銀河最終戦争 その三
三話目で、見事に最終戦争は終わり、死だけが漂う銀河となりました。
次話でガルガンチュアと楠見の登場です。
遅いけどね(笑)
最悪の未来が見えた時、双方の政府と民衆に、それは甘美な未来と見えた。
「とうとう、殲滅兵器の量産化に成功しました!我らの勝利と敵の殲滅が確約された今、局地戦での勝利や敗北に意味はありません。今から一年後、殲滅兵器を積んだ大ロボット艦隊をもってして、広大である敵勢力の全てを焼き尽くし、生命の影すら見えぬ過去の文明と化すように、カーペットをめくりながら害虫の巣を退治していくように、敵勢力を根絶、殲滅していくこととなるでしょう!」
ほぼ同じ文言を、帝国皇帝と連邦大統領が、ほぼ同時期に発した。
あまりに広い文明圏であり、それぞれの民も多いため、敵の主張と味方の主張を同時に聞くなどということもできず(敵の電波や通信は双方とも翼賛メディアばかりのため、ブロックしていた……)、互いが互いの質の悪いパロディのようなものであることも分からずに、互いの敵の殲滅へと、まっしぐらに突き進んでいく。
一年後、壮大なる壮行会(ロボット艦ばかりだが、最終指令つまり「敵を殲滅せよ!」という命令はロボット司令官には下せないので、双方の最高司令官、皇帝と大統領が下す)が催され、これで安心して帝国も連邦も、お互いの敵がいなくなると一安心。
しかし、壮行会から数ヶ月後。
ここは、連邦と帝国が数日前まで最前線として戦っていた星系のいくつか。
不思議なことに、ほぼ同時に帝国軍も連邦軍も兵や艦隊を当該星系より引き上げる。
「和平条約が結ばれたか、それとも休戦して交渉が始まるのか……」
一安心して、これで元の生活に戻れるかと期待していた矢先。
「司令!見たこともない大艦隊が我が星系に侵入して来ます!」
それは生命体の乗艦していないロボット艦隊。
ロボット頭脳には感情も知性もなく、ただただ命令を実行する半知性のようなものがあるだけ。
「敵勢力があれば、それを殲滅せよ。敵が抵抗するなら、それも殲滅。敵に味方するものあれば、それも殲滅対象だ」
つまりはロボット艦隊に敵と認識されれば容赦のない殲滅攻撃の対象となるだけ。
絨毯爆撃のように、片や超ガンマ線ミサイルの雨を星系内へ際限なしに打ち込み、片や自星系の太陽エネルギーを数百万倍に収束した熱線として星系内のありとあらゆる星へ浴びせかける。
当然、星系軍にも宇宙船はあり、抵抗勢力は存在した。
だが、そんなものは超ガンマ線ミサイルや太陽ビーム収束砲の敵ではない。
瞬時にして民間宇宙船団も宇宙軍も殲滅され、跳躍航法を起動できたのは1%にも満たない。
その、かろうじて逃げ出せたごく少数の軍艦や民間宇宙船も、自軍勢力の別星系に立ち寄ると……
そこに見る別の地獄絵図。
故郷は、こうして無人となったのかと思えるように、ミサイルは死人の山を作り、ビーム砲は焼け焦げ跡のみを残し、双方の攻撃後に生命体など無く、動くものは風くらい(ビーム砲では全てを焼き尽くしているため、風で動くような紙切れ一つ無い)
広大なる勢力を持つ2つの文明圏、帝国と連邦は、それでも数百年は殲滅されない。
殲滅艦隊を造り出し、それを敵に向かって放ってしまった愚かさを、実は帝国も連邦も数十年後には知っていた。
知ってはいたが、もはや、その殲滅命令の取り消しを行うのは現実的に無理。
その理由。
お互いの首都星が互いの殲滅艦隊により、最優先の攻撃目標としてセットされ、初撃の次に攻撃されて殲滅。
命令を下した皇帝も大統領も殲滅された中に入っていたため、もう命令の取り消しができる生命体はいなくなったためだ。
百年後、連邦も帝国も互いに手を取り合っていた。
もう、両勢力の生き残り全てを合わせても1億人もいない。
主義主張が違えども手を取り合わなければ生きのびることさえ難しくなっている現在、昔は敵でも今は同志。
銀河の片隅で、細々と小さな星系数個で小さな星間文明を営んでいたが、そこへ久々に獲物を見つけたロボット艦隊が!
あっちでは超ガンマ線ミサイルが成層圏の更に上から雨のように降ってくる。
こっちでは容赦のない超高熱ビームが、瞬時にビルも、地下の退避壕すらも焼き尽くして、無人の星と化す。
逃げるしか無い人々は、たとえ逃げ道がなくとも、なんとかして眼の前の死から逃げようと足掻く。
宇宙軍の兵士たちは、民間宇宙船を一隻でも逃がす余裕を作るため、必死になって戦う。
最後の戦いとなった、最終的に数万人しかいなくなった、たった一つの星には、もう戦うための宇宙軍も、兵器も無かった。
人々は祈るように死んでいくか、焼かれていく。
生命体の全滅を確認した双方の殲滅艦隊は、今度は敵の認識を変える。
超ガンマ線ミサイル艦隊は太陽ビーム収束艦隊を、逆も同様だが、それぞれのロボット艦隊が敵だと認識。
互いの必殺武器を放つ!
超ガンマ線がロボットに効くかどうかは知らないが、その爆発力は艦を貫くに充分な威力。
かたや太陽ビーム収束砲は宇宙艦など問題なく融解させる。
その双方が相打ちとなるのに一時間もかからなかった……
ここに、銀河を二分して栄華を誇った二大文明は、何も残さず終焉を迎えた。
未来へ残すものも、そして、その文明が未来へ繋ぐべき何物も残さず、互いが互いを食い合って消滅するかのように、その銀河は死の銀河となる……