銀河団探査船、5隻目登場! 八話目
まだまだ序盤。
視点を変えて語ってるんで、話が進まん!
再び、こちらは楠見、プロフェッサー、ライムの班。
ルート配送とは言うものの、星系と星系の間が密になったり疎遠になったり、果ては過疎星系への地方配送便のための巨大倉庫へも配送することとなり、ようやく配達を終えて母港へ帰ってきたら……
「しゃちょー!最高緊急便の配送依頼です!とある星系で伝染病が発生して、その治療薬を至急、届けてほしいとの依頼です!」
「……まあ、しゃーねーか!ってことでプロフェッサー、この依頼は俺一人で充分だ。急なんだが、もう一隻、中型で、できれば快速モデルが良いけど、無理そうなら大型で足の遅い奴でも。このままじゃ、配送依頼に船も人も間に合わなくなっちまう!」
渋い顔したプロフェッサーだが、
「まあ仕方がないでしょうね、我が主。このところの依頼殺到には、できれば足は遅くとも、できるだけ荷の積める大型貨物船が良いかと。では、再び価格交渉に頑張ってみましょうか!」
「おう、頼むな!って、言葉遣いがおかしくなってるな、この頃。いかんいかん、通常に戻さなくては!」
「では、いってらっしゃーい!」
と、宇宙港でプロフェッサーとライムに見送られながら、緊急配送に旅立つ楠見。
「ぜー、ぜー……ようやく戻ったぞ。いやー、今回はヤバかったぞ。貨物を受け取るはずの宇宙港係官まで伝染病に罹っちまって、しょうがないんでオレ一人で治療薬の荷降ろしやったんだがね」
「で?あの緊急貨物、確か2tばかりあったんじゃなかったでしたっけ?それを、しゃちょー一人で?嘘でしょ?無理じゃないですか!」
「そこはそれ、火事場のなんとかって奴……って触れ込みでな。1つ500kgの貨物を4つ、肉体補助の要領でサイコキネシスを駆使して宇宙港の指定ターミナルへ降ろして、その後は接触禁止条項で現地の者にまかせて帰ってきた……疲れたと言うよりも、伝染病が接触感染だったんで、誰にも会えずに、サインすらリモートで貰って帰ってきたんだ……精神的な孤独のほうが辛かった」
「わが主、火事場の馬鹿力とは言っても程度があるかと。何処の誰が、一人で500kgもある貨物カーゴを担げるんですか!」
「緊急時だから、俺は一種のサイボーグだと言っておいた。短時間だけど、超人的な力が発揮できるんだと。一応は信じてくれたようなんだけど……二度と、あの星には行けねーよな」
「当然です!まあ、ガッチリ稼がせてもらいましたんで、社員にはボーナスが増えるぞと言っておきましたが……あ、それでですね。プロフェッサーの探してきた中古貨物船なんですが」
「そうですね、その話を。ちょうど、同業種で廃業するって会社がありましたんで、顔なじみのよしみで、結構値打ちに大型貨物船を譲ってもらいました。ちょいと、年が行ってますが」
年数くらいは問題じゃない。
最悪、エンジン部分を取り替えれば良い話だから。
「で?その貨物船の船内は?サビとかよりも、宇宙線やら微小隕石との衝突ダメージとかが気になるんだが」
俺の疑問に、
「それなら大丈夫です。エンジンの型式が古いんですが、こいつは私のデータでパーツを入れ替えて、最新型と同じくらいのエンジン性能にできますよ。カーゴルーム含めた船内は、一部に問題ありましたが、それも数日のうちに解決する予定です」
「一部の問題って?」
「あのー……ですね。実は、酒とタバコの匂いが船内に滲み付いてしまい、とても他人が入れるような環境ではなくて……でも、数日かけて、完全船内クリーニングしてますんで、それが終われば、しゃちょーが入っても大丈夫かと……しゃちょー、タバコの匂いだけはダメですもんね」
「まぁな、アルコールくらいなら大丈夫だが。そうか、前任者は、猫を売女と罵ろうが……って時代の奴だったか。懐かしいな、そういうのも。俺はやろうとは思わんが」
「お年もお年で、昔は、どっかの独立星系で総督やってたって自慢を聞かされてました。腕はまだまだ落ちてないが、眼がついていけなくなって、宙間レーダーのブリップが、よく見えなくなって来たと言ってましたね。それで、仕事はまだまだ充分にあるんだけど引退するということでした」
「おい、それなら、その従業員、ウチに来ないかな?条件は良いぞ、ウチは」
「わが主、そう言うと思って、従業員ごとリクルートしてきました。元社長も、無線業務や宇宙港の人員采配とかならやれるってんで、元社長ごと、です」
「よくやった、プロフェッサー。これで人員不足は解消したかな」
「しゃちょー、解消はしましたが、今は、ですよ。将来的には仕事が増えて、貨物船も増えるのは分かりきってるんですからね!」
まだまだ目的には程遠い、3人なのだった。