銀河パトロール レンジャー部隊J99 その一
さて、新しい話が始まりました!
元ネタは?
レンズマンと、J9ですなぁ(笑)
その昔、その銀河は活気があり、賑わう宇宙空間だった。
しかし、それが不穏な空気を纏うのは時間の問題。
貿易や植民、開発で大金が動けば、それに群がる犯罪集団も。
いつしか犯罪集団は徒党を組み、大犯罪集団と化す。
それに立ち向かう勇気のある者たちも、いるにはいたが、所詮は星系ごとの中途半端な防衛行動しか出来ない。
星系の所轄範囲を越えれば、彼ら正義の味方に逮捕権も戦いを仕掛ける大義も無くなる。
大犯罪集団は、いつの間にか銀河に広がる範囲のシマを抱える巨大な犯罪組織となっていった。
巨大犯罪組織が無法を行い、少数の正義の味方たちがピンポイントだが、それを防ぐため、あるいは、組織と闘うために乗り出すと、犯罪組織の宇宙船は、何処ともなく消え去る。
歯噛みをしながらも、旧式で性能の低い宇宙船しか持たない正義の味方たちは、自分たちにはどうすることも出来ない技術と宇宙の広さを実感した。
さて、ここに銀河外宇宙からの訪問者が登場することとなったのは、この話が始まる1000年以上前のこと。
銀河の縁より少し離れたところで情報収集を行いつつ、当該銀河の現状把握をしていた巨大宇宙船は……
「マスター、ひどい状況だと認識します。悪の組織側のテクノロジーと、防衛側の警察・軍のテクノロジーが100年近く違っているじゃないですか。これじゃ、悪党退治も犯罪防止も意味がありませんよ」
声をかけられた相手、楠見が答える。
「ああ、そうだな、フロンティア、分かってる。これは、単なる犯罪抑止とか技術の受け渡しとかやってる場合じゃなさそうだ。もっと根本的にトラブル解決と行こうじゃないか。なあ、プロフェッサー?」
「何で、ここで私に声がけを、我が主。あ、もしかして、RENZの登場で?」
「分かってるじゃないか、プロフェッサー。さーて!1000年ほどかかってしまうが、この銀河から犯罪者を駆逐するぞーっ!」
「あの、プロフェッサー?師匠って、こんなに軽い人でしたっけ?」
「ああ、郷さんですか。我が主はね、実は計画が長期になればなるほど、燃え上がる性格なんですよ……まさにトリックスターの面目躍如というところでしょうか」
「はぁ……そんな面目躍如、要らないんだが……まあ、目指すところに間違いはないんで、今回もトラブル解決に乗り出すとするかな!」
そんな会話が、あったとか無かったとか、それはもう歴史の彼方のお話。
その会話から、1000年過ぎて少したった今の当該銀河。
あいも変わらず宇宙は賑わっている。
あっちでは星系内を飛ぶ光速以下の水素輸送船団、こっちでは緊急出動がかかったらしい星系外も含めた災害救助部隊の艦船。
商船は、単独もあれば大船団を組んでいるものも。
ところが、そこに割り込む違法船が。
不法だと注意する管理宇宙ステーションからの注意通信に答えて曰く、
「俺達は、犯罪結社MAD。さあ、宇宙船をバラバラにされたくなかったら、停泊行動に移れ!無抵抗なら、積み荷を貰うだけで勘弁してやらァ!」
それを聞いて、宇宙ステーションは即座にバリアシステムを作動させる。
他の宇宙船も、外宇宙用の物はバリアシステムを作動させたようだが、星系内部しか航行しないため、バリアシステムとは無縁の水素輸送船団が狙われる。
さすがに犯罪者たちも水素輸送船のため手荒な手段は使えないようで、それでも強固な外殻を持つ輸送船団は籠城戦術で時間を稼ぐが、もう制圧は時間の問題と思われた……
〈こちら銀河パトロール、レンジャー部隊所属のJ99部隊だ!犯罪結社MADの武装海賊船、おとなしく手を上げて降伏しろ!〉
星域狭しと轟くテレパシー通信。
思わず侵略の手が止まるMADの宇宙船。
「船長、ヤバイのが相手ですよぉ!銀河パトロールのレンジャー部隊J99って言えば、連続殺人鬼も裸足で逃げ出す情け無用の対犯罪部隊ですぜ!」
「なーに、話だけだろ。大体、こんな辺鄙な星域に、そんな有名な部隊が派遣されるわ、け、が……」
高を括ってた船長の目が大きく見開かれる。
ブリッジのスクリーンには、大きな文字で「J99」と、そして双頭の狼マークが書かれている。
「いけねぇ、本物だ!銀河レンジャーJ99、またの名を「地獄のケルベロス」だ!野郎ども、引き上げだ!命あっての物種、あいつら相手に勝った同僚は未だにいねえと聞いてる。とっとと逃げるぞ!エンジンは回しとけ!最低速度で強引に跳ぶ!」
略奪も中止して、尻に帆かけて逃げの一手を取ろうとする宇宙海賊船。
ところが……
「船長!最大にエンジン回してますが、船がピクリとも動かねぇ!相手のトラクタービームのほうが強すぎて、完全に捕まってます!」
「ええい!主砲レーザー斉射!目標は、あいつだ!」
眼の前の銀河パトロール船、独特の丸いフォルムを持つ球形船に向けて、いつもなら必殺とも言える主砲のレーザー砲を4門とも放つ!
「船長、命中どころか、寸前でバリアにはね返されてます!なにも被害を与えられません!」
「ぐぎぎぎ!こうなりゃ最後の手段!おい、自爆命令を出す!各自、救命ポッドか搭載艇で脱出しろ!この艦のエンジンだけは銀河パトロールに渡せねぇ……首領に言われたMADの最高機密だからな……おい副長!おめえも脱出しろ!この船とともに逝くのは、俺だけでいい……」
副長もいなくなり、無人の艦橋で、海賊船の船長だった者は……
「はぁ、犯罪結社とは名ばかり。実は銀河を牛耳ろうって狙う帝国宇宙艦なんだけどな……我が帝国の宇宙戦闘艦を破壊してしまうのは首領たる皇帝に恥じるものがあるが、我が忠誠は変わらず!」
自爆ボタンを押そうとするが……
「な、何ぃ!う、腕が動かん!こりゃ、何なんだ?!」
「それは、私のサイコキネシスだよ、帝国宇宙軍少佐……キシンスキーか。無駄だ、無駄。私の超常能力は、このRENZで強化されていてね。ちょっとやそっとで抵抗できないんだよ……ご苦労さま、少佐。この船、鹵獲させてもらう。あと、君は重要なデータを持つ犯罪者として拘束する」
無人のはずの宇宙船に現れた、銀河パトロール制服に身を包んだ若い男。
その二の腕には、超鋼バンドでピッタリと留まった結晶体のようなものが。
これがRENZだろうか。
男は静かに手に持ったパラライザーの引き金を引く。
宇宙海賊の船長だった者は、声もなくシートから崩れ落ちていった。
〈銀河パトロール本部へ、こちらJ99部隊隊長。囮作戦は成功し、相手の宇宙船を鹵獲しました。これで犯罪組織の詳細と、宇宙船の作られた工廠のある星域が判明するでしょう〉
あくまで冷静に、テレパシー通信さえも冷静に、大成功を誇ること無く淡々と、レンジャー部隊J99隊長、またの名を猟犬のジョーはその場を去る。
「後は頼むよ、俺は疲れた」
そう、船に送信すると、ブリッジへは戻らず艦長室へ。
そのままベッドへ直行し、直後に高いびきで寝てしまう隊長だった……




