銀河のプロムナード 巫女姫のため息 その1
ちょっと一休みで、番外編を。
たまには、ガルガンチュアが出ない別の話を語ろうと思う。
とは言うものの、全く関係のない話ではないが。
ここは、とある銀河。
一部のものは、
「予言の巫女姫の銀河」
と呼ぶ。
そこを統べる、と言うか、その銀河全ての生命体に愛され崇められている当の巫女姫さんの名前は、マリー。
もう3000年以上の長きに渡って、この銀河の未来を示し、戦の兆候があれば、それを警告し、はたまた宇宙震や惑星規模の災害が起きると予言して様々な自然・宇宙災害から命を守る仕事をしていた。
未来は定まったものではない、それは自分でも理解しているので、彼女は予言の公開すらも慎重に行っている。
例えば、プレコグニション(未来予知)の能力で戦争を予知したとする、
その予知では、どの星系の、どの星の、何処の誰が戦争の引き金を引くか?
まで予知することができる……
が、発表は、何処の星系で、どの星で戦争が起きる、までの情報しか公開しない。
理由は?
その予知により、当人が逮捕されたり殺されたりしたら、未来が変わりすぎるからだ。
まあ、2つの銀河の衝突という大災害を回避しておいて、今更という気はするが、それは当人の気の持ちようだ。
今、その予言の巫女姫様は……
「ふわぁーっ!退屈だわー。このところ、平和で平和で仕方がないのよねー。まあ、不穏な未来が見えないのは良い兆候でもあるんだけどねぇ……」
見た目、20代後半。
実際には3000歳を越えている巫女姫様は、アンニュイな気分になっていた。
自分を除いた世界で、世代が交代していく。
その時間の移り変わりから、自分は隔離されているようなものだ。
「いい加減、御子姫様なんて立場から離れたいんだけどねぇ……この、でっかい神殿みたいな場所から逃げても、すぐに追手がかかって連れ戻されるだろうけど……敬われるのは良いけど、神のように拝まれるなんてのは、何回見ても慣れないのよー。もっとフランクに接してもらいたいんだけど」
何度も何度も、彼女は巫女姫の立場を降りたいと願ったが、政治・宗教・経済・軍の全ての部署から反対が出る。
「あなたの予言があるから、この銀河は平和になっているんです。それが消えたら、我々の行動指針が無くなるようなものですよ。どうやって、この銀河を管理して行けと?」
いや、それを管理するのは予言者ではなく、あんたらだろうと言う彼女の意見は、聞く耳持たないとばかり、
「トラブルや災害を予知されているから、事前に適切な手が打てるんですよ。それが無くなってしまえば、災害や戦争が起きた後に手を打つしかない。この違いは如何ばかりか?当の姫様が、おわかりにならないはず、ありませんよね?」
こう言われてしまえば、彼女としても何も言えなくなってしまう。
言外に、予言が無い時も、予言がある時に匹敵する利点があると言っているからだ。
「どうしようかしら?これからもずっと、この神殿に半永久的に自由意志ではあるけれど、閉じ込められてるような状況は、とてもじゃないけれどゴメンなのよねー」
巫女姫のため息は、今日も止まない……