銀河団探査船、5隻目登場! 四話目
ガルガンチュアクルーが動き出します。
このあと、2班(ガルガンチュアも入れると3班)に別れて動くため、お話があっちこっちと視点移動します。
ご承知おきください。
「さてと。どう動こうか。以前に使ったガルガンチュア教団として動く手段を取れない以上、対抗する宗教団体を作るか、それとも一個人としてガルガンチュア教団に潜り込むって手を使うか……難しいところだな。郷、他に、このトラブルを解決する手段として思いつくものはあるか?」
郷が、沈思黙考している。
しばらくして、
「師匠、それこそ、今回は内と外からの改革という二正面作戦をとってみたらどうでしょうか?4人、いや、プロフェッサーさん入れて5人もいるんで、教団の内側から改革の2人、外側で教団のやりすぎを抑制する団体を構成する役目を3人が担当って形にすれば、かなり早めに解消できませんか?いや、解消と言うより、正常化かな?俺達が、あの銀河で立ち上げたときのガルガンチュア教団は、もっと生命体全てに優しい教義だったんで」
「そうですね、それが良いのではないかと思います、ご主人様。私と郷さんは、過去のガルガンチュア教団の正しい教義を覚えていますし、かなり上の立場だったこともあります。下々のボランティアという立場から、だんだんと上に上がっていくのも久しぶりなんで、内側からの改革は私たち2人におまかせを」
ということは、自動的に俺とライム、プロフェッサーが外側。
郷とエッタがガルガンチュア教団に潜り込む側になるということ。
いや、郷とエッタの場合、元の職場に戻るような感じになるんだろうな(それも、元高位の立場を隠して、最下層に近いところからやり直すわけか)
なんか、大会社の元社長が身分を隠して支社に平社員として入社するような気がするんだが……
「さすがに元々の最高枢機卿としての郷や、聖女としてのエッタを覚えてるような人間はいないと思うんで大丈夫かなと……教団情報部の高位エスパーは、こっちの銀河には来てないと思いたいが。まあ、郷の力があれば探知やテレパシーも防げるか。二人共、油断するなよ。銀河は違うとは言え、何かの伝承で、最高枢機卿と聖女の事が引き継がれている恐れはあるんだから」
懸念材料が無いと言うと嘘になるが、まあともかく、俺達は動き出す。
郷とエッタは、ガルガンチュア教団の掃除係として雇われる事に成功(ボランティアでも良かったが、少々、ESPが使えるとの触れ込みで応募したところ、二つ返事でOKが出たとのこと。やりすぎるなよ、頼むから)
俺達3人は、小さいけれど星間輸送の会社を作ることとする。
「プロフェッサー、小型で良いから快速型の宇宙船をみつくろってくれ。性能重視で、少々なら予算をオーバーしても許可する」
「了解です、我が主。しかし、久々ですな、我が主と共同で動くのは」
「私もいるんですけど?忘れてませんか?」
忘れてないぞ、ライム。
「ライムには、事務所探しをしてほしい。俺は……いつもの通りで、会社設立のための資金を作らなきゃな」
「おお、すると、船の予算は青天井で良いと!最高級の軍用快速船が買えますな」
「おいおい、プロフェッサー。中古で良いんだ中古で。その中で程度が良くて足の速いものが良いな。予算は……船には、このくらい。事務所は……このくらいか」
「わかりました、キャプテン。事務所の場所とか、こだわりは……ありませんか。では、予算内で一番の物件を探してきますね!」
張り切ってるなぁ、二人共。
まずは、今の状況を改善するため、資金を作り出すところから……
ということで、手持ちの金も何も無い俺は、例の錬金術モドキの手段を利用して、空中の貴金属元素抽出・収集・圧縮。
一時間後。
金と銀のインゴットを、それぞれ20本ばかし作っていた。
うーん……
このところ、力の開放を絞り切っていたんで、分子単位の抽出が遅くなっている。
ちょっと、リハビリ兼ねて、張り切ってみようかな……
「で?我が主。リハビリ兼ねて半日もの間、貴金属の分子抽出作業をやってたと……」
「キャプテン……ちょっと、シャレになりませんよ、この惨状は」
はい、すいません、調子に乗っちゃいました俺がいました。
半日、我を忘れて貴金属粒子の抽出と収集・圧縮を繰り返してしまったところ……
とりあえずの集合場所となっていたオンボロビルの一室が、金銀のインゴットで埋まっていた、半分ほど……
床が壊れて抜ける前にと、3人で貴金属買取業者へインゴットを持ち込んだんだが、2割ほどで買取が中止。
「これ以上は、うちも予算がありません。知り合いの業者を紹介しますんで、そちらで買い取ってもらってください」
これを4件ほど繰り返して、ようやくオンボロビルの一部屋が空になる。
ちょうど、ライムが走り回ってくれたおかげで都合の良い事務所も手に入り、これで会社設立の準備ができる。
「予算が大幅に増えましたので、予定より大きくて速い中型快速船が探せます。少し時間は掛かりそうですが、会社設立にも少し掛かりそうですから、立ち上げ時にはお見せできると思いますよ」
ということで、俺とライムは、あっちこっちと走り回って会社を設立。
プロフェッサーは予算が増えた分、様々な中古宇宙船業者を回ってもらい、程度の良い中型快速宇宙船を購入してもらうことに。
「わが主。慣れ親しんでいる搭載艇とは違いますが、こういう形の、惑星へも降りられる機能を持つ宇宙船も、たまには良いかと」
球形じゃないが流線型が懐かしい、ちょっと古めだが整備は万端の中型快速貨物船を手に入れて、俺達は運送業に勤しむこととなる。