銀河間空間の難破宇宙船団 その九
ようやく膝の痛みが快方に向かってきましたので、新作をアップできました。
お話は佳境に入ってきましたが、そろそろ終盤へ突入したいと思ってます。
お次のネタは、何でしょう?(笑)
裏や陰で活躍する「宇宙パトロール(自称)」隊員が増えていくにつれ、辺境部でのトラブルは激減していく。
それが、辺境から銀河周辺部へ拡大するのに数十年以上かかった。
周辺部へ拡大した宇宙パトロール(自称)隊は、辺境と同じく、トラブルに対応して、それを解決していく。
銀河帝国の中央情報局、辺境支部では掴めなかった異変の内容と原因が、ようやく中央情報局本部にもたらされたのは、辺境部から周辺部へと宇宙パトロール(自称)隊が活動を拡大したから。
中央情報局本部では、今まではテロやその他の犯罪に対応しているのが精一杯だったが、トラブルが辺境でも周辺部でも激減してくるにつれ、その原因と内容に関して人員と諜報活動に回せる余裕が出てくる。
「おい、辺境部と周辺部で犯罪や、その一歩手前のトラブルが次々と減っているのは知ってるか?」
中央情報局の課長が、自分の配下に伝達する(俗に、ミーティングと呼ばれる)
「はい、課長。数十年前までは辺境部も周辺部も、犯罪発生率に比べて検挙率が低すぎるって苦情が毎日のように上がってきたようですが、このところ、辺境部と周辺部を合わせた犯罪発生件数と中央部の犯罪発生件数が逆転しているとまで言われてますよね。どうなってるんです?人口比で中央部の方が多いのは確かなんで犯罪発生率が中央部の方が高くなっても仕方ないとは思いますが……これは変でしょ?何で、我々の目が行き届かない周辺部や辺境部のほうが犯罪発生件数が低くなってるんです?」
「ああ、君らも認識してたか。上部では、その原因を探ってたんだが、周辺部で、その原因と思われる組織が活発な活動をやりだしてな、それでようやく掴めた」
「で?課長、原因って何だったんです?もったいぶらずに教えてくださいよ」
「まあ待て。ちょっと内容的に微妙なんで、会話じゃなくてデータで教えよう……こいつだ」
課長の端末から、各自のビューワーへデータが転送される。
グラフや数値の次に、その原因と目される組織名が記され、そして、その活動内容が明かされる。
「……課長、これ、本当だとしたら、我々、中央情報局の仕事を完全に横取りしてますよね。それどころか、我々以上の行動力と人員、そして、その敏腕さと組織力の固さ!これ、銀河中央情報局って組織は不要なんじゃないですか?この、自称「宇宙パトロール」?ってのに全面的に仕事預けちゃったほうが楽だし、確実ですよ」
その発言を聞いて、課長は苦笑いを浮かべる。
「おいおい、選りすぐりのメンバーであるはずの中央情報局本部勤務が何を言ってる?まあしかし、この数だけ見たら、我々が怠慢だったと言われても反論できんな。何しろ、我々が手に負えなかった辺境部のテロリスト集団すら、いくつも鎮圧・壊滅させてるんだ。方法と人数は報告には上がっていないが、ずいぶんと少ない人数だったのだろうと思われる、とも書いてあるな。こちらの諜報員は、すでに辺境部では全て面が割れ、中央部へ強制送還されているので現状は何も掴めないが、周辺部からの報告では、ずいぶんと活発に動いているらしい……らしいというのは、周辺部でも銀河中央情報局に所属する、または密に関係する個人名や団体名、果てはスパイ活動の内容まで次々と暴かれているからだ」
「ああ、それで納得しましたよ、課長。このところ周辺部や辺境部の各支部から戻ってくる奴らが多すぎると思ったんですが、それが理由だったんですか」
昔は情報局の人員が少なくて任務と人員のやりくりに苦労したものだがなぁ……
課長はため息をつく。
以上、銀河帝国は情報という面で、自称「宇宙パトロール隊」に駆逐されかけている現状。
しかし、まだ帝国には宇宙軍が残されている。
表面上の平和は拡大し続けている。
銀河が平和な以上、宇宙軍を下手に動かせないのは政治家の常。
それは帝国を統括する皇帝にしても同様だった。
自分のスパイ組織が次々と潰されていくのは苦々しいものがあるが、かと言って疑わしいだけで宇宙軍一個艦隊は派遣できない。
これをやった最後、帝国を構成する公国や自治星系などの中小勢力の反発を招いてしまうのは確実。
帝国議会は諜報組織への予算減少へ方向転換しようとしているし、皇帝は現状把握のためにも軍を派遣したいのだが側近と議会が、それを認証しない。
帝国議会は連日のように大荒れになっている……




