消えた銀河の謎 その六
そろそろ終盤です。
俺達はガルガンチュア内で、一つの銀河を未来から現在へ戻す計画を検討していた。
「マスター、理論的には可能だと思われます……とは言うものの、以前にも言いました通り、そのためには私の主砲、時空間凍結砲を、現在の状態よりも、しっかりと固定しなければなりません。目標を銀河サイズとするのなら、一つの星系サイズとまでは行かなくても良いでしょうが……船と計算してみましたが、今の約100倍ほど、つまり、標準的な恒星一個ほどの大きさが必要となりますね」
「主、今からフロンティアや他の船たちを大きくするのは、とてつもない時間がかかるぞ」
ふーむ……大きさと言うか……
「フロンティア、ちょいと計算してみてくれ。比較的大きな中性子星だったら、その仮アンカーとならないか?」
頭脳体は、少し時間がかかったが、答えを出す。
「マスター、大丈夫だと船は判断します。でも、中性子星など、何処に?」
ふっふっふ、その質問はなぁ。
「フロンティア、俺達のすぐ傍に銀河があるよな。その銀河にある中性子星を利用させてもらおうじゃないか。数万年前の先祖の業を解消するんだと言えば、向こうも嫌とは言えなくなるだろう」
「マ、マスター……また黒い笑顔を……」
「うわぁ、師匠がトリックスターの顔を出したぁ」
フロンティア、郷、お前らなぁ……
「ふん、放っとけ。今は善人の顔を見せても話しが進まない。それなら、罪を償えって迫っても良いのじゃないか?」
「師匠、真面目な顔で怖い話を……まあ、言ってることは間違っちゃいないんですが……」
「決まったな。お隣の銀河代表と、腹を割って話すぞ」
数日後、ガルガンチュアの銀河内航行許可と、一定期間の某中性子星(近傍空間含む)の貸与が決まった。
銀河代表は、最初、どんな代償を要求するかと内心ワクワクしていたが、終盤は意気消沈。
まあ、それほどに楠見の脅迫まがいの提案が真に迫っていたからでもあるが(内容は秘匿。お互いのためだ)
「ガルガンチュア、重力アンカー発射!ガッチリと固定しろよ。何しろ、獲物がでかすぎるんだからな」
「重力アンカー、固定完了!合計16本、全て中性子星に打ち込まれました。これで、ガルガンチュアの見かけの重さは、太陽の約10倍です。エネルギー容量が違うので中性子星に落ちてしまうことはないですが、普通の宇宙船なら無謀だと言われる行為ですね、師匠」
「いやいや、郷君。ガルガンチュアの力は、こんなもんじゃない。見てろ、今から俺も見たことのない、ガルガンチュアの中でも特殊なフロンティアの主砲、時空間凍結砲が全力発射される光景が見られるんだから」
「え?!主砲の全力発射?そ、そんなことやって大丈夫なんですか?いくら巨大な銀河とは言え、数京人単位の生命体が住んでるんですよ?」
「その点は心配ない。フロンティアに計算してもらったら、時間の差を越えるには、主砲の全力発射が必要だと結論が出たらしいから、この事態になっただけ」
「ま、まあ、それなら安心でしょうが。まあしかし、数秒の未来へ主砲を撃つってのも信じられんがなぁ……」
「用意は出来たんで、未来宇宙へ行ってくる。今回は、俺一人で大丈夫だろう。皆は、計画実行の最終準備をしておいてくれ」
さあ、引きこもりから引きずり出してやるとするか!




