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ようこそ大宇宙へ! 超古代の巨大宇宙船で宇宙を征く  作者: 稲葉小僧
超銀河団を征くトラブルバスター
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銀河のプロムナード 特別編

2020年の年末に最後の作としてアップします。

皆様、今年一年、ありがとうございました。

皆様の励ましの声、様々な感想が、作者を後押しして、ここまで書けたと思います。


来年も、よろしくお願いいたします。


その一「汎銀河文明の今」


ここは銀河系を中心とする超巨大な文明圏、氾銀河文明圏と呼ばれるものの、ほとんど縁にある星域。

そこのスペースポートでは、未知の文明圏を探し氾銀河文明圏へと誘う任務に就こうとしている宇宙船団が、今まさに出港手続きを終えようとしていた。


「おや?まだ探索隊へ派遣されたテレパスが到着してないって?おいおい、どうなってるんだ、氾銀河文明圏本部の人員采配は」


そう、言語体系も全く違うだろう未知の文明圏へ探査に出発する場合、レベルB以上のテレパスを同乗させるべしという規律(けっこう重要な部類)があるため、探査隊は、その到着を待っていた。


「艦長!ようやく部隊付きのテレパスが到着したと報告が!」


副長が、待ちに待った言葉を発する。


「ようやく、か。他の装備や人員、船は、もうとっくの昔に用意できていたというのに肝心の高位テレパスが間に合わないと、ここでずっと待機状態を言い渡されていたからなぁ……どのような人物だ?」


「それが、その……あ、当人がブリッジへ到着します。後のことは当人からお聞きください」


「何だ?その含んだ言い方は……」


艦長と副長が話していると、その話題となった当人、高位テレパスがブリッジへ入ってくる。


「すいません、到着が遅れました!レベルAテレパスの楠見宇宙くすみ こすもと言います!これからの任務を共にさせていただきます!って、おや?獣人文明圏の方々ですか。珍しいですね、ようやくご自分の銀河と銀河系以外の外宇宙へ出られるようになったのですか」


出会って一言目がこれである。

まあ、獣人種族は自分の銀河以外には憧れの銀河系であり聖地の太陽系という星域以外には滅多に出没しないことで有名だったが、この頃ようやく外の世界に目を向け始めたところらしい。

外の世界へ目を向けての初っ端が、文明圏外の探査任務へ手を上げることというのが、いかにも獣人種族らしいといえば、らしいとは思うが。

艦長は、自分たちの文明に詳しいらしい隊員が来たことに興味を憶えながらも、その姓名に、より興味を持った。


「我々の文明に詳しいな。これから未知の世界に行こうというときに、こういう人物は頼りになるよ……しかし、楠見だと?それは、初期に帝国制だった我々を平和に導いてくれた伝説の人物と似ていると思うのだが?」


言われ慣れているのだろう。

まあ、仕方ないだろうなと言うような雰囲気を纏いながら、


「はい、地球は日本エリアの楠見、伝説の楠見糺くすみ ただすは我が一族の血を引く者です。ただ、あれほどのSSSクラスエスパーと比べられるのは、ちょっと……」


楠見宇宙は、頭をかきながら話す。


「楠見糺は、世にも稀なトリプル能力持ちで、テレパシー、サイコキネシス、超天才、どれもこれも突き抜けた力を示したと言われています。まあ、はっきり言って人類とは思えませんよね。タダス叔父……まあ、私からしたら遥か過去の人物なんですが、今でも生きてるということで叔父さん扱いなんですよ、ウチでは。タダス叔父さんが地球を離れてから、少しづつ地球や太陽系では超能力者の発生率が高くなり、その後、銀河系でもアンドロメダでも周辺銀河でも同じように超能力者の発生率が上がっているのはご存知?ああ、ご存じでしたか。でもね、未だにトリプル能力者は生まれてないんですよ、地球の日本エリアでも」


艦長、少し興味が出てきた。


「ほう?フロンティアとマスタークスミのコンビの活躍は有名だろうに。あれほどの突き抜けた力の持ち主とは行かないまでも、トリプル能力者などは出現しても良さそうなものじゃないかと思うんだが?ちなみに、我々の銀河にも少しづつエスパーが生まれつつあるぞ。銀河系レベルではなく、まだまだ実用には程遠いレベルのエスパーではあるが」


「そうでしょうね、地球含めた太陽系や銀河系が異常なんですよ。ただ、これは超天才の集団が数年間の時間をかけて出した推論なんですが、どうも糺叔父さんは生まれつき、無自覚ではあるがトリプルの能力者だったのではないかということです。潜在的にトリプルエスパーだったがために、後天的に何らかの刺激を受けて急激に能力が発達したというのが、どうも正解らしいですね。精神物理学という最新科学の分野では、如何にしたら糺叔父さんのようなトリプルエスパーを作り出せるかという理論構築に躍起になってます」


「ほほう、いいね。でも、実際に出現したというニュースも聞かないから、まだまだそこまでの能力者は出ないんだな?」


「はい、その通りです。その実験の余録のようなもので、この私もBクラステレパスからAクラステレパスへステップアップしたんですから。それでも、どれか2つの能力を持つダブルエスパーすら、ごくごく低い確率でしか生まれません。生まれたとしても、どちらかが強くて片方は弱いってのが通常ですよ。ともかく、糺叔父さんは異常だというのが、地球の精神物理学者の結論ですね。2万年超えても糺叔父さんと同じようなエスパーの生み出し方すら分からないんですから」


「ははは、マスタークスミが異常とはな。ま、大宇宙を人助けの場所と考えるのは、異常といえば異常かもしれんが」


「艦長、そろそろ探査隊の発進コールを。待ち人が来ましたんで、これで全ての準備完了です」


副長が、とうとう焦れてしまったらしい。


「お、そうだったな。諸君、我々は今から5年間という長きに渡り、未踏の宙域へ臨むこととなる。しかし、安心したまえ。我々には未踏でも、既にフロンティアやガルガンチュアは訪れている。つまり、未だ会えていない同胞が待っているだけのことなのだ。ワクワクしながらも不安と心配のない未踏宙域へ行くぞ!」


イマイチではあるが、その通りの宙域探査だ。

この5年の任務で、どれだけ同胞が増えることやら……

艦長以下、心は向こうの宙域へ飛んでいた……


その二「楠見の名を継ぐもの」


ここは、銀河系から離れ、超銀河団すら超えた彼方にある少々小さめの銀河。

ここには、楠見の名を地球以外で名乗る者がいる。


「さて、今日は君らの卒業式と入社式だ。小学生の頃から、ここへ通いつつ超常能力を磨いてきた者たちも多いと思うが、今日で訓練と座学は終了する。これからは現場へ飛び込むこととなるが、君らは十分に現場で動けると思う。この訓練所を卒業しても、ここで憶えたことは現場で役にたつぞ。では、卒業、おめでとう!」


所長として祝辞を述べているのは、楠見太二。

養子とはいえ、あの楠見糺くすみ ただすの直接教育を受けた者。

教育機械も使い、父親ほどではないが超天才とテレパスの両方の能力を持っていた。

今は、楠見インダストリーズ(また会社が大きくなり、改名した)の部長待遇で、超常能力を持つ子どもたちの受け入れ先となった感のある専門学校のような訓練所の所長を任されている。


ここから旅立った子どもたちの先輩は、楠見インダストリーズの災害救助部門で目覚ましい活躍をしている。

あちこちのメディアで取り上げられる活躍の模様は、楠見インダストリーズの業績にも反映し、その会社名を全世界に轟かせている。


「今月は、赤道付近の島々が津波被害で大変なことになっているのを解決したか。もうひよっ子段階は卒業したかな?第一期の卒業生たちは、もう宇宙デブリの掃除に励んでいると言うし……やりがいはあるなぁ、この仕事」


所長と言うより、自分では小中高一貫校の校長のような気分でいる太二くんである。

ちなみに、未だ独身……

決してモテない部類の人間ではないが、まだまだ自分が家族を持つような気分にならないので仕方がない。


「楠見、いい加減に身を固めろ。独身だからということも、君を部長止まりにしてる原因だぞ。まだ遊び歩いているそうだが、何が気に入らないんだ?付き合ってる女性たち、けっこう家庭的らしいじゃないか。今すぐに結婚しても良いと思うぞ、私は」


直属の上司である専務は、そう忠告と催促をしてくるが、自分自身が結婚して家庭を持つ光景が想像できないと素直に太二くんは答える。


「父親である前会長の楠見さんに影響受けたか?しかし、あの人は文字通り、本当に一人でも生きていける人だったからなぁ……巨大企業の会長職にある人間が、格闘界の第一人者だなんてのは後にも先にも、あの人だけだろう。太二くん、君は普通に生きるほうが良いぞ」


専務は前会長に多大なる恩があるためか、太二くんを自分の孫のようにかわいがってくれる。

部長になるについても、専務の後押しが大きかったと周囲の評判だ(太二くんの実績についても部長になるにふさわしいものだったが)


「もう少し、独身を楽しんでから真面目に結婚相手を考えるかな。まあ、どちらにせよ、この広い部屋は一人じゃ使い勝手が悪いよなぁ……」


以前の会長室は、セキュリティの問題から今では太二くんの専用となっている(どうやっても他の人物に入室許可を広げることができなかった)

巨大ビルの最上階全てが今では太二くん専用となっているため、過去に住んでいたマンションを手放して、ここが太二くんの居住するところとなっている。

まだまだ、この星はいくつもの国家に分かれて様々な問題で争っているが、大きな紛争や戦争は無くなって久しい。

それもこれも、楠見インダストリーズが全世界組織となり、災害出動の拠点化を進めたから。


「父さんがいた頃から計画は進んでたらしいけど、目標が世界統一政府の樹立だもんなぁ……まだまだ遠いよな。戦争が無くなっただけでも良しとしようか」


太二くんは呟くが、今この瞬間にも楠見インダストリーズの頭脳集団は世界統一政府の樹立を目指した長期計画を準備し、短期目標を次々と達成している。

数十年も経たぬうち、この星は統一政府となるに違いない。

問題は、その時が早いか、それとも太二くんが身を固めるのが早いか、という問題だった……


皆様、良いお年を!

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― 新着の感想 ―
[一言] 更新有難うございます。今年はこの作品に触れることが出来て幸せでした。昨今の宇宙を舞台としたSFの中で一番の物でしたから、1950-1980の作品を知るものとして感涙物でした。来年も良い作品を…
[一言] 来年も楽しみです エンタープライズは、未踏の外宇宙を探査する危険な任務でしたが、2万年前に踏破している探査なら、危険性は相当低くなりますね しかも、大歓迎されるのは間違いない
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