漢は黙って…… 肆
すいません、ちょっとキーボードが滑りました(笑)
太二くん、社会人になっても良かったんだが、結局。
「父さん、僕、来月から大学院生だって。教育義務期間だから、どうしても教育は受けないといけないんだって役所の人が言ってた」
「そうか……まあ、最高学府ですら、お前の知識量にはかなわんだろうがな。あと4年と少し、大学院で研究に没頭するのも良いだろう」
という事で、太二くんは某国立大の大学院へ通うこととなった。
さすがに一人住まいはいかんだろうと言うことになり、父親である楠見もついてくることとなり、某大学の近所にマンションを買う。
「父さん?アパートでも良かったんだよ?なんでマンションなんか買うのさ?」
「まあ、将来のためだ。4年後、お前が18歳を過ぎて成人したら、ありとあらゆる企業が、お前を個人指名して来るだろう。ある程度、覚悟しとけよ、太二。社会人になるにしても、どの企業に入るか、または、自分で会社を立ち上げるか……学業が終わったら、否応なく決断することとなるからな」
「……分かった。この4年と少し、存分に学生である事を楽しませてもらうとするよ」
大学院側も準備があるとのことで、入学には少しばかり時間がかかる事が判明。
一ヶ月ばかり入学時期が遅れるが、それまではキャンパスにも自由に来てくれて良いと大学側から許可をもらうこととなった。
「ふーん、ここが最高学府かぁ……あ、大学じゃなくて大学院だったな、僕の通うのは。少し、授業風景をのぞいてみるかな」
大学院の中を見学しようと……
「君、高校生?大学生?ここは大学院だよ。大学は、あっちだ」
警備員らしき人物が、太二くんを見つけて注意してくる。
「えーと……僕、来月から、この大学院に通うんですが。聞いてませんか?特別に大学院に通えることとなった13才の楠見太二ですが」
「あ!これは失礼しました。聞いてます、聞いてます。事前にキャンパスを見てるんですね。凄いですなぁ、ウチのドラ息子に、あんたの爪の垢でも飲ませてやりたいですよ」
いえいえ、それじゃぁ……と、警備員に言って、太二くんはキャンパス内をぶらつく。
ちなみに、今の太二くんの服装は、ジーパンにセーター。
警備員に高校生か大学生と言われたが、傍目には、もう成人前とは思えない。
もう少し筋肉が太ければ、より力強く見えるんだが、こればかりは体格と体質のせい。
「セイ!セイ!トォ!トォ!」
やけに勇ましい掛け声が聞こえてくる。
太二くん、興味をひかれてそちらへ。
何をやっているかと思えば、
「ふーん……格闘技かぁ……」
太二くんの視線を感じたのか、主将らしき人物が太二くんに声をかけてくる。
「おや?俺達の総合格闘技部に興味があるのかな?少し、見ていくかい?それとも、一緒にやってみる?」
「僕、少しは鍛えてるんですが……少し、お手合わせを願えればと……」
「うーん……君の筋肉量だと、あまり上級者では差がありすぎるしなぁ……女子部の人とやってみるかい?」
「いえ……できれば主将と、少しでもお手合わせできれば嬉しいんですが」
「知らないよ。まあ、手加減はするが」
道着を借りて、手を守る薄い指ぬきグローブをはめる太二くん。
主将も、試合の道着に着替えている。
「君、白帯?経験者だから青とか緑だと思ってたんだが?」
「父さんが、お前に色は早すぎるって、白のままなんです」
はじめ!
のコールで、手合わせという名の試合が始まる。
主将は、ローキック一発で太二くんが沈むだろうと踏んで、6割ほどの力でローキックを放つ。
太二くんは楽々と躱し、ハイキック一発!
主将の顔面数cm前でピタリと止まる。
本当なら一本だ。
主将の顔色が変わる。
「こっちが手を抜いていたんじゃなくて、そっちが手を抜いていたとは……これからは本気でやらせてもらうよ、名無し君」
「いや、名乗る暇がなかっただけで。楠見太二と言います。本気で来てください、人間とやるのは久しぶりなんです」
主将が本気になったと、他の部員たちは知った。
あいつ、気絶で済めば良いんだけどな……
でも、楠見?
どっかで聞いたぞ……
主将の得意技、ローキック!
しかし、その速度も威力も、先のものの比ではない。
さすがに太二くんも、これは避けられない……
というより、元から避ける気など無いようだ。
がっしりと腰を落とし、主将のローキックに対してカウンターのローキックを放つ!
ガキン!
とても人間のたてる音と思われぬ音が聞こえた。
落ちたのは主将。
「足首が折れたようだ……単純骨折だから、すぐに治るとは思うが……すまなかったな、君の技のほうが上だった」
部員の一人が、
あ!
思いだしたと、
「楠見太二!幻の世界一って言われた、あの楠見師範の息子じゃねーか?!義理の息子だと聞いたが、やはり獅子の息子は獅子か」
「あ、父さんのことを知ってる人がいましたか。ちなみに父さん、今でもしっかり現役ですよ。この間も羆を4頭倒して熊鍋パーティーやったって言ってましたんで」
主将は部員が担架で救護室へ運んでいった。
太二くんは、興味が失せたように他のキャンパス活動を見回ることとする。