銀河パトロール レンジャー部隊J99 その三
改装作業と、組織内の、ちょっとした秘密です(笑)
「帰ったぞ。私の留守の間、変わったことは?」
ジョイナス・ケーニッヒ少尉、いや大尉は数週間ぶりのJ99基地へ戻っていた。
最初、なりたて士官だと馬鹿にしていた部下たちも、最初の試練をあまりに見事に始末して乗り越えた少尉、いや、大尉の腕に納得した。
「隊長、おかえりなさい。まあ、代わり映えしませんね。小規模な海賊行為が10件ばかし、星系内部でのテロ行為が数件、内部抗争から内戦へ発展した星系内での争いが1件です。どれもこれも俺達に声がかかる前に地元の駐留部隊が火消しをしました」
あっけらかんと言っているが、これがこの時代の、この星区の現状である。
銀河パトロールという組織が、ようやく銀河の周辺部、縁の近くまで力を及ぼせるところまで来た。
創設してから1000年間、中央部から中央周辺、中間部より周辺。
で、今の現状。
海賊組織が実は大きな軍事組織だと分かったことが大きな収穫だったと本部の評価は高かったが、大尉自身、もっと情報を引き出せるはずだったと悔いている。
あの艦長、敵組織の少佐だったということは、どこかに銀河パトロールのような大きな中央司令部があるのだろう。
「まあ、1000年も探してて、ようやく掴めた秘密の一部。少しづつでも敵の秘密を明かしていけば良いか」
そう呟くケーニッヒ大尉の目は大きな敵に対する猟犬の挑戦のように光る。
それから数ヶ月後、J99部隊基地に大きな贈り物が届くこととなる。
「毎度!おまたせしました。J99部隊のベースとなります大型宇宙船、直径500m級の球形船、最新型となります!今までの小型船集積型のベースじゃ自由に動けませんからね。総司令から直々のご依頼で工廠より直接、お届けに上がりましたぁ!」
今までのJ99部隊は現場へ直行して作戦行動を行う直径100m船、様々な修理や武器・艦船・突撃艇のメンテナンスを行う直径300m船、そして司令部との緊急連絡に使う連絡艇として使用する直径50m船の合体した基地という、やたらめったらゴチャゴチャした基地となっていたため、様々な物を収容できる大きさの大型船が来たのはありがたかった。
「ご苦労!今までのベースは、どうするのか聞いているか?」
ケーニッヒ大尉が問うと、
「直径100m船と50m船は収納可能になると思われますので、そのまま使えますよ。問題は300m船なんですが……副司令から、ちょっとしたアイデアがあるって聞いて、それを実現するために俺達が乗り込んできたんでさぁ!ちょいと失礼しますよ……ふむ、今の合体部分は不安定ですなぁ……やっぱ、新アイデアの合体船のほうが良いかと思いますよ、隊長さん」
言われたケーニッヒ隊長、わけが分からず。
「何だと?もしかして新しい直径500m船と、今まで最大だった300m船を合体させるってのか?おいおい、そんなもの巨大工廠も無しに作業が出来るわけ無いだろう!」
普通は、そういう意見が出る。
しかし……
「そういうと思ってましたけど。でも、ご安心下さい。もう、接続部は500m船にパーツでばらして収納してきましたんで組み立てるだけです。後は500m船と300m船に、その接続パーツ用の接合穴を開けるだけでさぁ!工事期間は予定で二週間!まあ、もう少し内部の最新化でかかりそうですがね」
大尉以下、J99部隊も、これには空いた口が塞がらなかった。
「さーて、と!ちょいと狭いですが、100mおよび50m船に乗り換えてもらえますかね。500mと300m、くっつける作業に、早速、取り掛かりますので!」
有無を言わさず、部隊全員が船を追い出されて、狭い100m船と50m船に移される。
数日後、
「おいおい、実行部隊の俺達は最少人数なら50m船でも構わないが他の基地専従要員がかわいそうだろう。なんとかならんのか?」
たまらず、ケーニッヒ隊長が不満を漏らす。
まあ、そんな事は予定してましたと言わんばかりに合体作業のプラン実行班長…実は銀河パトロール修理メンテナンス部門の課長だった…が、
「そうですなぁ……それじゃ、仮の宿として、早速、本部から500m船を送って貰いますよ。ちょうど、俺達も帰りの船が必要だったんで、作業終了次第、その船で帰ります」
次の日には、もう一隻500m船が増えていたという……
10日後、ようやく改装(?)なったJ99部隊の専用宇宙船にして移動基地が完成する。
「ご苦労さま。引き渡しは?」
ケーニッヒ隊長が聞くと、作業を指揮している課長が言うには、
「すいません!あと数日、内部改装と装備の最新化で。まあ、仕上げを楽しみにしてて下さい、隊長さん」
まあ、仮とは言え、直径500m船をホテル代わりというのは贅沢なものだったので文句はない。
奇跡的に大きな戦いや海賊報告なども上がってこなかった。
5日後……
引き渡しが終わった合体船に入ったJ99部隊。
「ふわぁ……なんだこりゃ?実戦部隊とは思えんよ、この新品装備!武器からシールド発生機から、まるっきり新型じゃねぇか!」
部隊員から、そんな感想が出るくらいピッカピカの最新装備で固められた船内。
今までの狭い船室からは考えられない広くて個室(?)化された隊員それぞれの部屋。
「300mと500m……数字だけ見てるとそんなに大した違いはないようだが、内部容積が全く違うな。通常の宇宙船ではなく球状宇宙船の利点は、これだというのが嫌でも納得させられる」
「あ、隊長。今までの300m船も改修受けてますんで、エンジンなら何から全て新型です。それにしても、ここまでの作業を、これほど早く終わらせるなんて、あの本部から来たって課長、只者じゃないですよ」
こちら、本部へ帰着した作業班から当の課長が指令本部へ。
「いやー、作業は難航しましたが予定より約半分の日程で終了ですよ、我が主、いや、総司令。合体機構そのものがガルガンチュアの小型版なんで簡単でした」
「ご苦労さま、プロフェッサー、じゃなかった、修理メンテナンス部門課長。500m船と300m船ってのは小型とは言えないと思うんだがね」
そんな会話が交わされているなどとは誰も思わない本部及びJ99基地の面々だった。