銀河団探査船、5隻目登場! 十五話目
読者の皆様、そして、作家の皆様・・・
新年あけまして、おめでとうございます!
ようやく新作が書けましたので、アップします。
寒くてねぇ・・・キーボード打つのに苦労しましたよ。
楠見や郷たちガルガンチュアクルーが教団の闇に迫りつつあるとき、肝心要のガルガンチュアたちは何をやっていたのか?
今回、それを語るとしよう。
「フロンティア!これで、この銀河の中の七割以上の星系を監視している。他の三割も付近にいる搭載艇群がカバーしている……が、これで五年間、データを取りつつ恒星を関していることになるぞ。そろそろ、五隻目がいる星系ぐらい特定できないのか?」
言われたフロンティアは、
「そうですね、ガレリア……実は、推定段階ですが五隻目がある星系は特定できているんですよ。ただ、見つけて船を起こして、その後が厄介なんです。今の状況で五隻目が物理的ドッキング可能だと思いますか?」
ガレリアは、その質問を考えていなかったわけではない。
ただ未だに四隻ドッキングで上手く行っているため、あまり困っていなかったことも有り、物理的なドッキングで五隻目が増やせると思っていたのも事実。
「しかしな、フロンティア。今の物理的ドッキングで5隻目、やってやれないこともないと思うんだが?今でも超巨大宇宙船が四隻、物理的に繋がってるんだぞ」
「えーっと……その問題、何とか解決できそうなんだよねー」
突然、口を挟んできたのがフィーア。
その横にはトリスタンもいる。
「議論されていた話題が、なんとかなりそうなんで、会議室から出てきました、フィーア共々。結論から言うと、物理的ドッキングは解除しても大丈夫ですね」
と、トリスタンの発言。
それから四人が集まり、データではない会話での会議となる。
「それでは、今から五隻目、あるいは、それ以上になっても集団が維持されるという、トリスタンとフィーアの論議の結果を説明してもらいましょう。詳しいデータが必要となる場合は、船の高速データ通信でうけとるということで」
フロンティアの音頭で会議が始まる。
「えーっと、ですね。結論から言うと、五隻でのガルガンチュア結合は可能です。可能なんですが、それ以上、物理的な結合は無理です。例えば、六隻目が見つかったとしても、物理的に結合してしまうと、互いにロシュの限界距離に近くなりすぎて、何かの不都合が生じた場合、ガルガンチュアという集合全体が、互いの質量のせいで部分破壊してしまいかねません。ですから、これ以上の物理結合は止めて、結合しない方法を採用することにしました」
「フィーア?言ってることが理解できないんだが?矛盾してないか?集合体としてのガルガンチュアが集合しないって結論になってないか?」
ガレリアの疑問も、もっともな話。
「説明が足りませんよ、フィーア。物理的な結合をしている今の状態から、もっと距離の取れる方法を採用するということです。ちなみに、結合用のドッキングデバイスは、不要ということではなく、搭載艇の保管庫として利用することとなります。現状より、搭載艇が収容も放出も短時間で可能となりますので、一挙両得かと」
補足説明を行う、トリスタン。
納得した表情のフロンティアだが、ガレリアは、まだ何かあるようで、
「一応は納得したが、そうすると、何で五隻目や六隻目を結合させるんだ?物理的な結合を使わないと、巨大集合のガルガンチュアとして行動が取れなくなるんじゃないか?」
その質問には、黙っていたフロンティアが答える形になる。
「ガレリア、我々のトラクタービームの強度を忘れてませんか?今の四隻合体状態でも相当に強力なんですよ。宇宙空間だとしても100万kmも離れればロシュの限界は大丈夫でしょう」
相互をトラクタービームで繋ぐというのはガレリア自身も想定したことがある……
しかし、
「フロンティア、そういう結合状況には一つ疑問が。動力の問題をどうする気だ?今は四隻の動力エネルギーを一つにまとめて大きなエネルギーにしてるんだが、これは物理的に結合してるからこその恩恵だろうが。物理的な結合を切り離してしまえば、エネルギーが小さくなって、超銀河団を渡る今の速度に上げられなくなる恐れがあるぞ」
「あ、それはですね・・・」
トリスタンが補足説明を行う。
実は、今現在のガルガンチュアの構成だと、物理的に接続されていなくても相互にエネルギーのやりとりが可能だと言うことが分かってきたのだそうで。
「ビーム転送技術の応用で、エネルギー炉の数割、さすがに全ては無理ですが、最大半分のエネルギーを互いに融通できるようになりそうです、もちろん各宇宙船の改造は必須ですが。そうすると、もう一隻や二隻増えようが、もしもの可能性として十隻全てがガルガンチュアにエネルギー的に接合したとしても、その運用が可能になります」
ガレリアも、フロンティアも、さすがに銀河団探査船十隻全ての参加は考えていなかったため、想像を超えてしまう。
「それは凄いというか、それは、もう宇宙を旅する人工の星系というか……あまりに巨大な結合体で、小さな銀河だと下手に近づけなくなりそうですね。マスターも、多分、そこまで要求はしないと思いますよ……そうですね、増えるとすれば、最大で六隻くらいでしょうかね、ガルガンチュアという名として」
超がつく巨大宇宙船が六隻構成で星系のような形で宇宙を跳ぶのを目撃する生命体がいるとして……
それを見て、妄想か、あるいは目の錯覚ではないかと最初に思わないものは存在しないだろう(あるいは、それが機械生命体だとしても)
「ちなみに、だよ。僕らが計算したところ、例えば五隻目が参加したとするとガルガンチュアとしての総エネルギー量は、今の五割増しになるって答えが出たよ。もう巨大恒星一つ分と変わらないよね。中型や小型の恒星じゃ比較にならないエネルギー量を持つことになるよ……六隻目が参加したとすると、そこからの五割増し。もう恒星とか言うレベルを超えそうだよ」
フィーアの発言である。
ここに楠見や郷がいたら寒気がするような話。
完璧に制御されているガルガンチュアだから可能になるエネルギー量なのであり、もしこれが制御不可となったら……
ブラックホールで済めば良いが、多分、スーパーノヴァのように見えるかもしれない。
「では五隻目を本気で捜索するとしましょう。それと各船の結合部を解除して、物理結合からエネルギー結合状態への移行を開始するように。あ、フィーア、物理結合してたときに使ってた円筒は、どうします?かなり邪魔になりそうですけど」
「それなら簡単よ、フロンティア。ひとまとめにして別区域に置くのが良いかと思うよ。搭載艇用別区画として使うか、あるいは各船の近傍空間に一つか二つまとめて防御や攻撃に適した形にするか。まあ、どちらにせよ搭載艇置き場として欠かせないものなんで」
それからは、改造するチームと捜索するチームに分かれ、それぞれの作業計画にとりかかる。
もうすぐ五隻目が見つかりそうだ……