銀河パトロール レンジャー部隊J99 その七
おまたせ!再開します(ちょっと長いです、再開直後でキーボードが走りました(笑))
ここは、何処とも知れぬ空間。
その中に、ぽつんとある一つの星。
その星には目的の銀河を侵略しようとしている帝国軍の本部が存在していた……
「情報部の方は、どこまで掴んでいるのかな?急に、あの銀河の抵抗勢力が強くなってきた理由が」
声を発したのは太り気味の将校。
ギラギラ、やたらときらびやかな勲章(と思われる)の類を将校服にびっしりと付けている。
「は、少将閣下!今現在、こちらが掴んでいる情報としては、あまり多くはありません。なにしろ、数十年前までは、こちらの一番小さい艦船でさえ向こうの戦力とは比較にならない火力を誇っていたのに、今は巡洋艦クラス以上でないと向こうの巡回パトロール艦船に対抗できなくなっています。情報部としても必死で敵組織の全容を掴みたいのですが、向こうの組織の全容どころか、上部メンバー同士の秘密通信らしき装置も確認できません。情報部の全力を挙げておりますが、どうも向こうの組織のトップは我々のことを薄々、感づいているような節があります。それに比べて、我々は敵のトップの全容も掴んでおりません」
はぁ、とため息を吐く将校服。
「君には失望した。必死で動いているのは理解しているが、結果が全てだ、この帝国軍ではな。よろしい、あと一ヶ月だけ待とう。それで敵の情報が掴めないようなら、君は情報部から最前線へ送られる。これは決定事項だぞ。では、一ヶ月後を期待している……」
そう言いつつ、少将と呼ばれる将校服の太り気味の男は去っていく。
将校に対し説明という言い訳を展開していた若そうな男(ストレスだろうか、頭頂部の金髪は薄くなっている)は、とりあえずの圧力が去り、ほっと一息。
「ふぅ……ようやく納得……しちゃいないな、あの様子じゃ。それにしても、こっちが追い詰められだしたのは、わずか数十年前。侵略計画は1000年以上前から実行されているにも関わらず、なぜ、今になって計画が頓挫しかかっているのだろう?急激な技術力や戦力のアップもそうだが、どこか別の勢力が、あの銀河に手を出して、こちらを排除しようとしているような気がしてならない。ああ、初動が遅かったなぁ……100年も前から戦闘で敗北したという情報も入っていたのに、それを真剣に考えるトップがいなかったのが失敗だよなぁ……」
とぼとぼと、男は情報部本部へ向かって歩く。
本部へ到着して部下の報告を受けるが、これは!
と思われるような情報は入ってこない。
それにも増して、拙い事態が発生したと報告が入るのには更に気落ちする。
「例の銀河でスパイとして情報収集と敵戦力の強さを計っていた情報部少佐が敵に捕らえられたとのことです。ただし強烈な暗示で潜在意識にまで染み込ませた情報漏洩防止プログラムにより、当該少佐の脳は焼き切れるようになっていたため、最小限の情報のみが敵に伝わったようですが」
こいつは最小限と言っているが、その最小限の情報から、どれだけのことが分かるのか理解していない。
「副官、君は最小限の情報と言っているが、これが敵に漏れた場合の危険性が分かっていない。敵のトップに、もし私がいたならば、彼が帝国軍情報将校で少佐という事実だけで、こちらの戦力が大きいこと、帝国軍という名称で様々な機関があるだろうこと、そして、敵の組織が巧妙に隠されていることが分かる……ちなみに、敵の組織のトップは私以上の切れ者らしいので、もっと多量の情報が推察されると思われる。これは拙い事態になりかねんぞ」
改めて副官に敵組織の情報収集を最高度の任務とするように伝えて、彼は自分の部屋、帝国軍情報部長室へと入っていく。
情報端末に向かい、先程聞いた情報漏えいの仔細情報を見る。
「これは本格的に拙い。副官の情報では漏れた情報は最小限だと言っていたが、向こうの組織は、こっちが宇宙海賊などというチンケな組織ではなく帝国軍という巨大組織だと見抜いているような動きをしているな……これでは、いくらこちらが隠そうとしても、いつか見抜かれてしまうぞ……いっそダミー情報や嘘情報で相手を混乱させるか?いやいや、雇われ稼業の海賊達に、そんな情報を流したら裏切られかねん……」
男は、デスクの前で考え込むのだった……
一方、こちらは敵とされている方の銀河。
そこの守護者である銀河パトロールの指導者にしてトップとなる男がいる。
《敵である帝国軍だが、どこの何者?隣接銀河も搭載艇を無数に放って調べてみたが、怪しい星系も集団も見かけなかったぞ》
〈総司令が調査させたのなら確実ですな、こちらの会議では隣接銀河の威力偵察のようなものと推察されていましたが。そうすると、帝国軍とは、どこの星系や銀河から来てるんでしょうかね?そちらの調査では、どこまで確定してます?どうせ、候補は出てるんでしょ?〉
《副司令、いや、郷、よく分かってきたじゃないか。候補は10ばかり上がってるが、どれにも、これはという確定要素がな。その中でも面白いのが一つあるぞ、聞きたいか?》
〈総司令、いや師匠。もったいぶらないで教えてくださいよ。あまりに相手の情報が少ないんで、こっちもイライラしてるんですから〉
《はっはっは、あわてるな、教えるつもりだったんだから。まだ確定とは言えないんで参考までにな。一番面白い可能性として、この宇宙から隠されている世界からの侵略集団ではないかという話がある》
〈えっ?!異次元からの侵略者ですか?邪神集団のような?〉
《邪神集団、今では異次元生命体だが、彼らとは違う。違う時間に移行してた銀河、憶えてるか?あれと若干似ているが、本質的に時間も同じ、しかし、違う世界の話だよ》
〈何です?なぞなぞを解けとでも?詳細を教えてくださいよ!〉
《あまりいじめるのも可哀想だな。この世界とは、ほとんど同じ……多元宇宙理論というやつを知ってるな?あれだ、ほとんど同一だけど、何らかのきっかけで、この宇宙とはズレてしまった未来を辿る別の宇宙だよ。あっちの世界で何かトラブルが起きて、その宇宙や銀河に住みにくくなってしまったがために、こっちの宇宙に移住しようとしてるんだろうな……と言うのが俺達とガルガンチュアが今あるデータを全て精査し、検討し尽くして出した結論だ。ただし、この可能性が一番高いってだけで、この多元宇宙からの侵略戦争説が決定というわけじゃない。案外、見えないけれど近くにある隣接銀河の侵略かもよ?》
〈ははは、ガルガンチュアと、あなた達の全てが結集して出した結論が可能性として一番に決まってるじゃないですか……で?真剣な話、どうするつもりです?時間は克服できたんですが、さすがに異世界に近い多元宇宙なんて、渡れないでしょうが〉
《うん、その通り。今は相手が来てから撃退するしか無いんだが、その異世界へ渡る方法さえ分かれば、ガルガンチュアの超絶科学でなんとかなるだろうと言うのが、フロンティアたちの出した結論だ。向こうにさえ行ければな、あっちのトラブルも解決できると思うんだが……今は、J99隊の成果待ちってところだ。俺達が出れば早いが、それでは向こうが手を引いてしまい、こっちの世界から向こうの世界へ渡る方法すら分からないままとなる……それだけは避けたい》
副司令こと郷と、総司令の楠見とのテレパシー会議が終了する。
多元宇宙の異世界に住む者達には一番悪い結果を、いや、一番良い結果となるだろう秘密会議は、これからも当事者以外には理解できない方法で実施されていく。




