銀河パトロール レンジャー部隊J99 その四
遊撃隊となったJ99部隊。
しかし、思わぬアクシデントが待ち構えることとなる……
ここから、銀河パトロールJ99部隊の新しい任務が始まる。
〈銀河パトロール本部へ。J99部隊、これより遊撃隊として任務に就きます。定期報告はしますが、基地は移動するため、現在地は刻々と変化しますので事前報告まで〉
〈了解、こちら副司令だ。総司令には、こちらから伝えておく。J99部隊、遊撃任務への移行認証。宇宙海賊集団MADの情報収集を最優先に、現場での自由裁量を認めよう。定期報告は欠かさないようにな。派手なドンパチより厳しいかも知れんが、頑張ってくれ。以上だ〉
「よし……本部とのテレパシー連絡で遊撃任務を認証してもらった。J99部隊、これより、銀河最周辺部、縁へ向かう。現在、最も海賊被害が大きいポイントは?」
「はい、隊長。被害報告が最も顕著なポイントは、ここより500光年ほど離れた星域となります。大きな海賊集団のグループもいくつか確認されているとのことで、その中にはMADの所属グループもあると思われます」
「よし、分かった。では、J99部隊の新任務の始まりだ!野郎ども、宇宙海賊と名乗っちゃいるが実は軍隊という仮面、剥ぎ取ってやるぞ!」
おーっ!
と掛け声一発、世にも珍しい大型船と中型船の合体宇宙船は発進する。
目的地は、今、この銀河で一番危険と言われている星域。
そこで情報収集と、海賊組織の撲滅を行う。
「目標星域まで、どのくらいかかるかな?」
「はい、隊長。およそ4日ほどですね。直行は、間に中性子星ゾーンがあるので迂回することとなります。さすがに引き込まれることはないと思いますが、最悪、海賊集団の罠が仕掛けられている恐れもありますので」
「了解。では、バリアフィールドを最大出力にして、中性子ゾーンをギリギリかすめるようにして跳んでくれ。一日くらいは短縮できるだろう」
「分かりました。バリアフィールド最大出力、跳躍エンジン、最大出力で行きます。約半分の日程で行けると思われます」
「分かった……では、跳べ!」
合体船という事で通常の一隻より格段に出力にも余裕のある宇宙船は、宇宙空間を文字通り「駆け抜ける」ように跳んでいく。
しかし……
「隊長、異常事態です!船の進路が安定しません!」
「何?!この船の跳躍エンジンも通常空間用エンジンも最新型のはずだ。今は跳躍を終えてフィールドエンジンで亜光速のはず。どうして宇宙一安定しているはずのエンジンで進路が安定しないんだ?」
「そ、それが……フィールドエンジンなのが原因のようです!」
「なんだと?跳躍航法の方は大丈夫なんだな?」
「は、はい!今から跳躍します!……終了。通常空間で現在は安定しています」
「何だ?原因を究明せよ。それが出来上がり次第、本部へ緊急連絡する」
「はい!了解です!」
数時間後……
「隊長、報告書が上がってきました。今回のフィールドエンジン不調の原因が特定されましたが……少々、厄介ですな」
「ご苦労、副長。原因が特定されたんなら良いが、厄介というのは?」
「それがですねぇ……フィールドエンジンの原理に関する不調です。詳しくは、この報告書に」
「ふむふむ……これは!こんな欠点を敵の攻撃に使われてみろ、こちらは全軍で統制なんか取れなくなりそうだ」
「やはり、隊長も同意見ですか。フィールドエンジン、長所が山ほどあるんですが、たった一つの短所が命取りになりそうですなぁ……」
副長が隊長室から退出すると、さっそく緊急報告を入れる。
〈こちら、J99部隊より本部へ。フィールドエンジンの欠点を発見、厄介な事が判明しました。フィールドエンジンの性質上、電荷や電磁場の超強力な宙域を通過すると、進路を保てなくなる事が判明しました。より詳しくは後ほど報告書を送りますが、要は直径500m船であろうと、回転しているブラックホールや中性子星の電磁場が超強力な空間を通過すると、その電磁フィールドを保てなくなるということが実際にありました。銀河パトロールの球形船は全船に通達願います〉
〈こちら本部、副司令だ。緊急通報、ご苦労だった。こちらも対策を取るが、対策が完了するまでJ99部隊は当該宙域に近寄るなよ。いいか、それが敵の基地だったとしても、その宇宙船で敵基地攻略作戦など起こすな!これは総司令からの命令だ!以上、貴重な情報を感謝する〉
「うーむ……もうすぐ目的宙域に到着するが、それから身動きが取れんな。何か解決方法は……」
隊長として部隊が行動不能に陥ることは避けたいが、かと言ってフィールドエンジンの原理上、これは解決など出来ない。
全員出席の対策会議が急遽、行われる事となった。




