漢は黙って…… 陸
そろそろ、実力発揮(頭の方)です。
太二くん、ついに大学院に通うこととなる。
事前調査時に、かなりやりすぎたせいで(自分じゃ自重したつもり)大学院側は、受け入れカモン!派と、とてもじゃないが、こんな天才は付き合いきれません!派に分かれてしまって、太二くんは受け入れカモン!派に行くこととなる(自分はトラブル起こしたいわけじゃないと太二くんは思っているんだが、周囲はそう思わないようで)
「おはようございます、楠見太二です。今日から、よろしくお願いします!」
工学部と理論物理学部の両方の研究室で研究生として受け入れてくれたので、太二くんは両方で研究生活を送ることとなる……んだが……
「楠見くん、ちょっと来てくれ。君の意見を聞きたいんだが、この数式から導かれる結論は、これで合っていると思うかね?」
「あ、はい。超空間への突入式ですね。実際には最低でも光速度の2割程度が必要だと思いますが、問題は突入時の物体が持つエネルギー量ですね。最低量でも突入は可能ですが、超空間突入から飛び出し……仮に跳躍航法と名付けたいと思いますが……跳躍した後の航続距離、つまり跳ね返される移動量は、その物体が持つエネルギーに比例すると計算されます」
「ふーむ……やはり、そう結論されるか。超光速理論としての穴はないし、これを論文として発表するのに異論はないかね?楠見くん」
「はい、教授。異論はありませんが、論文の共同執筆者には、僕の名は入れないほうが良いかと思います」
「何故だ?私のほうが君から教えてもらって完成した跳躍理論だぞ?」
「僕が若すぎるからですよ。成人してないどころか、15歳にも達してない子供が最新理論の共同執筆者では、教授が恥をかきかねません。今は、単独執筆としたほうが良いかと思うんです」
「ううむ……それはそうなんだが……惜しいよなぁ、これが発表されたら世界物理学大賞受賞間違いなしだぞ」
教授の難しい顔を見ながら太二くんは、
「では、教授。僕は工学部へ向かいますので」
あ、待ってくれ!
の声を後に、太二くんは工学部教室へ。
「待ってました、ニューホープ!楠見くん、とりあえず、3DCADで描いてみたエンジン構造図なんだが、どう思う?」
「はい、だいたいは良いですね……細かい所の修正で、この変換器は、こちらへ取り付けて。後は、光子を捉える帆の展開装置なんだけど、もっと性能の良い計算機を使用してください。そうしないと、この面積では時間がかかりすぎて展開や収納が実用的じゃないですよ」
「うーん、そうか。提携してるメーカーから、最新チップを提供してもらおうかな。最新チップなら扱える情報量も100倍になるらしいんで」
「それが良いですね。ちなみにOSは何になります?」
「そうか、それが問題になりそうだな。できればUNIX系にしてくれと注文付けてみるが、後はメーカー次第だからな」
「はい、特殊なOSなら僕にまかせてください。専用OSを開発してみますんで」
「まあ、専用OSの開発を趣味の延長みたいに軽く言うなぁ、君は。OS開発やってる研究室もあるってのに」
「まあ、僕専用の開発ツールもありますんで、そんなに時間も手間もかからないです」
「軽く言うけれどねぇ……これだから天才は」
「手間が減るのは良いことですよね?それで良いじゃないですか」
「まあ、担当者が納得するなら良いんだけど……いっそ、メーカー担当者と話、してみるか?」
「あ、それ賛成します。開発時間が短縮されますからね」
「なんだそれ(笑)メーカーとの折衝、普通は汗だくなんだがなぁ(笑)」
太二くんには、何か心づもりがあるようだが。
「まあ、任せてくださいな、教授。こう見えても、外部との折衝は得意なんですから」
「任せる。とは言うものの未成年に重要プロジェクトの折衝部分を全面委任するのは責任者としていかがなものかと思うがね。君以外に適任者がいないという、自分が教えているはずの院生に信頼が持てないのは教育者の端くれとしてどうなんだろうかね(苦笑)」
太二くん、早速何か時代を越えた物を作り出す予定だとみえる。
しかし、これが最初だとは大勢が思ったが、様々なものが出てくる最初だとは、さすがに思っていなかった……




