ゆいこのトライアングル・レッスン(仮) その5
謎が、謎を呼ぶ……
「問題は、私達が何故、何ゆえに間違った目標を攻撃しちゃったのかということよね」
中佐との面会で再開した3人。
たくみ、ひろしとは死に目にも会えないと思っていた隊長、ゆいこは神の裁量に感謝し、他の二人は憮然としている。
「そういえば、結局、あの巨大要塞って無人だったんでしょ。あなた達と分かれて一生懸命に走ってたら追撃部隊に発見してもらって私は救助されたんだけど、たくみとひろし、どうやって救助されたの?」
素朴に質問を投げかける、ゆいこ。
「ああ、そのことか。いやまあ実際のところ、俺もひろしも要塞攻撃が成功してノイズが綺麗サッパリ無くなった時には、これで死んでも良いと覚悟したんだけどね。いつまで経っても敵からの攻撃もなければ、俺達を探しに来るような様子すら無い……これは変だと、ひろしが言うもんだから」
「……後は俺が。たくみに戦果報告用のデータを拾ってきてもらって、その後は味方との合流を目指して撤退。で、歩いてる途中で追撃で敵基地の攻撃に成功したと思われる一隊と遭遇し、帰還するってんで隊に合流させてもらったということ。ベースに到着したら、隊長と離れ離れにさせられて、ようやく会えたのが、さきほどの中佐殿との面会の場。俺達も苦労したんだって、ゆいこ隊長」
3者とも同様な境遇だなと確認後、ゆいこから。
「それにしても中佐、なんで怒ってたのかしらね?成果を上げたんだから、それは褒めてくれても良いんじゃないかな?」
お気楽、ゆいこの発言に、ため息まじりの、たくみ。
「はあ……それはね、ゆいこ。俺達が命令違反と大戦果を両方出してしまったからだよ」
ひろしも、それに続いて、
「その通り。命令違反だけなら、いつもの通りに俺達を罰すればいいだけ。まあ、罰しようにも、ゆいこは命令違反を犯してないし俺達は降格の極みまで来てる。後は銃殺になるくらいか……それよりも中佐が頭を痛めてるのは、あの巨大要塞、に見せかけたハリボテの妨害電波発生装置設備だろうな。あれを造った生命体は、あれほどの規模の建設物に見張りすら置いていなかった……これが何を意味するか分かるか?」
「いいえ、私には理解できません」
間があいた後、きっぱりと、ゆいこが発言。
思わず力が抜けそうになる、たくみとひろし。
「そ、そうか……じゃあ、ゆいこにも分かるように話そう。あの巨大無人要塞を造った何者かは、この星にいるのは間違いないだろう。じゃあ、俺達にも、敵勢力にも接触してこないのは、どういうことだと思う?妨害電波なんて発射されて、両方の勢力が怒らないわけないよな?いたずらと言うには、あまりにリスクの多い登場の仕方じゃないか?」
「えーと……そう、私が考えるに第3の勢力が出てきたってことよね。我々にも敵にも味方はしないけど、こちらからも敵勢力からも攻撃されるのは良い……あれ?何か変じゃない?」
「ようやく理解したか、戦大好き乙女が。そう、両方に対する明確な攻撃意思はないが友好的に付き合う気もありませんよって宣告のようなものだと思うんだよ、俺は。たくみ、どう思う?」
ひろしから質問を振られた、たくみ。
「うーん……正直に言うと、よくわからん。この第3勢力、どんな力を持って、どんな目的があるのやら……だいたい、どんな生命体なんだろうね?それすら理解できてない段階じゃぁね」
それじゃぁ!
ということで、3名は分かれて、この星にいるらしい、謎の勢力を分析することにした。
「時間はあるんでね。功績は功績として上げるけれど、攻撃目標を間違えたという命令違反は、とりあえず基地内から出るなと言う罰則にするらしいわ。言われなくとも、作戦以外で基地の外に出ようなんて、今の状況じゃ不気味だってのよ」




