表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ようこそ大宇宙へ! 超古代の巨大宇宙船で宇宙を征く  作者: 稲葉小僧
超銀河団を征くトラブルバスター
730/813

銀河間空間の難破宇宙船団 その五

だんだんと、帝国の内部に入り込んでいく会社と、その裏で静かに暗躍する楠見たちです。


また数年後。

まだまだ増築しても足りなくなってきた本社ビルは周りの土地すら買収して一度、更地に戻し、本格的に建て替えることとなる。


「社長、またご決断が早かったですな。会長が引退されてから、社長がワントップになったために決定が素早くなったと、概ね好評です……まあ、口さがない輩は、社長のワンマン体制が強まったと吹聴しておりますが。会社にとって悪い決定をされていないからこそ、全社上げて社長に付いて行くと決めたのに、あの恩知らずめが!」


専務の愚痴が出る。

社長に匹敵、いや、それ以上のカリスマ性があった会長が現役引退を発表してから二年……

まだまだ会長を慕う者たちは多く、復帰を直訴するという者まで出る始末。


「まだまだ、俺には会長のような魅力が足りんと言うことなんだろうな。しかし、こればかりはなぁ……クスミ会長のカリスマ性は、まさに神がかってたから。あれを真似しろという方が無理だぞ」


郷社長が、いみじくも呟く。

たまに定期報告で話し合うことはあるが、今の楠見は別の用件で忙しいらしく、政治や経済には興味を失っているようだ。


「もう少し、もう少しだけ現役でいてくれればねぇ……俺に全責任背負わせて、あの人は……」


通常、社長がトップとなる方が良いだろうに。

社員の中には未だに郷社長が前会長を頼りにしていることに疑問を呈するものもいる。


「重役の中にも、新人の者たちでは社長と会長の真の役割が分かっていない者たちが出てきていますからね。その者たちから見ると社長と会長が親密だったのが信じられんのでしょう」


専務の言葉。

ちなみに専務は元・難破船集団のリーダーの一人。

古参の重役たちは全て元難破船集団リーダーだった者たちだが、この数年(会長が引退してからは特に)外部企業や吸収合併した企業の元重役たちが席次を上がってきたらしく、部長の席を占める割合が増えてきた。

とは言うものの、まだまだ常務以上で古参重役に替わるものは出てきてはいないが。


「厄介といえば厄介だよなぁ、真実を知らせるのが良いとは限らないし、下手すると帝国から送り込まれた諜報員って可能性もあるし……いっそ、俺が引退して師匠が会長に復帰すれば……」


「郷社長。あなた自分で言ってたじゃないですか。楠見会長では、あまりに個人の力が強すぎて企業も一人勝ちになる恐れがあると……でもって、恐ろしいことに元会長の力は本気で怒れば星一つ砕けると言うじゃないですか。私は志半ばで死にたくないですよ、理不尽な力で」


専務の本音だろう。

郷社長はタメ息を一つ、そして、


「そうなんだよなぁ……あまりに個人の力、権力もカリスマも、そして実際に使えるサイキックパワーすら常識はずれの御仁だから、ちまちまやる計画には向いてないんだ、あの人。力で帝国を無理やりにでも平和にするってことなら鼻歌交じりで実行するんだろうなぁ……恐ろしいことに」


そう、楠見の力(サイキック能力の方)は、疑似テレポート実験事故の時より遥かに巨大化しているとしか思えない。


これより20年以上前のこと。

楠見と郷の2人で計画して、帝国内に重工業(将来的には軽工業も)の会社を作り、まずは帝国内での足固めをしようと言うことになった。

その資金を稼ぐ作業、具体的には惑星内の大気より抽出した貴金属分子を集めて塊にする細々した作業(実際には、このKG重工業株式会社の創立前)には、通常ガルガンチュアから持ってきた空中分子採集固定装置を使うんだが、今回は楠見一人で大量の白金塊、金塊、銀塊、特大ダイヤモンドまで生み出してしまった。


「いやー、何か簡単そうに思えてしまってね。以前は、もっと時間がかかったんだがなぁ……どうしたんだろ?」


実験事故前より確実にサイキック能力が上昇しているが、自分では普通だと思っている楠見。

郷は、このまま二人で計画を進ませることは予想外のトラブルを呼び込みかねないと感じ、楠見と相談する。


「師匠、事故前よりパワーアップしてますよね。以前でも、あまりに人間離れしてたと思うんですが、この現状は……自分で理解してないと思いますけど、こんなの俺でも到底無理な話ですからね」


二人の目の前には、もうトン単位で数えたほうが早いと思えるほどの貴金属塊、そして、ついでのごとくに巨大なダイヤ(カットされていないのでダイヤモンドとはいえ原石のまま。直径30cmはあると思われる、巨大な球状の純粋炭素の塊が圧縮されたもの)がそこいらじゅうにゴロゴロと転がっている。

郷は、一つタメ息をつくと、


「会社立ち上げ時は師匠の力を貸してもらいますが、そうですね……20年は経たずに引退してもらったほうが良いでしょうね。師匠には、その後、裏でRENZ計画の方をバックアップしてもらうということで」


「ああ、俺も裏仕事のほうが良いな。どうも、今のようにすぐに相手の考えが飛び込んでくる状況では、商売も交渉も、やりにくくて仕方がない」


こんな会話があったとか無かったとか。

ということで、今現在、楠見はガルガンチュアとRENZ設置惑星とを往復しながら、RENZにより強化されたサイキック能力を持つ帝国第二等市民や、それ以下の市民たち、市民にもなれない下層民たちをフォローして、帝国支配を覆す力を育てているところである。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ