巫女姫マリー、再び登場! その三
楠見が転移させられたのは?
もう、お分かりですよね(笑)
「えーい、厄介な!フロンティア、これは予測できなかったのか?」
俺達ガルガンチュアクルー、現在、絶賛戦闘中。
トラブルの気配を感じ、とある銀河へ立ち寄り、その中の一つの星系へ。
で、生命体が一番多いと思われる星へ転送(フロンティアが、危害予防のため半数で行動すべきと提案。反対理由もないため、とりあえず俺、郷、エッタ、ライムに護衛としてプロフェッサーが付く)されたんだが……
「マスター、これはミュータントですね。突然変異種が大半なので、これは予測の範囲外となります」
通信機から非情な回答……
ああ、そーかいそーかい。
ふぅ……
おっと!
状況を説明しなきゃいけないね。
今現在、俺達は俺のサイキックフィールドにて守られてはいる。
ただし、数に押し切られて、今の所、打つ手なし(いやいや、最終手段はあるんだよ。大地を割って敵を地下へ落としちゃうとか。やらないけどね、あまりに他への影響が酷すぎるんで)
俺達五人なら何とでもなるんだが、あいにく、この小さな町の住人全て(約800人ばかし)も保護してるんで動きようがないというのが正しいかな。
「プロフェッサー!町長へ、この事態の最初からの説明を聞いたんだろ?どうなってるんだ?」
「わが主、それがですねぇ……」
プロフェッサーの語る、この怪獣映画かホラー映画のような状況の一部始終は……
まず、町の外れに一人の薄汚れた男が引っ越してきた。
その男は、大きな星間帝国の主任研究者だったらしい。
帝国研究所で、ちょっとしたミスで事故を起こしてしまい研究所を退所することとなったらしいのだが、男は理由を言いたくないらしい。
少しだが危険を伴うとのことで、男は町の外れから少し離れたところに小さな研究所兼住居を構えることとなる。
数年間は男も周りに愛想を振りまき、近所付きあいもよかったとのこと。
事態が急変したのは今から一年前。
小さな研究所から町へ贈り物があるとの話で、町長たちが男と会うと、
「これが私の遺伝子改造技術の成果です。こいつは、自然のエネルギーを取り込んで増殖します。無限には大きくならないようにしていますが、それよりも、こいつの肉は食えるんです。生きている今の状態から肉を切り取って……生でも食えますが煮ても焼いても結構ですよ、血も出ませんので、そのまま放っておけば元通りになります。こいつがあれば働かずとも食料には困りません」
町長たちは喜んだ。
数週間後、力仕事は真っ先に放り出され、次に第一次産業。
他の産業も衰退していくのは目に見えていた……
町長たちは焦ったが贈り物の生命体を破壊(殺す?)ことは全住民が反対した。
当たり前だが働かずとも食えるなら、そっちのほうが良い。
町は寂れた。
寂れるくらいなら、まだ良かった……
数ヶ月後、変異体の生命体は急速に大きくなっていく。
住民たちが、いくら肉を食べようと、それを凌ぐほどのスピードで大きくなっていく生命体。
住民たちを襲うようなことがなかったのが幸いだったが、それでも脅威となるには十分な巨大生命体になる。
「突然変異体なのです、あれは。遺伝子操作の研究段階でできたのですが、食料も水も与えてないのに大きくなって、ある程度になったら分裂します……と言うか、分裂するはずだったんですよ。現に、市民の皆さんが肉として食べてたときには、普通に分裂してたし、あそこまで成長速度も速くなかったでしょ?」
男、実は元・帝国の研究所副所長だったとのこと。
どうして、そんな地位にある人が、こんなドの付く辺境に?
と、市長たちが聞けば……
「あの突然変異体に遺伝子異常の兆しがあるので抹消するって書類が回ってきたんです。私は何としてでも、あいつを生かしてやりたかった……帝国の食料不足を根本的に解決するなら、この生物しか無いと思えたからんですが……」
結局、帝国上層部が考えていたことが大当たりしてしまい、こんな怪物騒ぎになってしまったわけだ。
弱点は?
と聞いたら、
「そんなもの、あるわけないでしょうが!それでなくても、何もしなくても勝手に増えていく生命体なんです。水も食料も何もない状況で増殖するやつに弱点なんてあると思うんですか?」
男が叫ぶ……
摂取するものがないのに増殖するというのが理解できないので、弱点がないと思いこんでるようなんだが……
「いや、それは早急な結論かと。まずは、高温や低温でどうなるかということも分からないんだから、やってみるべきかと思うんだが……」
俺が言うと、それはそうですねと皆が賛成。
「とりあえずは、低温下でどうなるかというテストだな。プロフェッサー、ステルス状況にある超小型搭載艇群に命令、絶対零度砲で、あの怪物の触手らしきものを攻撃しろ」
「了解しました、我が主」
プロフェッサーの命令で、俺の護衛隊として惑星についてきた搭載艇群に攻撃命令が出る。
「超低温は有効ですね。触手が本体へ収納されるように縮んでいきます。ただし……本体には、あまり効いて無いようですが」
「それじゃ、次は……熱線か。ブラスターとレーザーを、今度は本体へ撃ち込んでみてくれ」
見えない搭載艇群は、武器を切り替えて、ブラスターとレーザーの熱線へと。
「少しで止めます。あの生命体は予想通り、熱エネルギーを吸収して増殖するようです。レーザーもブラスターも熱を吸収するだけで、本体を増強するだけと思われます」
「ご苦労さん、プロフェッサー。予想通りか……絶対零度砲が有効とはいえ、あの大きさだと、かなり集中的に砲撃しないとダメだろうな……ふむ、どうしようか」
と、苦労はしたが、最終的にはガルガンチュアから予備の超小型搭載艇を呼び寄せて、その数で圧倒することに成功。
「わが主、殲滅するなとのことで、サンプルくらいは残してますが……本当に良いのですか?」
プロフェッサーは、こいつに懐疑的な視線を送るが……
「こいつは、ガルガンチュアで保管して研究対象とする。こいつをコントロールできれば面白いものに化けるかも知れないぞ」
「知りませんよ、バイオハザード起こしても。まあ、それでも我が主なら何とかしてしまうんでしょうが……」
とりあえず、この星を去る前に、あんな危険な事態になることのないよう、いつものプレゼントを渡していく。
食料不足や資源・エネルギー不足は、このテクノロジーがあれば大丈夫だと思われる。
「マスター、突然変異体など予測の範囲外です。危険な事態になる前に連絡ください」
「いや、フロンティアの意見も分かるがな……俺としては、もう一つ進んだ防御状況にしたい。具体的には、予知能力かな?」
「え?予知能力者って、俺の前に師匠が育てたっていうマリーさんって人くらいしかいないんじゃなかったですか?」
郷が発言する。
「そうなんだよなぁ……かなり珍しい超常能力なんで、今から探しても見つかるかどうか……かと言って、今から、あの銀河へ戻るのも手間がかかりすぎるような……」
その会話中、俺は自分の体ごと、何処かに転移させられた……