楠見を探して 10
短いですが、一話としてアップ。
次がガルガンチュアの話になりますので、分けるために短くても一話としました。
一方、こちらは当の楠見。
すったもんだの末、なんとか統合政府も立ち上がり、星の中での統一政府化は順調に進んでいる。
「ふぅ……これはこれで大変だな。統合政府から統一政府へ、それでこの星は宇宙文明へと進化して、宇宙への入口を開けることとなる」
楠見は呟く。
現在、統合政府の相談役として何かと政府の統制官たちの相談に乗っていた(統制官とは、過去の国単位と同じ地区に対する大統領や首相のようなものだと思って欲しい)
「少しばかり、最新技術を出しすぎたかな。しかし、中途半端なロケット技術だけじゃ危険だしなぁ……」
楠見は呑気に言うが、エネルギー・物質相互変換炉の技術は普通ではない。
しかし、危険な核反応炉や核融合炉よりはるかに優れてはいるが、核融合のはるか延長線上にある相互変換炉の技術は、この星の現在のテクノロジーでは無理な超未来に実現できるものだった。
この相互変換炉の派生技術である防御シールドもそうだが、相互変換炉を基準として使う前提になっているものが多いため、今、この星のテクノロジーは数百年分は進んでいる。
「やぁ、楠見さん。今回も困ったことになりまして……ご相談に乗っていただきたく」
今、軌道に乗りかけている衛星の開発と開拓についての問題点が書かれた分厚いファイルを持った統制官の一団が楠見に向かい、問いかける。
楠見は、いつものことと、普通に対応していく。
「ここは、微振動対策で。この問題は、そうですね、人間関係の問題だと思われるので少し配置転換すれば大丈夫だと思われます……まあ、これだけやれば後は大した問題にはならないでしょう」
「すごい!さすがは秒殺の楠見と言われるだけのことはある。トラブルシューティングの見事さは、もう芸術の域ですね。もう、長いことトラブルシューティングに携わられている人物としか思えません」
まあ、数万年に渡って銀河単位でトラブルバスターやってれば、こんな惑星単位のトラブルなんてトラブルの内にも入らんよ。
楠見は、そんな風に思いながらも、秒殺の楠見ってのは言い過ぎだと思った。
「これで、滞ってたプロジェクトは順調に行くと思うんですが。軽いトラブルなら、そちらで対処可能だと思われますが、特に重大なトラブルが発生したら、私のところへ連絡いただけば大丈夫でしょう」
統制官たちは、楠見に対し敬服の表情を浮かべ、最敬礼で退出する。
帰っていった統制官たちを見つつ、楠見は独り言……
「あー。これじゃ、俺が地球でやってた仕事と変わらないじゃないか。駄目だよなぁ、やっぱ。この星は、俺がいなくても独り立ちできるようにならなくちゃ。まあ、そのうちにガルガンチュアも俺を探しにやってくるだろうし」
果たして楠見の代わりになるものなどいるのか?
という基本的な疑問はさておいて、まだまだ、楠見が陰で支えてやらないと独り立ちは出来ない最初期の宇宙文明が、ここにある。




