楠見を探して 4
また、ガルガンチュアの楠見捜索の日々を。
「どこだ!どこにいるんですか、師匠ぉー!」
楠見が消えてから数十年……
未だ、ガルガンチュアは楠見の探索に力を注いでいた。
あっちの星系で搭載艇が何かを見つけたと報告があれば、あちらの星系へ。
こっちの星団で何か妙な反応があると聞けば、こちらの星団へ。
あまりに広い範囲を探すため、ガルガンチュアは合体を解除し、それぞれにサブマスターとして乗員を一人(船の端末たるアンドロイドはサブマスターになり得ない)配置し、船が機能不全にならないようにしてから、本船と搭載艇を全て引き連れて楠見の捜索へ向かう。
「こちらフロンティアより、各銀河団探査船へ。マスター捜索の進捗状況を」
ガレリア、トリスタン、フィーアより進捗状況の報告と、未だ発見できずとの最終結果が。
「郷、これで、この銀河団の半分以上は捜索済みとなりました。どうします?隣の銀河団へ捜索範囲を広げますか?それとも、この銀河団を徹底的に捜索して後、銀河団を移りますか?サブマスターとして判断して下さい。我々アンドロイドでは、この辺りの判断ができません」
問われた郷は、しばし沈思黙考。
しばらく経って口を開く。
「ここまで長い捜索になるとは、誰も思ってなかったからなぁ……ちょっと考え方を変えて、捜索範囲を広げてみよう。一隻で一つの銀河団を捜索してみる方向へ変えようか。ここは疑似テレポート実験の現場になった銀河団なんで、ここだけは皆で捜索して、ここが捜索終了で師匠が見つからなきゃ、次は一隻づつで一つの銀河団を探索するんだ。時間はかかるだろうが、今の時点で師匠の反応が何もないということは、師匠のいる星の環境に何か起きているか、それとも師匠の力が消えて……しまうことはないだろうから、師匠の力が弱まったと見るべきだろうな。捜索の網の目を小さくして、少しの反応にも関心を持つべきだろう」
「分かりました、適切な回答です、郷。マスターのレベルではないと思われますが、さすがマスターに次ぐ力を持つ存在。しっかりしてきましたね」
「よせやい、フロンティア。師匠だったら、どうするか?どう考えるか?どう動くか?それをいつも考えているだけさ」
あわてて取り繕う郷の姿に、微笑みを浮かべるフロンティアだった。
「ガレリア!武器系統はスタンナー、パラライザー、そして射程の短いレーザー砲のみを許可します!防御については全て許可!目標、宇宙海賊集団!いっけーっ!」
「了解、サブマスター、エッタ。輸送船団の援護と同時に、宇宙海賊集団の殲滅を行う。まかせとけ、非殺傷でやるから」
「え、わ、分かったわ。お願いね、ガレリア」
「さーて……主の不在時に、なーにを勝手に宇宙犯罪なんてやらかしてくれちゃってるのかねぇ……大型搭載挺集団!やっておしまい!」
あっという間に宇宙海賊集団20隻の拿捕と無力化を実行すると、星系軍への通報と輸送船団の保護と修理に奔走するガレリアだった。
ちなみに、中型以下の搭載艇は全て楠見の捜索へ回している。
「トリスタン、我が主の捜索へ主力搭載艇を全て回していますが、なにかトラブルが起きても対処は大丈夫ですか?」
「ああ、大丈夫だ、プロフェッサー。サブマスターとは言え、我が船へマスターやサブマスターが乗り込むのは初となる。よろしくご指導お願いする」
「はい、専門分野ではトリスタンに敵わないかも知れませんが、私は我が主との付き合いが仲間内で一番長いですからね。経験だけは豊富にありますので、何でもアドバイスしますよ」
「では、お聞きしたい……」
「それはですね……」
「ライムさーん!巨大流星群が一星系に衝突する可能性があるからって、それを阻止するのが私だけですかぁ?!大型搭載艇だけでも呼び戻したいんですけれど……」
「自分の大きさ、分かって言ってるのかな、フィーア。あの流星群の最大の物でさえ、あなたの20%ほどの大きさもないんだよ。やればできる、やらなきゃできない!頑張れ、フィーア!」
「大きさの問題じゃないんですけどねぇ、これが。まあ、防御フィールド最大にして、強度も最強、そして、重力子砲で流星群自体の見かけの質量も下げれば対処は可能でしょうが……ええい、やるっきゃないか!」
「……すごい……やればできるじゃないの、フィーア」
「はぁはぁ……もっと褒めてもらっても良いよ、ライムさん」
それぞれ、楠見捜索中であるが、色々ありそうだ。