銀河団探査船、5隻目登場! 十話目
そろそろ、計画を進めます。
さて、楠見とプロフェッサー、ライムの班のお話。
「しゃちょー!おやっさんが宙港で待機してますんで、今回は荷物受けは宇宙船横付けで可能だそうです!久々の大型物件ですよ。500t以上は確実な荷物だそうです」
ライム総務部長の声が響き渡る、とは言え、広い倉庫内での微弱無線がスピーカーから大音量で流れてるだけだが。
「分かった、ライム部長。俺はコ・パイ(副操縦士)引き連れて宙港へ急ぐ。おい、新入り、行くぞ」
「はい、社長!お供します!」
ということで、楠見と新入社員の副操縦士は、倉庫で受け取る荷物が港へ直行したという事で、二人でロボカーに乗車。
会社倉庫から宙港までの道のりは、もう嫌と言うほど往復した定期便のようなもの。
「お、到着か。ハロー、おやっさん。こちら楠見と新入りのコ・パイだ。貨物便は、どうなってる?」
「おお、楠見社長。貨物は、あまりの大きさと重さに、貨物便のホバートラックが大型すぎて普通の倉庫に入り切らんと、向こうさんから注文来てな。じゃあということで、貨物船に横付けしてもろうた。ロボット荷受けが待機しとるんで、船に行ってやってくれ。もう、トラックも宇宙船も、口開けとる頃じゃろう」
「了解、ありがとう、おやっさん。では、船に向かう」
地上無線を切る楠見。
「さて、あそこに見える、ひときわ大きな大型貨物船が、我社の船だ。元は、おやっさんの会社の船だったんだが、社長が宇宙生活に耐えられん年齢になってきてな。会社を畳むっつーんで、それならと、社長ごと会社をウチが引き取ったってわけ。他にも中型船の船団が2つほどあるが、そいつは今、プロフェッサーが率いてる。俺達は、一隻でも大量で重量物の貨物を扱える大型船を飛ばすってわけだ。行くぞ、新入り!」
「そういうことでしたか。超のつく優良企業なのに、なんで新人のボクを採用したんだろうかと不思議だったんですよね。任して下さい!今すぐとは行きませんが、社長の腕を自分のものにしてみせますって!」
「おお、若造が(笑)まあ、ちょいと無理だとは思うがな(笑)」
新人パイロットが、どう考えてみてもおかしな現象に気づくのは、宇宙空間への飛行状態になってから。
「社長……いくら計算してみても、この船の燃料消費量は変ですよ。だって、計算上なら、もう三割は消費してなきゃおかしいのに、燃料消費グラフの表示見ても一割減ってないじゃないですか!社長、何か、この船、特殊な装置積んでませんか?」
「ははは、そんなことか。以前の中型快速線の場合は、もっとスゴイ節約量だったんだがな。さすがに、この貨物量だと、燃料消費がバカにならんよ」
「だから、社長!どう計算してみても、通常の航行経路で、こんな燃料消費が少ないのは異常ですよ!」
「いやいや、俺以外でも、例えばプロフェッサーが指揮する船でも、まあ、これよりは多いが、通常より二割は燃料節約できるんだぞ?この船の節約料が大きいだけだ、心配するな」
「いや、心配するなってのが間違いなんですってば!この船、大型貨物船ですよ?!それでいて、中型貨物船より燃料消費が少ないって、何か、燃料計の故障とか考えられません?」
「ん?そんなこた無いぞ。心配なら、帰りも燃料計を見てると良い。こいつが実際にエコな宇宙船だって分かるだろう……ただし、俺が乗るって前提だがな」
新人パイロットは、往復行程で燃料消費と実際の量をチェックしまくった。
最終的に、燃料計に故障がないと理解すると、次からは楠見の指揮を穴の開くほど見つめることとなる。
「まあ、俺の指揮なんて、良い加減だから参考にしちゃいかんぞ。それよりも、どこにコツがあるのか理解するほうが先だ」
社長が、超の付くエスパーだという事を理解しない限り、彼の苦悩は続きそうである……
数年後、輸送会社としては超大手となった楠見の会社は、貨物輸送から人員輸送へと舵を切る。
「……というわけで、我がガルガンチュア教団としては、中型クラスでも速くて融通の効く船と、ともかく大量の人員と貨物を積める船の、両方が欲しいわけですよ」
ここはガルガンチュア教団、中央教会の事務室。
室内にいるのは、楠見、プロフェッサー、ライムと、会社の重鎮勢ぞろい。
テーブルの向こう側には、郷、エッタ、教団の当銀河での教皇代理、教団総務部統括という、こちらも教団の重鎮ばかり。
協議しているのは、楠見の運輸会社を教団専用のタクシー代わりにしようという話。
「もちろん、そちらの会社には教団から一定額をお支払いします。使用してもしなくても、かなり高負荷で使用したときと同様の費用をお支払いするということで。あ、それから、教団の教会や事務所のある星系ならば、どこでも通行料不要、通行許可の事前申請も不要という条件もつけますが、いかがでしょうか?楠見社長」
破格の条件である。
普通なら、飛びつくところだが……
「総務を統括する常務の立場から言わせていただきます。あくまで、平時の条件ですね?その星系が内乱や星間戦争に陥った場合の危険手当とかは?」
「そ、それは、こちらの教団総務部統括の者と契約を煮詰めていただくように。ともかく、我が教団は信者が増えすぎて、このままじゃ教団員を指導するものが、異動のたびに数ヶ月待たされることになるんですよ。どうか、御社で我が教団の足を救っていただきたく……」
顔は渋いが、腹の中は笑いが止まらん、楠見、郷、エッタ、ライムだった(プロフェッサーは、心情が顔色に出ない)
しかし、ここに来て(ようやく、というところだが)お隣の銀河(ガルガンチュア教団の本家本元)に、楠見や郷、エッタの存在に気づく者たちがいた……