特殊能力、開発します。 3
じわりじわりと、能力開発の成果が……
その日は、朝から頭が冴え渡ってたように思える。
学校でも、授業がいやにスローペースに思えてしまうほどに理解力が高まっていた。
「東堂、ここ、前へ出て回答しなさい」
教師に言われて、黒板前に立つ。
立った瞬間、どこがどうなって、どう読み解けば回答になるのか全ての筋道が理解できていた。
僕は、その筋道をなぞるように書いていく……
「っと、よし!先生、これで終了です。あと、これが成立するための条件とは……」
「は?おいおい、東堂。そりゃ、高校でやる次元じゃない……なんじゃそりゃ?空間の歪み率?虚数空間?そりゃ、理系大学どころの話じゃなくて、今の最新理論だろう。お前、どこかで論文でも読んだのか?」
先生が、呆れ果てた表情で僕を見てる。
昨日までの僕は、いわゆる「モブの一人」だったんだから無理もない。
この状況には僕自身が驚いてたりもするんだけど。
「いえ、何も見たり読んだりしてません。でも、この条件は外せないと急に思えたんです」
それ以上は、俺も理解不能だと呆れた教師の顔を見ながら、僕は席へ戻る。
次の授業では、飛び入りの外語教師が来た。
言われている言葉は聞いたこともなかったんだけど、なぜか意味が理解できてしまう……
「素晴らしい!テレパシー能力が優秀ですね、東堂くん」
と言われたけど、僕は自分の貧弱なテレパシー能力を実感してるからなぁ……
???と、疑問符ばかりのつく学校での一日が終了し、僕は真っ先に特殊能力開発研究所(株)のオフィスへ向かう。
「郷さん!ライムさん!僕の頭の中、どうしちゃったんですか?!今日は、いきなり自分じゃない日常に放り込まれたんですけど!」
開口一番、僕は一番の疑問を口にする。
原因は、昨日の特殊能力開発だろう。
あの特殊装置に一時間くらいしかかかってないはずなのに、もう驚くくらいの成果が出てる。
「おや?自分でも驚くくらいの結果だったようですね、東堂くん。しかし、そんなもんで驚くようじゃ、まだまだです。君の力は、まだまだ、こんなもんじゃない。そうですね……能力開発が終了すれば、君は超天才、Sレベルのテレパス、そして、少なくともBの上レベルのサイコキネシスを得ることとなるでしょう……まあ、希望すれば、それ以上にもなれるとは思いますが……こちらはお勧めしません」
郷さん、苦笑という顔をして、最後の方は言葉を濁す。
「え?それ以上にもなれるって?それが、どうしてお勧めじゃないんですか?」
「能力開発作業を、今のようにやってる限り、つまり、命の危険が全く無い状況でやってる限り、今言ったレベルが上限となるんです。で……それ以上を求める方は、我々の手を離れることとなりまして……つまり、能力開発の最上限まで引き上げようとすると、担当者が代わるんです、これが。その方のやり方は特殊でして……はっきり言って、スパルタすぎるので、君の安全を考えると、お勧めしたくないんですよ」
途中から、郷さんが真剣に語りかけてくる。
こりゃ、マジだね。
「命が危ないような可能性のある開発作業は、僕としては無理です。ところで、無料期間って、どこまでなんですか?」
そう、これが今日聞きたいこと。
無料期間が終わったら、突然にバカ高い作業料や講師料を取るってのが、こういう会社の通常体制。
「あ、それね。とりあえず、東堂くんの場合は全て無料で大丈夫です。上の方の許可も貰ってますよ」
え?
嬉しいけど、こんな特典ばっかりの能力開発が無料だなんて……
「あのー、何か裏があります?この会社、もしかしたら軍や政府が裏に付いてるとか……」
それが心配。
まあ、Sレベルのテレパスなんてのは戦闘部隊へは配属されないから大丈夫らしいけど。
「あ、それはないない。こんな会社が軍や政府に頼れるような実績や功績、あると思う?」
郷さんの回答。
そりゃそうだ、言っちゃ悪いけど、この会社名だけとっても、軍や政府が後援してるなら、もう少し一般受けする社名にするだろうし。
そんなことを思いながら、今日も日課となりつつある、ベッドに寝て一時間の能力開発作業となる。
昨日もそうだったけど、開発作業後は頭がスッキリする。
集中力や思考力そのものが基礎的にベースアップされたような感じ。
で、郷さんに詳しく聞いたところ、僕の無料化の原因が判明した。
どうも、僕は汎用能力開発対象として、うってつけの素材だったらしい。
あらゆる方面への能力開発ができる人間ってのも、そうは見つからないんだそうで、その意味では、僕の能力開発作業はテストケースとなるようだ。
だから、無料化してでも手放したくないんだと郷さんが熱心に言うんで、僕も了承する。
タダで高度なエスパーにしてくれるって言うんだから、それに乗らない手はないだろう。
まあ、ご多分に漏れず、この言葉を自分で後悔することになったのは、その後のことなんだけど……




