巫女姫マリー、再び登場! その十
ようやく、マリーさん含めたガルガンチュアの裏仕事が始まる……
まず、手近だということで、俺・マリーさん・ライムのトリオは銀河辺境部へ転送してもらう。
ちなみにガルガンチュア本体は、大きくなりすぎたということで銀河の縁より500光年ばかし離れている。
これだと絵面的には、銀河から弾き出された1星系のように見える(異形の星系とも言うが)
通信的には、俺のテレパシーはガルガンチュアに楽々届くので問題なし。
ちなみに、郷もエッタもライムも、この1銀河単位くらいなら楽々通信可能なくらいにはテレパシー能力が強化されている(問題は、やはりマリーさん。未来予知が強力過ぎるため他のテレパシーやサイコキネシスが強化されにくくなっているとフロンティア達が言うので、その通りなんだろうと思う)
俺達の仕事が始まった……
「ライム、マリーさん!俺が次々と貴金属のインゴットを造っていくんで、それを台座に積み上げていってくれ!」
そう言いながら、俺は秒単位で金や銀のインゴットを空中から作り出していく。
まあ、実際には空中に存在する微小な金や銀の塵を集めて圧縮しているだけなんだが……
一時間もしないうち、金が100本ばかし、銀に至っては500本ほど台座に積み上がる。
その周囲には、鶏卵サイズのダイヤの塊が10個ばかし転がる状況……
「く、楠見さん!アナタねぇ……はぁ、もう開いた口が塞がらないわよ。行った星全てで、こんな事して資金調達してるの、もしかして?」
「マリーさん、諦めたほうが良いと思います。キャプテンは、こんなの日常茶飯事で、ちょちょいっとやっちゃうんで。この頃、この疑似錬金術モドキが何か仕事しながらでもできるようになったようで、あまり力を入れてないとキャプテン本人も仰ってましたが」
マリーさんへ忠告、と言うか、アドバイスと言うか、行うライム。
「そういうことね……つくづく、人外の、いえ、もう肉体を持つ生命体とは思えない仕業よね。これは、精神生命体候補の一番手と言うべきなのかしら……」
……お?
ちょいと多すぎたか。
「はい、これでオシマイ。事業を立ち上げるなら、これで充分だろ。さて、銀河を一つにするための事業ってのは、何を目標にして何をやればよいのやら……マリーさん、何か良いアイデアとか無いかい?」
俺から質問受けて、あっちの世界からようやく戻ってきたマリーさん。
「え?うーん……そうね。統一銀河を目指すのなら、いっそ、銀河帝国とか建国するとか?楠見さんの力なら、どんな敵勢力も星単位で潰せるでしょ?」
おいおい、物騒な提案だな、まったく。
「それをやって、統一されたから、これで終わり。俺達は次の銀河へ行きますと言える?完全統一までに数千年、そして民衆の高度教育化が整うまでやったら最後、万年単位で縛られるぞ……俺達が死ぬことはないかも知れないが、あまりに長いトラブルシューティングだよ」
呆れた顔をしてマリーさんがため息を吐く。
「はぁ……こんなのが当たり前のトラブルシューティング?!もう、ほとんど銀河文明を一から育てるようなものじゃないの!」
まあ、ガルガンチュアだから仕方ないかなぁ……
と、マリーさんがもう一度、ため息を。
「じゃあ、銀河連邦ってことで。これなら緩い連邦制で比較的短い期間で統一まで行けると思うわよ。ただ……こっちだと後で反乱とか脱退して帝国制を目指すとかいう勢力が絶対に出てきそうなんですが」
ふむ、緩い連邦制ね。
民衆の民度、つまり教育程度が問題になってくるんだよな、それだと。
しかし……
「じゃあ、連邦制を目指そうか。民度の問題は教育機械が解決してくれるだろ……ただなぁ、こいつの問題が一つ……」
「ミュータントの発生よね。精神的に飛び抜けたミュータントが発生した場合、それをどうするかと言う根本的問題がありそうね。ある程度は私の予知能力で未来は見えるんだけど、突発的なミュータント発生の問題は予知でも見えないのよ」
そうか、さすがに突然変異のことまで予知できるわけじゃないのか……
「まあ、俺達が、この銀河に居る間に発生してくれるなら何とかする事もできるんだけどな。問題は俺達が、この銀河を離れてから……」
ここで、ライムが手を上げる。
「はいはーい!警察機構がしっかりしてれば良いんですよね?じゃあ、例のRENZを使えば?」
お、そうか、その手があったな。
「久々だから忘れてた。そうだな、RENZ使って警察機構をしっかり作り上げれば良いわけだ。では、ガルガンチュアからRENZ製造機を数百個ばかし送ってもらおう。ある程度に文明が大きくなったら、こいつで悪に染まらないエスパー警察機構を作り上げれば安心と」
そして俺達三人は、今や山になった貴金属インゴットと巨大ダイヤ数十個を元手に銀河統一連邦を作り上げる仕事に掛かっていくのだった。