銀河間空間の難破宇宙船団 その六
遅れすぎましたが、読者の皆様、あけましておめでとうございます。
寒くてねぇ……キーボード打つ手や指が、こむら返り起こすんですよ(苦笑)
毎日、少しづつ書き溜めて、なんとか一話、できました。
エタる様子もないし、その気もないから安心してね、読者様方(笑)
また、数年が経った。
GK重工業は関連会社と吸収合併を繰り返し、今や「帝国」にとっては生死を左右されかねないほどに官にも学にも軍にも食い込むような形の半国営企業となる。
名前も変わって今では「GK重軽工業株式会社」となり株式の3割は帝国が持つこととなる。
この株式の比率も交渉途中でひと悶着あった。
「我社では株式を発行しておりません。ですから株式会社とは名乗っていますが実質は自営業ですね」
郷の一言で議場の半分が凍りつく。
帝国側の交渉団は、これほどの超大企業が株式発行もしてないなどとは思わなかった。
ざわざわと言う話声が途絶えたのは数十分後。
「で、では、帝国軍が資金を出すので其の分の株式を発行してもらいたい。具体的には株式の3割は欲しい。今では御社の製品は帝国中に溢れている。軍の装備品にも採用されているスタンガンやパラライザーなど非殺傷系の銃器は優秀過ぎて、他のレーザーガンやら熱線銃の殺傷系銃器の出来の酷さが目立ってしまうくらいだ……ああ、殺傷系の銃器のほうが通常の量産品クラスということで決して故障率が高いとは思わないがね。そちらの製品は量産品とは思えないレベルの製品だよ。銃器にしても他の星に持っていくと、それだけ目につくんだろうな、美術品を武器にするとは粋ですなと言われるのだ」
郷社長は、できれば2割以下に抑えたかったが帝国も一歩も引かない。
「分かりました……総発行株式の3割、それで手を打ちましょう。我社としては大株主だからといって軍から取締役を送られるのも困りますので、これ以上、経営に首を突っ込まないことと、我社の製品として殺傷能力の高い銃器などの製作を依頼しないことを確約していただけるなら、そちらの資金流入、受け入れます」
郷社長としては、もっと比率を落としたかったところだが超のつく大企業となってしまった今、帝国軍部の干渉を受けて当然の事態。
これを拒むのは帝国軍のブラックリストに載りかねないのでGK重軽工業としてもある程度の条件は飲まざるを得なかった。
資金提供の代わりに帝国軍が要求してきた事項は、あまり多くはない。
* 非殺傷武器の納入数を増やすこと(現在、軍に非殺傷武器の予備は無い。殺傷武器は倍以上の予備がある)
* 武器以外の用具、工具、車両なども納品してもらいたい(意外に思うだろうがGK重軽工業の車両や宇宙船、作業用品などは軍に納品されていない。社長や元会長の意向により、軍への納品は工場や関連企業の仕事が重荷にならない程度という規模である)
* 取締役ではない、軍との交渉役としての役員を常駐させること
主には、この三つの要求が大きなものだった。
郷や取締役たちは、この要求を飲む。
これを断ると、より大きな制約を課せられそうだったから先手を打ったと言える。
GK重軽工業の、この要求に対する対抗手段としては、軍関係の専門部署を立ち上げたこと。
ただし、軍から出向された役員は、この部署のトップには座らない。
社内の根回し役として、取締役の一人が部署トップとして統括部長の役職をもらい、軍と民間需要とのバランスを図ることになるようだ。
「社長、どのくらいの比率が良いと思います?」
「そうだなぁ……最高でも民間需要の三割は超えないようにしてほしいな。半分なんて、以ての外。民間あっての軍需なんだから」
幹部会議ではない、統括部長と社長との二人きりの会議(という会話)の場で、軍への納入限度が決まるという、大企業としてはトンデモな経営方針(普通は軍需を最優先する。実入りが良いのだ、軍への納品は)である。
その頃、楠見は何をやっていたか?
「よーし!今日の訓練は終了だ。君らRENZ装着者第三期生の訓練過程は、もうすぐ終了する。先輩たちは、銀河辺境地区で活躍中だから、彼らと合流する日も近いぞ。頑張れよ!」
ハイ!
という大合唱が起きる。
ちなみにここは超のつく大企業、GK重軽工業の広大なる社内グラウンド。
スポーツの練習に見せかけてRENZ装着者たちの訓練を行っているのだが、傍から見ると、社会人ラグビーや野球団体、サッカーチームのようなプロスポーツチームの強豪チームの練習に見える。
実際に、GK重軽工業としても社会人野球やラグビー、サッカー等のプロチームも持っているので間違いではない。
まあ、今日はプロスポーツ関係の方は一斉に休みをとっているので、RENZ装着者と楠見がだだっ広いグランウンドを貸し切りにしているのだが。
このようにして、帝国に対抗する力は着々と蓄えられていくのだった……




