銀河のプロムナード クスミという名の男 2
今回は短いですが、現場へ突入する寸前まで。
アクションは次回に!(笑)
打ち合わせとブリーフィングは順調に進み、情報共有も終わる。
「新入り、クスミとか言ったか?得意分野は?情報システムへの潜りが得意なやつが欲しかったんだがな」
中年刑事が、クスミに質問する。
「まあ、情報システムへの侵入もできますけどね、宇宙軍で徹底的にやられましたんで。でも、得意分野は、と言われると、やっぱり格闘かなぁ……巨木の一本や二本は倒せますけど」
おおー、こいつは頼もしい!
と言う声が、あちこちから。
中年刑事は、
「力ばかりに頼ると、いつか、しっぺ返しを食らうぞ。憶えておけよ、勝ったと思う時が一番の弱点なんだ」
「あ、それは先生に叩き込まれました。先生と言っても、もう一人の俺、のような先生ですが。いやー、鬼というのは、ああいった人を言うんですかね?最後の一発を決めるときに隙が出来るとか、勝ったと思った時に負けるとか、様々な教えを受けましたよ」
「ほぅ……素晴らしい先生に出会ったな。闘いの極意を極めている人間だろう。この俺も格闘界に詳しいところだが、寡聞にして、お前の先生のような格闘家ってのは聞いたことがないんだが」
「ええ、弟子は俺だけですから……この星じゃ……」
後で、ぼそっと呟いた一言は、中年刑事には聞こえなかったようだ。
それ以降は普通に定時まで業務を行い、久々の定時退社ということで捜査班のほとんどが退庁する。
部長が定時退庁するのはもちろんだが、それ以降は各自が少グループで集まる手配になっている。
あっちの路地で数人、こっちの大通りに数人、駅からやってくる集まりもある。
散らばっていた少グループは、とある小さなビルに集まる。
ここは、捜査のために別会社名義で借りているビルで突発的な犯罪や事故に関しては使わないが、通常は小規模な民間企業として雇っている社員もいたりする。
こういうことが可能なのは、国を超える権限を持つからだろう。
「さて、全員、いるな。ここで準備を行い、夜半すぎに当該ビルへガサ入れを行う。小型の銃や催涙ガス、ともかくスーツに隠せるものや、アタッシュケースに入るようなものは、ここで入れていけ。新人、お前はどうする?」
指名されたクスミは、
「いえ、何も持たない武術なんで、素手だけで大丈夫です。あ、バイクのヘルメットだけは被りたいですね。一応、形状は、こういうものなんですが」
取り出したヘルメットは、小さなハーフサイズヘルメットと呼ばれるもの。
「あれ?お前、かなり大型のバイクに乗ってなかったか?そんな小さなヘルメットで大丈夫か?」
心配する中年刑事に向かい、クスミが、
「ああ、大丈夫です。こいつ、ある程度、大きくなるんで。ボタン一つでフルフェイスにもジェットにも、こんなハーフサイズにもなるんで」
「へー、便利になったもんだなぁ。俺の若い頃は、でっかいヘルメットが邪魔でなぁ……」
と、昔の話に一時、花が咲く。
「さて……時間だ。各人、用意は十分だな?行くぞ。かなり抵抗されるだろうが、構わん。死ぬ一歩手前なら大丈夫と、上からお墨付きも貰ってるんで、違法カジノ、叩き潰すぞ!」
応!
という声の元、散開して少グループごとに違法カジノのビルへ向かう。




