銀河最終戦争 その五
実際の再生作業にかかるには、もう少し時間がかかりそうです。
もう少し待ってね(笑)
最終戦争で対立してる種族と、その補助種族や友好種族が全滅したって銀河へ到着。
例によって、超小型と小型搭載艇を、今回はガルガンチュアの可動可能全数の半分、情報収集へと回す。
これは、もしかしたら生き残りの種族もあるかも?
という可能性があるため。
それから半年ばかし後。
帰還した搭載艇たちには、この銀河で生き残っている種族は無いと断定できるだけの情報をもたらしてくれた(非常に残念なことだ)。
ガレリアの搭載艇で地中捜索が可能なものもけっこうな数があったので、可能な限りで地底都市への避難をした種族で生き残りがないかと思っていたが……見つからなかった。
徹底的に殺し合ったようだな、これは。
ガレリアからの報告では、星系の一割ほどで地底都市や海底都市に避難した痕跡が見つかったらしいが、そこに見られたのは化石化した骨や焦土化した都市の跡。
どういうレベルの憎しみと怒りが高まれば、ここまで徹底的に相手を殲滅しようと思うかね?
とてもじゃないが、俺や他のガルガンチュアクルーにも理解不能だ。
あ、生命体が何も無いということじゃないのは確認済みだ(お察しの通り、プラズマ生命体は生存していた。彼らに対してはガンマ線も影響は与えられなかったようで)
「意見を良いでしょうか?マスター」
「あ、ああ、聞かせてくれ。ガルガンチュアとして4体の人工頭脳の検討会が終了して推論という形での結論が出たんだろ?代表してフロンティアが語ってくれれば良いよ」
その推論、というか結論に近いもの、そいつを聞いて、遥かな昔に起きた事件と哀しい戦争に、俺達はやるせない思いを抱く。
「少しづつですが、遥か昔に起きた絶滅戦争と、その理由を書き残した石碑があっちこっちの星系に残っていたため、それらを統合して造った話となります……まずは、この銀河には、はるか昔に強大で、ほぼ同じくらいの領土をもつ、相反する2つの政治形態をもつ銀河帝国と銀河連邦がありました……」
2つの政治形態が相容れないものだったため、お互いの領土問題もはらんだ帝国と連邦の戦いが、次第に大戦争となり、周囲の補助種族や友好種族まで巻き込んだ銀河を2つに割っての最終戦争にまで発展してしまったこと。
そして、相手への憎しみが高まりすぎて、ついに互いの最終兵器を量産してロボット艦隊に積んだ絶滅艦隊を作り上げてしまい、そこからは止めようが無くなり、ついには銀河全体に生きているものがいなくなったという……
「はぁ……戦争がバカと阿呆の論理だというのは理解していたが、それ以上だな、この銀河にいた生命体たちの馬鹿さ加減は。自分が死んだ後にも、相手の種族の絶滅を行うというロボット艦隊を作り上げるというのは何と言うか……俺達の存在とは究極の反対方向にある生命体だね。しかし、そうだとするならば。今度こそ、互いに信頼し、友好的に付き合うって生命体を、この銀河に生みだす手伝いをしたいと思うんだが」
「あのー、師匠?言いたいことは理解できるんですが……いくらなんでも、ここには過去にいた不定形生命体の「彼」ことジェシーもいませんが。同じ不定形生命体でライムさんが代わりに?」
「何を言い出すのかな?郷くん。まあ、あの銀河で使った方法も使えないこともないが……安心しろ、ライム。お前に分裂増殖やれとは言わないから。今回は、ちょっと試してみたい方法があるんだ……」
「私を見て、何を考えているんですか?マスター。いくら私のもつテクノロジーが超の付くほどのレベルにあるとしても、その技術でタイムトラベルなど不可能ですよ。時間軸を遡ったり、数秒すら過去に戻ったりも無理ですよ。この宇宙に時間定数がある以上、超銀河団を越えようが時間に縛られる存在であることに間違いありませんから」
まあ、フロンティアの言うことは正しい。
俺の経験上、宇宙の管理者達の如き超越者のレベルなら、タイムトラベルも可能じゃないかとは思うが、今の時点で管理者が何も介入してないということは、彼らにとり、時間を調節してまで救う生命体ではなかったと思われる。
しかし、俺の考えている方法は、過去に遡るような真似をすることじゃない。
「フロンティア、時間旅行みたいなことは無理でも、お前の主砲なら時間を相対的に停止させることまでは可能だろ?以前にやった、銀河まるごと時空間凍結砲で包んで、銀河の中の相対時間を進めるわけだ……そうすると……自然発生的に各惑星で生命体の発生と進化が観測できるわけ。あまりガルガンチュアの手を入れるよりも、この方が良いと思わないか?」
「マスター……物凄い発想だとは思いますが、それでは生命発生と進化が逐次観測できませんよ。その点は、どうするんですか?」
「今までは、双方ともに互いに観測も干渉も不可能なのが欠点だったんだがなぁ……そこで考えたのが、フィーアの主砲、グラビトン砲の活用だ。重力レンズの応用で、フロンティアの時空間凍結砲で作られた、銀河を包む泡に小さな穴を空けられないか?ということ。フィーア、これって可能か?」
「チーフ自らの久々の依頼ですから、うーん……主砲全力発射でマイクロブラックホール作るよりも難しそうだけど、ちょっと計算してみるね。でも、少し主砲の発射方法を工夫するだけでいけると思うよ」
「そこまで急がなくても良いから、着実に、確実にやってくれ。ガルガンチュア構成の4隻共に主砲がとてつもない威力なんで、武器以外の副次効果を期待するには時間がかかるのは覚悟してるよ」
今回は、フロンティアとフィーアのコンビでトラブル解決を目指すこととなりそうだ。




