そして、患部を中心に両手を回すような仕草をする。
「これで大丈夫だと思いますが、念の為に一週間以内に、どこの病院でも良いので検査を受けてください。完治していると診断が出ると思います」
半信半疑でインタビューを終えるマスゴミ記者。
実際に、二日後には大学病院で精密検査を受ける。
その結果……
〚驚異!新興宗教団体「ガルガンチュア教団」の神力は本物!〛
という見出しの大特集増ページを大々的に載せる。
これに惹きつけられたのだろうか、大きなメディアすら記者を教会へ送ってくるようになる。
各メディアが、悪い点を書こうにも、組織が小さいということくらいしか無いので、驚異の力を見せる新興宗教という扱いで、様々なメディアに取り上げられる。
「郷さん、ちょっと助けてくださいよ。入信者が多くなったのは良いんですが、ちょっとした風邪くらいでも聖女の力を頼ってくるんです。これじゃ、あまりの過剰労働ですよー」
というエッタの愚痴により、教団内でガルガンチュア特製マルチ対応回復薬が製造されることとなる。
まあ、その頃には教団も信者・教会・資金の面でも巨大化していたので、小さな製薬会社の買収など簡単。
ちなみに、買収とは言え、製薬会社としては独立採算。
ゆえに、回復薬の承認申請や薬としての効能チェックは通常業務で行われることとなる。
だからして……
「はぁ……薬事法って大変なんだな。効能は絶対に間違ってないのに、ここまで時間かかるかよ……」
厄介な伝染病とか流行ってるような季節でもないタイミングのため、薬として承認が降りるのは3年もかかった。
効能が確実に安定していたために3年で認められたと、製薬会社の重役は語ったが、本来はもっと年月がかかるそうだ。
ここから、ガルガンチュア教団は本気を出し始める。
地域医療に助けが必要だろうと教団が申し出て、数年後には地域的に病人や重傷者が全くいないという稀有な事態が起こる。
そうなると、地域から地方へ、そして、それより大きな……
「国家代表として、ガルガンチュア教団の責任者の方々と会談を……」
という話も出て、あれとあれよという間に、ガルガンチュア教団の教会は、その国に遍く存在することとなる。
教団本部も、国家権力が……
「どうか、我が国がガルガンチュア教団の本部がある国だと認定させていただきたい!象徴となる本部も、こちらで用意させていただきますので、どうか!」
という話があったとか無かったとか。
もう、弱小の新興宗教ではないガルガンチュア教団は、その奇跡と万能といわれる回復薬を持ち、海外へも躍進していく。
星一個が、全てガルガンチュア教団を支持するようになるまでには、それから数十年かかったようである。