銀河最終戦争 その六
再生作業の始まりです。
短いですが、話のキリが良いので、これで一話とします。
それから数週間後……
フィーアの主砲性能調整と、フロンティアとの協調作業は準備完了となった。
今回、ガレリアとトリスタンは実作業には加わらず、エネルギー補給と作業全体の監督に回る。
ガルガンチュアがやる作業の中で、あまりに大規模な作業の場合は、こんな風に作業分担する。
これができるのは銀河団宇宙船シリーズの中でもガルガンチュアだけだろう(後の6隻が合体してなければの話だが)
それにしても、報告として集まってくる搭載艇からのデータを見る限り、この銀河は死滅している。
容赦のない多量のガンマ線を発生させるミサイルと、こちらも容赦なしの超高熱を浴びせかける太陽エネルギー収束砲。
こんなものを知性体として自立されてもいないロボット艦に積めば、そりゃ、この結果となるのは当然だろう。
「フロンティア、もう搭載艇からのデータは充分に集まった。放った搭載艇をすべて回収し、その後、銀河再生プランを実行する」
「はい、マスター。では、ガルガンチュア搭載艇、回収!帰還命令を発信しましたので、最大1週間後には全機が帰還すると推察します」
「あ、師匠。アイデアがあるのですが、どうでしょう?搭載艇を少し銀河内部に残しておいて、重力レンズで観察対象にならない星区や惑星の情報、その他様々なトラブル報告に備えるというのは?」
郷が意見してくる。
楠見だけでは見落としがあるというのは、こういうことだ。
「いい意見だな、郷。数百機ばかし小型と超小型搭載艇を残して、細かな観察対象星区に派遣しようか。じゃあ、フロンティアだけじゃなく、ガルガンチュア構成の4隻それぞれで100機づつ出して観察部隊を構成するほうが良いな。ガレリア、トリスタンも協力してくれ」
ガレリア、トリスタンも快諾してくれたので、数週間後には銀河内に残す観察部隊の編成も完了する。
では……準備は完了、実行だ。
「ガルガンチュア、予定位置へ移動。その後、フロンティアとフィーアの連携により、この銀河をフロンティアの時空凍結砲で包み、フィーアの重力砲で開けた極小穴より重力レンズの応用で観察窓を作る。銀河内に残る搭載艇群の観察部隊の定期報告も抜かり無く。生命体の再生が自然に行われるのを、こちらは加速された地点から見るようなもの。見落としが無いとは言えないが、まあ、予想では銀河内部時間で数億年も経てば脊椎動物の発生までは行くと思う。そこから知性体が生まれ、星の世界へ行けるかどうかは運次第だが……では、銀河再生計画、スタートだ!」
ガルガンチュアは銀河近傍空間を離れ、隣の銀河近傍空間へと跳ぶ。
目的ポイントへ到着すると、重力アンカーを使い、しっかりとガルガンチュア本体を固定する。
ここで手を抜くと、目標がバカでかいとは言うものの、射線のズレが大きくなりすぎてしまい、最悪の場合、目標銀河の半分ほどが射線から外れて時空間凍結砲の射程範囲外になってしまう可能性がある。
宇宙船が主砲の発射台そのものなので、射軸がズレるのが最大の誤射となるから、それを回避するには確実に船体を宇宙空間そのものへ固定するしか無い……
まあ、そんなことは物理的に不可能なんだが(今現在でも拡大しつつある三次元宇宙は、基本的に不安定な足場しか構築できない。それは宇宙の基本的な構造とも言える)
重力アンカーは目標に対して常に一定の角度と射程を維持することを目標とするため、擬似的には目標銀河とガルガンチュアは常に同じ角度と同じ距離を保っている。
「マスター、フロンティア主砲、時空凍結砲のエネルギーは最大となりました」
「チーフ、フィーア主砲、重力子砲のエネルギーも最大です。重力レンズ効果の最大地点も計算済みです」
「我が主、プラン実行の準備完了です。フロンティアとフィーアの主砲発射トリガーは、我が主の手に移りました……」
「ありがとう、プロフェッサー。では……銀河再生計画、発動だ!時空間凍結砲、及び、重力子砲、最大エネルギーにて、発射!」
暗黒エネルギーの塊と、目には見えないが最大一万Gという重力子の塊は、それぞれの目標へ向かってひた走る……
数日後、目標銀河は俺達の時空間から切り離され、数百万倍のスピードで流れることとなる。
それを観測できるのは、時空間凍結の泡に開いた極小の穴から漏れる情報を重力レンズにて拡大した映像と、定期的に穴の向こうからもたらされるガルガンチュア搭載艇部隊の報告通信のみ。
巨大なガルガンチュアとはいえ、何も関与できるわけではない。
まあ、生命発生進化を眺めるんだ。
気長にやろう。