銀河のプロムナード フロンティア旅立ちより、約3万年後
次から本編!
どんな話にしようかなぁ……
ここは、銀河系を含む銀河団の中にある、ありふれている小銀河の一つ。
ここでは、今まさに、汎銀河文明の象徴となる銀河間転送機端末の設置が実施されようとしていた。
この小さな銀河に住む全生命体の悲願とも言うべき、銀河間転送機の利用権。
この転送機端末設置のため、汗と涙で長年の銀河内部の平和と安定を成し遂げてきた、銀河統一政府の閣僚一同は、心の中で涙していた。
「主席統括統制官!わ、私は、私は……こみ上げてくるものを抑えきれません!」
閣僚の一人は、公衆の門前だというのに大泣きしている。
声をかけられた、この銀河の最高指導者にして主席統括統制官である生命体は、静かに、厳かに、
〈これも、我々だけの成果じゃない。遥かな過去から平和と安定を望み続けて、それを実現させ、維持させるという非常に困難な目標を実現させてきた、ご先祖たちあってのものだ。今が平和だから転送機端末が設置されるんじゃないことを肝に銘じよ。過去から未来に渡り、この銀河が平和と安全であるということが保証されたから、この銀河間転送端末が設置されるのだということを常に憶えておくのだ!〉
弱くはあるが、しっかりしたテレパシーで、この式典に集まった民衆や、各地域の統括統制官たちに向けて話す主席統括統制官。
やがて、どこからか拍手の音が響き始め、それが全民衆に波及していく。
しばらくして、ようやく拍手の嵐が止むと、
「それでは、汎銀河文明宗主国となる銀河系よりもたらされました銀河間転送機の端末設置セレモニーを終了いたします。これ以降、この銀河の生命体は、この端末により、全ての汎銀河文明圏への直接転送が可能となります。詳しくは、用意されておりますマニュアルファイルをお読みください。ちなみに、この端末では宇宙船クラスのものは転送対応しておりませんので、ご了承願います。あくまでも、この端末は、生命体個人向けの転送装置端末です」
運用マニュアルや整備マニュアル、様々なトラブル対処方法の書かれたマニュアルも、書類とデータチップの二種類で渡されていく。
書類の方は現実的ではないが、これはセレモニー。
無駄だと理解しつつも、儀式的には、こういうものが重要視される。
この後、時ならぬ汎銀河文明圏日帰り旅行が、この銀河で流行する。
今までは、お隣の銀河へ一度、一つの銀河にしか対応していない条件付き転送機で行き、そこから目標の銀河や星系へ行くというスタイルをとるしかなかったのだが、その条件が取り払われた今、あっちこっちへと旅したいという欲望に駆られる人たちがいても仕方がないだろう。
ちなみに、今の御時世でも銀河系や、その中の太陽系、もしくは地球や火星、木星などは聖地の中の聖地扱いとなっており、そこへの日帰り旅行は無理とされている。
転送目標としては地球も火星も制限を受けるわけではないが、ともかく聖地を目指す旅人が多すぎるのが問題。
現在、銀河系すら目的地にする人数が多すぎて、まずはアンドロメダ銀河で足止めされて検疫と予防注射、そして、聖地に入るマナーと心構えを教える。
当然、アンドロメダへ転送される生命体の数は多い。
アンドロメダ銀河の元皇都の巨大さでさえ、その大多数を捌けるわけもなし。
よって、様々な星系へ自動的に再転送され、そこで検疫等を行うことになるのだが……
「さあ、銀河系に入ったら、土産物なんか選んでる暇もないよ!ここにあるのは、はるばる銀河系から直で持ってきた銀河系各種族の星系土産だ。選り取りみどり、ここでなきゃ揃わないような組み合わせもあるんだから、早めに購入したい方々は、こちらの店で購入されることをオススメするよ!さあ、見ていくだけでも結構ですよ!」
商魂たくましい者もいるようだ。
さすがに怪しげな商品は置いてないようで……
「旦那、旦那。ここじゃ細かい内容は言えないんだけどね。銀河系の太陽系で密かに開催されるっていう「こみけ」って聞いたこと無いかな?でかい声じゃ言えないが、裏手にある店で太陽系外での頒布禁止となってるブツがあるんだけどね。興味ないかな?」
とんでもない商品で客の袖を引く客引きもあったものである。
そんなこんなでフロンティア(後のガルガンチュア)が太陽系を出発してから約3万年が過ぎている。
いまだフロンティアが戻る様子もないが、お隣の銀河団から宇宙嵐に巻き込まれてやってきた(救出されたとも言う)客人たちも増えてきて、にぎやかなこと、この上なしの汎銀河文明圏である。