大マゼラン雲 風雲記 その3
今日は、短いものになります。
まあ、宗教的な組織を徹底的に壊滅させようって話ですからね。
短編の積み重ねみたいになります。
さて、辺境(っつーか「教会」の勢力圏においての辺境ね)宙域のクリーンアップは終了したね。
次は中央部の星域を残して、周辺部のお掃除お掃除……
俺の目の前に、やたらめったらケバケバしい色と巨大さで周辺の住環境を台無しにしている建物がある。
言わずと知れた「教会」だ。
ただし辺境星域と違い、周辺部宙域では、さすがに人口と貿易額が段違いなのか、明らかに成金趣味丸出しという品のなさ爆発の建物となっている。
さて、辺境部とは違って、こんな建物を建てるくらいだから政治や経済と結びついてる強さが段違いだよね、こりゃぁ……
さて!
こういう場合は、政界や経済界に潜り込んでるライムやエッタに、先行工作をしてもらってるんだ、これが。
政界では警察組織と合同で賄賂や恐喝、強請り、ショバ代など不法な事を全て裏から暴き出し(エッタとライムのコンビに不可能はない。ライムには相手の表層意識を読みとる技術があり、エッタは……隠れた得意技が見つかった。不滅の精神体から生まれた生体端末らしく、ものすごい推理力があったのだ。うっかり一言漏らせば、その一言から二重帳簿の隠し場所を推理し、黙っていれば誘導尋問で表層意識に隠し場所を思い出させ……尋問ではなく普通に1時間も会話していれば相手の裏の裏まで読みつくす!なんてチートな奴だろう。ちょっとエッタとの付き合い方、考えなおそうかな?)
あちらこちらで関連団体への捜査や会計監査が強制的に行われていた。
これが、わずか一週間もかからずに、ってんだから、凄いよね。
まあ、そんなこんなで政治的、経済的にやせ細ってしまった「教会」を最後のチェックメイトの一手を進めるために俺がやって来てるって事だ。
「「教会」の関係者と当事者たちよ、耳を澄ませて、よく聞くが良い!お前たちの行い、神を題目に暴力と金で民衆を押さえつけて来たこと、今すぐに懺悔せよ!そうしなければ、この我が言葉が終わると共に、この教会にいるもの、隠れている者も全てが白日のもとに晒される事となるだろう!」
あ、チンピラに混じって、教会の当事者たちも出てきたな。
なるほど、中央に近くなってきたから100人以上もいるわ、いるわ……
さて、と。
「出てきたな、ウジ虫、ゴキブリ、毒虫共が。神の手と罰が怖くなければ、逆らってみるか?」
煽ってみたら、おーおー、怒り心頭だね。
「てめえ、いい気になってるんじゃねーぞ!どこかに仲間でもいるんじゃないかと思ったら、たった一人でノコノコ出てきやがって。叩き殺されてーのか、てめえは!」
「はっはっはっは。神に守られている私が、おのれらウジ虫集団になど恐れを抱くものか!今から神の罰を行使する!その前に、建物の中には今、誰もいないな?隠れている者がいるなら今が生き延びるチャンスだぞ?」
「おう!てめーの相手するために全員が出てきてらあ!覚悟しやがれ、この大馬鹿野郎!」
「それは良かった。では、神の罰が下る、今こそ!」
俺が手を上げ、それを卸した瞬間。
まばゆい光の束が空より降り注ぎ、ちょうど「教会」の建物を包み込んだ。
数秒後「教会」の建物は地下を含めて、何も存在しなくなっていた。
すっぽりと切り取られたような区画が、そこにさっきまで建物があったことを示している。
しかし、地面があっても、そこに建物の痕跡すら無い。
100人を超える「教会」の関係者と当事者達は腰が抜けたのか、へなへなとその場に崩れ落ちる。
あまりの光景に思考がついて行けないようだ。
俺は、その集団に思考停止という安らぎを与えてやる。
もう一度、右手を上げて、それを下ろすと、集団行動でもあるかのように、バタバタと気を失い、本当に地面に倒れていく。
今回も、おっとり刀で警察機構が駆けつけてくるが、いつものこと。
俺は一切の手出しをしてないので、罪に問われることはない。
メディアでは「神の奇跡」とか尾ひれをつけて大げさになっているようではある(建物の消失現象のこと)
まあ、あれは、ちょっとしたフロンティアの実験を兼ねたサイエンスマジックだ、実は。
ビーム転送の理論を思いついたというフロンティア(どっかの文明に、そういう古代技術の図版が残っていたらしい)だが、まさか生体実験はできないので生体反応のない建物という大きなもので実験を行ったのだ。
まあ、実験は成功したんだが問題も残った。
建物のビーム転送は成功したのだが建物自体が表裏反転していたのだ、それも4次元的に。
3次元としては異常なかったのだが、入口開けて入ったら裏庭へ直行してたとか、リビングへ行くドア開けると屋根裏部屋に出るとか、複雑怪奇に入り組んだ空間になってしまった。
いくらなんでも、これでは恐ろしくて生体実験は出来ない。
先は長いな、フロンティア……




