ゆいこのトライアングル・レッスン(仮) その4
起承転結の、転の回です(笑)
「あー、成果は追撃部隊で確認済だ。で、一つ聞かせてくれないか?君ら小隊は、何処の星の、どの部隊の、何を破壊したのかね?」
ここは、ゆいこたち3人の小隊が出発したベースとなる基地。
あの強襲攻撃から半日。
今、小隊3名が揃って上官、ベース基地を管理する中佐に呼び出され、あの攻撃に対して報告を求められている。
「あのー……報告書には詳細に敵要塞の外・内の様子も画像つきで載せていますが……中佐、なんの冗談です?我々は、指令書通りに攻撃ポイントへ到着し、奇襲攻撃を加えて、あれほど厄介だった空電ノイズの発生源を潰したんですが?」
そろーっと手を上げて発言した、ゆいこ少尉の意見を、聞くまでもないなと……
「ふんっ!貴官らは重大な成果を上げた。それは確認したし、その報告書も、一箇所を除いて間違っていない」
中佐は、憤懣やるかたなしという表情を崩さない。
たくみ一等兵が、発言する。
「中佐、一兵卒ごときが発言することを、お許し願います。私が、敵要塞の全てを確認しております。あれは敵基地などという規模ではありませんでした。まさに要塞でした」
「たくみ一等兵……懲罰降格で中尉から一等兵か。銃殺刑にならなかっただけマシなくらいの違反を犯したな。ああ、データは確認済みだよ……私が聞いているのは、目標を、なんで取り違えたかということだ」
目標を取り違えた?
ひろし兵長が、そんなことはありません!と発言。
「中佐に申し上げます!この私が、命令書の攻撃ポイントと、実際の要塞があるポイントとの一致を確認して攻撃開始のスイッチを入れております。万が一にも、攻撃指示ポイントを間違うなどということは、ありえません!」
「ひろし兵長か……君も懲罰降格の口だな……技術少佐が目の前にあるというのに、何をやらかしたら兵長まで下がるかね。ちなみに、追撃部隊は普通に敵基地を破壊したぞ。君らがやっつけた、謎の要塞から出ていた妨害電波が消えていたんで簡単だったと報告があった。ということで、最初に戻るぞ。君らが完全破壊した、あの、謎の要塞と思われる建造物だが、何処の何者が造って、どういう意図で運用されていたのかね?」
「はい?指令書に書いていったポイントと違うところに強襲かけて、敵じゃない施設を破壊したと……そういうことなのでしょうか?中佐殿」
表情を曇らせながらも、ようやく気づいたかと言わんばかりの中佐。
「まあ、そういうことだ。君らの功績は認める。あの要塞の破壊が先行しなければ、後続部隊の敵基地攻撃は不可能だったと報告が出てきている。問題は、君らが破壊した要塞のような巨大設備は、何だったのかということなんだよ」
ゆいこ、ひろし、たくみ。
三人の表情が、過去回想モードになる。
「そういえば、急襲攻撃で、敵要塞の兵隊を見なかったな。保全のみの設備で管理する人員が少ないからだと思ってたが……たくみ、お前の斥候中、敵兵の姿を見たか?」
「あ、そう言われると……外にも中にも兵士の姿はなかったな。あれほどの巨大要塞が無人で維持管理されてた?いやいや、それこそ、ありえないだろ。中佐、攻撃後に要塞の確認に行ってる部隊があるはずですよね。その部隊、死傷者の確認はしましたか?」
「そういう質問が来ると思ったんでな、確認した。死者も負傷者も、なーんも確認できなかったと報告が上がっている。いいか、生命体の気配すらなかったそうだ」
?????が一杯になり、3人の頭脳は混乱する。
俺達は、何を攻撃したんだ?
いや、指令書に書かれたポイントと実際の要塞があったポイントとの一致も確認している。
それじゃ、敵以外に、俺達や敵生命体を敵視している勢力があるってことか?
あの空電ノイズは、害意のあるものだと感じられる。
しかし、要塞だと思われた建造物は実際には無人の、妨害電波発生アンテナが建っているに過ぎなかったと?
中佐含め、そこにいる全員、巨大な謎に包まれた星が、いま自分たちがいる足の下にあると思った……




