楠見を探して 7
ガルガンチュアのバックアップがない場合、楠見の考えることは闇の部分が多くなります(笑)
楠見の作戦とは?
「ま、この計画が終了しても戦争が終わらないようなら、それはそれで、宇宙文明へ進化する見込みがないってことだけど……過去にも、ごく少数だけど、そういう星はあったからなぁ……それ以上やるなら、俺だけじゃなくて、それこそガルガンチュアとクルー全員で力技になるけれど」
そう、楠見は呟きながら、計画を具体的なものにしていく。
数ヶ月後、楠見と他に百名ほどの、明らかに楠見インダストリーズから内部引き抜きだと思われる少数精鋭の者たちがいる。
「さっそくだが、諸君らには特別任務を与える。ちなみに危険な任務ではあるが、命の危険はまったくないことを予め言っておく。ここで、グループを10人づつに分け、グループごとに行動目標を与えるので、それに向けて頑張ってほしい。先頭から10人づつ、ひと塊になってくれ。それぞれ、任務と目標、そして、最終目的を書いた指令書を渡していくので、頭に叩き込んだら、その場で分かれて行動開始だ……よろしいか?では、君らの最終目的は、このビルに戻ってくることだ、それぞれの締切日までにな。では、行動開始!」
思い思いの敬礼や、挨拶を返しながら、精鋭集団が散っていく。
「最終日には、ここに100人以上の有名人が集まるわけだが……さて、俺も動くとするか……ビッグプロジェクト開始だ!」
楠見は自社ビルの総会長専用室から出て、とある制作会社の事務所へ。
見慣れぬ中年男が来たということで、何かの営業かもと、対応は冷ややか。
楠見は慣れたもので、
「あー、ちょっと、君では対応できないかも知れないね。出来ますって?大丈夫?とりあえず、こんな企画を考えてるんだが……おい、顔色が悪いが大丈夫か?」
企画書を数ページ読んだだけで、最初に出てきた新人くんは青い顔に。
こいつは不味いと出てきた係長、課長も顔色を変え、最終的には企画部部長と課長が担当する。
「すっげぇ!ちなみに……あ、名刺もらってる?楠見さん……え!あの楠見インダストリーズの総会長?!へへぇーっ!」
あわてて土下座を止めさせると、部長も課長も目をキラキラさせて楠見に詰め寄ってくる。
「く、楠見さん!これ、実現すれば過去も現在も、未来にまで名を轟かすメディアの到達点となりますよ!法律的にヤバイことはないんですよね?集合したら、後は問題なし?そうですか。では、次に予算ですが……これくらい?はぁっ!?桁が違う?国家予算じゃあるまいし、そんな予算ならキー局の放送枠を目一杯、一日中買い切ることも可能ですよ。帯なら、そうですねぇ、1年でも2年でも。いっそ、10年くらいは。え?半日で良い?この予算なら簡単です。企画の中身は……司会も、サブも、現地アナも全く問題ありません。ただし、後で問題になるかも……え?それはない?そんなことになったら、自分で自分の首を絞めるようなもの?本当ですな?分かりました……他の制作会社も巻き込み、できれば海外局も巻き込んで、この企画、成功させましょう!で、ですね。最終場面で、結論を述べる役者を誰にするか……え?声優で良い?渋い声より、ちょっと若めの声?ふーむ……セレクションしてみますが……この企画の実行日と言うか、録画日に変更なし?でしたら、各事務所にセレクションするからと声かけときますね。よーし!これまでにない、やりがいのある企画じゃないか!バックアップも万全!これで数字が取れなきゃ、俺たちゃ能無し決定だぞ!さあ、動き出せ!」
ニヤリと笑う楠見。
その笑みの中に、若干、黒いものがあることを、残念ながら制作会社の部長課長コンビは気づかなかった……