楠見を探して 2
本格的に、楠見探しが始まります。
銀河団の縁に立つ、4隻の銀河団探査船。
少し変わった卵状に見える銀河団の上下左右(立体ね)に位置し、それぞれの探査範囲をカバーできるように、それぞれの搭載艇群を解き放つ。
「これで、数十年後にでも師匠が確認できれば御の字なんだけどな。太陽一個と同じくらいの出力エネルギーって、もう人間と言うか人類の操れる範囲を超えてると思うんだけどねぇ……フロンティア、どう?師匠のテレパシーの強度だと例え意識を失っていたとしても半径数百光年くらいで搭載艇のセンサーで見つけられるはずだよね?」
「そうですね……郷の言うとおりなんですが、未だマスターのテレパシーは確認できません。私の捜索範囲は、およそ、この銀河団の半分くらいですので、未だその一割も捜索していない時点で早急に判断は出来ないのですが。まあ、マスターですから銀河単位でも数日で捜索できるのは速いんですが。銀河団クラスでの捜索ですから時間がかかるのは仕方がないでしょう」
「そうかい……仕方がないのは理解してるんだけどな。こういう事態になると、俺の力不足を嫌ってほど感じるよ。師匠なら、堂々とした態度で詳細な計画を展開するんだろうがなぁ……あ、それとも管理者たちに連絡とって情報もらうとか……本当にやりそうだな、師匠なら」
はぁ……
ため息をつく郷。
焦っても何もならない事を理解しているが、それでも何かせずにはいられない。
ちなみに、エッタやライム、プロフェッサーは、それぞれ別の船にいる。
郷がフロンティアにいるのは、フロンティアが一番大きくて司令船となっているから。
銀河団探査船は、それぞれ単独では能力が制限されてしまうため、仮でもマスターとなる者がいないとダメだからという理由で、例えプロフェッサーというアンドロイドであろうと、仮マスターとして登録すれば能力制限は一部を除いて解除される(流石に主砲とかは楠見がいないとダメ)
「時間はあるんだよなぁ……確かに。無限の距離を跳んだわけじゃないから、虱潰しで当たれば、いつかは当たるわけだ、確率的に。それにしてもなぁ……フロンティアたちも同じなんだろうが、何か、心の中の大切な拠り所みたいなものが突然に失われたような気がするんだよなぁ……」
「そうですね、郷。私の論理回路は、絶対に生きていて探し出すだけなんだと理解はしているのですが、どうもマスターの声をここまで長いこと聞かないと……何というのでしょうか、これを、寂しい、というのでしょうかね?」
「フロンティア、お前、師匠に感化されてるのは分かってたが、本当に人間的になってるな。もう、機械生命体と同じようなレベルで生命体と言っても良いんじゃないか」
「いえいえ、まだまだです。マスターの思考に追いつけないとか、理解できない事例が、まだまだ多いですね。ああ、本当に我々ガルガンチュアの船体そのものが生命体にステップアップできるなら、この小さな入れ物に凝縮された形でも何の不満もないのですが……」
この告白を聞いて、少し引いていた郷。
師匠、楠見は、ここまで超大型宇宙船の望みを引き出すのか。
師匠は、どこまで関わった者たちを変化させていくのだろうか……
「ふっ、今頃、跳ばされた先の星で、色々なトラブルを解決してたりしてな……それが見えるようだ、なあ、フロンティア」
「そう、そうでしょうね。たった一人、宇宙船も、仲間も無くとも、マスターは行く先々で、あらゆるトラブルを解決していくのでしょうね……そうと分かっているなら、我々は少しでも速く、マスターを見つける作業を続けるだけです。孤独なマスターに手を貸すべく、我々はあらゆる手を尽くしてみるべきでしょう」
「お、おう。そうだな、そのとおりだ。師匠を一人で放っておくなんざ、危なすぎて何が飛び出すか分かったもんじゃないからな」
互いの顔を見つめ、ニヤリと笑う郷とフロンティアだった。