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ようこそ大宇宙へ! 超古代の巨大宇宙船で宇宙を征く  作者: 稲葉小僧
超銀河団を征くトラブルバスター
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銀河間空間の難破宇宙船団 その七

銀河帝国への反抗勢力は、徐々に力をつけていきます。


銀河は、辺境地区から変わっていった……


最初は、帝国情報部への日常報告からだった。


「この頃、辺境地区がずいぶん平和になったな。定期報告が「特に異常なし」で済ませてきてる頻度が多くなったようで」


ここは帝国中央情報部、辺境担当の一角。

中央部、周辺部、辺境部と担当が別れていて、それぞれの部署で持ち寄られた報告書や定期報告を一定の日時でまとめ、総合会議を行うように決められている。

中央部、周辺部は過去から安定していたが、辺境部は反抗勢力が未だに残っているのだろう、いつまでもきな臭い報告が絶えなかった……

数年前まで。

それが、この頃になって辺境地区の情報部員からの定期報告が、平和な地区になったと報告する日々が続いている。


帝国の支配体制が長年続いているのに、いつまでも辺境地区だけが騒がしいというのは上層部への報告としても恥ずべきことなので情報部としても10数年前からテコ入れしてはいるのだが、どうにも反帝国勢力の力が衰えず、その行動を抑えるどころか情報部員まで反抗勢力の目標になってしまい、危険すぎるので一定範囲の星域には手が出せない状態になっている……

それが、ある一点から反抗勢力の仕業と思われる事件や事故件数が低下しはじめ、この頃では「報告すべきことはありません」状況が続いているということなんだが……


「いや、それおかしくないか?数年前の事故や事件の件数を思い出してみろよ。今じゃ中央と辺境の事件・事故数が入れ替わっているんじゃないかと思われるくらい辺境部で何も無いって報告が続いているんだぞ……辺境部で政情が安定するって事自体、おかしくないか?」


「でもなぁ……辺境部からの民間メディアニュースを集めてみても、この頃は平和なもんなんだぜ?俺達の裏情報だけならまだしも民間のニュースまで平和だと言ってるんだ、間違いないだろ」


「ううむ、しかしなぁ……俺は20年前まで辺境部で調査員やってたんだ。あの頃は酷かったねぇ……テロ一歩前としか思えん破壊活動から、あらゆる開拓における妨害活動まで事件や事故のない日が無かったんだぞ。それが数年で中央部より安全で平和?信じられるかよ!」


彼の心配は、もっともな事。

彼が辺境部で調査活動を行っていたときには、ちょっとしたテロ行為やサボタージュ、事故に見せかけた反帝国運動なんてのは日常茶飯事だった。

それが、彼が中央部に戻ってきて、未だ8年も経っていないのに、この数年というもの、辺境からのニュースや調査報告で争いごとそのものが治まったのではないかと思われるほどに事件や事故を聞かなくなっていたのだ。


「いやいや、それがなぁ……俺の同期が昨年、辺境へ調査任務で行ったときのことなんだが……治安は中央部より良くなってて、経済すら回転率が中央部より良かったと聞いている。そいつの言うには、どっちが中央なのか分からんほどだったとさ。ただ……気になったのは……」


彼は、その一言が気になる。


「気になった?民衆も平穏で、経済も普通どころか凄い勢いで回っているのなら、万々歳じゃないか」


「いや、それがなぁ。治安を守って、経済を回している中心人物たちが、どうも中央から送り込まれた政府系や経済系の人物たちじゃ無いそうで。まあ、それならそれで、辺境が栄えてるのは帝国にとっても御の字だろうが、ちょっとばかし疑問点があるんだよ」


「ほぅ?その疑問点とは?」


「辺境部だぞ、辺境部。そこで売られている商品の品質が、帝国中央部と同質、あるいは民間どころか軍部の基準に近い品質だとしたら?これが同じ中央部なら、あり得ることだろうが、辺境部でだからな……あり得ないことだと思う……あるいは、中央部や軍部の情報が漏れている?まあ、軍の方針や計画が漏れているわけじゃないだろうが、辺境の民間企業が、軍規格のものを大量生産するというのはなぁ……」


「うむ、そういう方面での疑問か。商品、特に軍用品の品質が上がったのは、GK重軽工業って会社が参入してからだと言うのは、お前も知っているだろう。実はな、あそこは軍への納品量より民事品の納品量のほうが多いんだ。それでいて、軍へも民間へも同質の、高い品質の物資や装備を作っている。本当なら、軍の意向で、民事品は軍のものより品質を落とすはずなんだが、あそこは別なんだそうでな。この頃は、中央より辺境部へ工場を移しているそうなんで、それで辺境部が潤っているんだろう……情報部としては喜ぶべきなのか憂慮すべきなのか複雑なところだが……」


とりあえず、この会話は、ここで終了することとなる。

惜しかった、実に惜しかった……

帝国中央情報部は、反乱の芽を掴んでいたが、摘むことなく見逃してしまった。

歴史が戻ることはないが、ここで帝国中央情報部が、もうひと押しして入念にスパイを送り込んでいたら、また歴史は違ったものとなっていたのかもしれない……


「そうかぁ。それじゃ、懸念材料が解消したということで、辺境部は監視の目を緩めることにするか。余った人材は中央に戻して、こちらのテロ予備軍たちを監視する任務に就いてもらうとしよう。こっちも大変なんだよ、反帝国デモなんてのが、あっちでもこっちでも開催されてるんだから」


神ならぬ人の判断が、一番大切な機会を掴むことを止める。

そして、徐々に、辺境部から中央に向けて、経済の形をとった戦いが仕掛けられていくのだった……


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