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ようこそ大宇宙へ! 超古代の巨大宇宙船で宇宙を征く  作者: 稲葉小僧
超銀河団を征くトラブルバスター
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エスパーたちの銀河 8

辺境のゴウさんの話は、少し置いておいて……

今回は中央教会にいる聖女様の話です。


ロックフォール司祭のことについて記すのは一旦、置いておいて、ここでは中央教会のことを記そう。

ガルガンチュア教団、中央教会では、今日も救いを求める人々で長蛇の列が出来ていた。


「聖女様、今日も朝から現世の救いを求める者たちで溢れております。どうぞ、救いをお与えくださいませ」


大司祭に呼びかけられ、早朝の4時近くで起こされる。

昨日は、夜遅くまで民衆の相手をしていた聖女様は、うーん、と伸びをして、その眠い目を開けて、ベッドから起きようとする。


「分かりました、大司祭。私の手が必要ということですね。少し待ってください、今から着替えますので」


このところ、あまり眠りの時間をとれていない聖女は、とても他人に見せられない大きな欠伸を一つすると、ごそごそとベッドから起き上がり、着替えと洗面、朝のルーティンを行う。


「ふわぁーあ!仕方がないんだけど、これだけ忙しいと、ゴウさんが羨ましいわね。あっちは辺境で、こっちと違って仕事が少ないんだろうなぁ……ああ、羨ましい……」


30分後、疲れが抜けてない表情で、それでも精一杯の笑顔を作りつつ、聖女が自室から出てくる。

付添人やメイド、従者や護衛を引き連れて、聖女は中央教会の主たる主教に拝謁する。


「おはようございます、主教様。今日も主神・ガルガンチュアと、その使い・クスミ様の御手が、あまねく宇宙の星々を救い上げますように……」


「おはよう、聖女殿。主神・ガルガンチュアと、その使い・クスミ様の御手が、今日も救いの手を上げてくださいますように……」


主教と聖女の挨拶。

どうやら、教会内部では、このようにするのが礼儀らしい。

教会を出てしまえば、このような挨拶はしないようだが。


簡単な朝食が終わると、主教は奥に引っ込む(書類仕事が大変なのだ、実に)

聖女の仕事は、これからが本番、激務。


「では、癒やしを待つ人々の元へ向かいましょう。もう、早朝からお待ちいただいている方たちもいるでしょうから」


中央教会の祈り・癒やしの場へと移動する聖女たち。


「聖女様……これは昨日よりも長い行列になっているかと……」


従者の一人が絶望的な声を上げる。

聖女は、疲れを振り払うように、


「癒やしを待つ人々です。さあ、万能薬で治る方々だけではありませんよ、癒やしの儀式が必要な方も多いはず。行きますよ!」


中央教会の祈り・癒やしの場へ現れる聖女。

その姿すら癒やしになるだろうと、人々の声が大歓声として聞こえる。


「さあ、先頭の方から、お部屋へ入れてくださいね。私の儀式が必要な方と、万能薬で大丈夫な方を分けますから、お薬だけで大丈夫な方は、お隣りの祈りの部屋へ」


ぞろぞろと、行列が動き出す。

聖女の従者たちの中には、医師免許を持っている者もいたりするので、薬で大丈夫だと判断されれば別の部屋へ回されて、万能薬を渡されて終わり。

厄介なのは、心の病の方だ。


「……ということで、うちの旦那が暴力振るうんです。もう、精神的にもポロボロで、身体も痣ばかりで……」


重い話である。


「そうですか。分かりました……そのDV夫と別れたいのであれば教会が引き受けます。貴女の身を離婚が成立するまで修道女扱いで教会が保護して、生活と生命を守りましょう」


そこまで言っていただけるのでしたら……ということで、即席の信者として修道女が一人誕生。

後日、DV夫が殴り込んできたが、鍵もかかっていない中央教会入口で立ち尽くすこととなる。


「な、なんで俺だけが、ここから入れねーんだよ!この教会は誰でも入れるんじゃなかったのか?!俺の女房、返しやがれ!」


見えない障壁でもあるのか、他の人達は普通に教会へ出入りしているのに、その男だけが、どうやっても教会へ入れない。


万能薬でも治せそうもない特殊な病や、ひどい痣や火傷の跡を持つ人々の場合……


「まあ、ようこそガルガンチュア教団の教会へ。救いの手は、いつでも貴方達を待っています。では、ここにいる方々、まとめて癒やします……そぉーれ!」


聖女が、その長い袖のついた服を天に向かって振るようにすると、長い間の痛みは和らぎ、少しだけど痣や火傷跡が小さくなったと感じる。


「あまり回数を重ねても治療は進みません。一日一回、これを一月も続ければ、どんな痣も火傷跡も消えます。治らなかった方は今まで皆無ですので、ご安心ください」


数百人はいたと思われる行列は、だんだんと小さくなり、最後の一人となる。

母の病が、と嘆く少女に万能薬を渡し、これでも治らないようなら教会へ母親と来るように言い聞かせ、聖女の仕事は終了する。


「はぁ……今日もお昼は抜きでしたか……私はダイエットとは無縁な身体なんで、夕食は豪華にしましょうか。皆様も、お疲れでしょう。明日のこともありますので、今日はここまで。お部屋へ引き上げますよ」


聖女は、自分の部屋へ向かう。


〈ゴウさん、そちらの様子はいかがですか?ご主人様は、いつになったら、こちらへ来られるんでしょうかね?〉


〈エッタ、久しぶりだね。師匠は、まだまだトラブル対応が終わらないんじゃないかな。あっちの銀河は、こっちと違ってドンパチが激しかったようだし、おまけに帝国制と連邦制が、がっぷり4つで戦ってたからなぁ……弱小国家の星系なら他にもいっぱいあるって言ってたし……まだまだ二人の足場固めは終わらないと思うよ〉


はぁ……とため息をついた聖女に、声をかけようとした従者の一人は他の者に止められる。


「やめとけ。聖女様が、心ここにあらずのような表情になる時は神と話されている時なんだそうだ。邪魔をしちゃいけない」


エッタは聖女ごっこを続けるのが、ここまで辛いとは思っていなかった。

なまじテレパシー能力が強いので自分で意識しなくても周りの人たちの感情が飛び込んでくる時がある。

通常はブロックをかけているので日常で悩まされる事はないが気を抜くと大変な事になる。

今日もDV夫に日常的に殴られ、罵倒される女性の生の感情をぶつけられて、精神的に大ダメージを負ってしまう。


「ご主人様、いつもこんな重荷に耐えられてたんですね。それでも笑顔を絶やさないご主人様、見習わなくては!」


寝る前の祈りの代わりに、こんな事を思いながら聖女エッタは床につくのだった。


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