待合室の彼女 その9
すいません。
第10話突破は確実となりました(苦笑)
興が乗ると、長くなってしまいます(書いてるのは楽しいんですが)
ガルガンチュアから、もう慣れた感のある転送で、あっという間に郊外の地へ。
「えーっと……楠見さん、目の前にあるのは、どういった巨大企業なんでしょうか?これを目標に零細企業から頑張れと?」
ドデーンという感じで、俺の目の前には巨大な壁と門扉が存在している。
一目見るなり、こりゃ官民軍合同の兵器やら最新技術の開発工場だろ、という感想が俺の頭に湧き上がる。
まるで兵舎か刑務所に近いような、高さ5m以上もある塀というか壁が門の左右に展開されているが、その距離が普通じゃない。
視線を遠くにやっても、その切れ目が見えない……
「おいおい、何を言い出すのかな、本庄くん。目の前の本社兼工場兼研究所こそ、君がこれから社長として経営し、導いていく会社だよ」
ははは……
予想してた答えが来ましたよ……
俺、第一歩から自信がなくなったんですけど。
ガルガンチュアで貰ってた(今まで忘れてたよ、あまりの現実に)IDカードを取り出して、門に取り付けたカメラにかざすと、音もなく巨大な扉が開く。
後で聞いたら、門そのものが開閉するのは、あまり頻繁にやらないんだそうで。
巨大物の搬入出やVIPの視察や訪問に限るんだって。
警備に挨拶して俺達(俺、楠見さん、ライムさん、エッタさん、郷さん、プロフェッサーさん)一行は会社と研究所、工場の見学ツアーに。
あまりに広い敷地なので電動車(完全無音!まあ、これだと逆に危険なので、通常走行では音を出すんだそうで)に乗って、まずは工場へ。
あっけにとられる俺。
何なの?
何を作り出すことを目標にする工場なんでしょうか?
だだっ広い工場内では、今は作業機器や工作台、工場内の試験用小部屋などを設置中。
「本庄くん、工場部分は特別に大きくしている。これくらい広くないと直径500mの球状構造物は設置も運び出しも無理だからね」
はい……
直径500mの球状ってので思い出すのはガルガンチュアの搭載艇置き場。
あそこにゃ、万単位で直径500mの球状搭載艇が置いてあったなぁ……
「楠見さん、もしかして、もしかしてですが、この工場では球状宇宙船を作り出すのが目標とか?」
もしかしたら否定されるかと、すこーしばかり期待してたのは俺の甘さ。
楠見さん以下、ガルガンチュアクルーは、ふかーくうなずいた。
「あのですねぇ……この星では球状宇宙船どころか、現在の最新技術でも固体燃料ロケットがいいとこなんですよ!あまりにオーバーテクノロジーだと思いませんか?」
そんなこと全てリサーチしてると言わんばかりの笑顔……
いや、黒い笑顔だ。
「ふっふっふ、今から10年も経たないうちに、そんな低レベルの宇宙船は廃棄させることになるだろうさ。さあ、次は研究所だ!」
ここは研究所、とゲートには案内文字が書かれていたんだが……
「えーっとですね。研究所の職員が全然いないんですが?」
当然だろ、との顔でエッタさんが。
「この星の科学技術も科学理論も、ガルガンチュアに比べて数千年は遅れてます。同程度になれとは言いませんし、それは精神的に未熟な種族に危険な火遊びを教えることにもなりますのでやりませんが、少なくとも、災害や生命救出に関わる機器や装置を開発するだけのベース知識までは引き上げないと。ということで、研究所の職員は、研究職だけじゃなく事務職も全て、教育機械にかかってもらってます。本庄さんのカスタムとは違い、こちらのは数段、知識的に落ちるものであるのは否めませんが。まあ、あまり最新知識に触れるのは危険でもありますから」
あ、そうですね、同感です。
ちなみに、俺の教育機械にはガルガンチュアの跳躍エンジンや航法までの知識も入っていた。
後で考えたら、こんな未開種族に、こんな超科学教え込んで大丈夫なんかね?
と思ったもんだが。
幸いにして、これを知ってるのは俺のみ。
未開の愚かな原住民に最新知識は侵略意欲を掻き立てるだけだ。
「あと数日は教育機械に活躍してもらう。その後、工場の稼働準備完了と共に研究所も開発作業開始。会社と言うか販売元は、もう少し後から稼働するって計画だよ」
えーっと……
楠見さん?
俺、社長の役目、しなくても良いのでは?
そう聞いたら、
「ダメダメ、この会社を起こしたのは君のため、社会のため。ならば、この会社を率いていくのは地元民の君しかいないだろうが。無関係の俺達は、お膳立てまでだ」
これで、お膳立て?
宇宙規模のお節介がどういうものか、ようやく理解できるようになってきた俺だった。